7 後は祭り
「はぁ⋯⋯よく食うよな、お前も」
「いやー、制限していたとはいえ運動したからネ〜」
「それは私もなんだが⋯⋯?」
シルフが手を素早く動かしながら、正面に座っているチャイドと会話をしている。
俺も自然な感じでそこに加わる。
「それより、チャイドは良かったのか?」
「ん? 何ガ?」
「コレットに大事な話があるんじゃあ?」
「ああ、それは明日にでもすればいいんだヨ。大事なのは、今この時を楽しむことと、久しぶりの孫と子の水入らずな対面だヨ」
なるほど、と頷く。
チャイドに一撃を加えた後、俺達は、
「ハッハッハ! 参っタ参っタ、降参するヨ」
「「ええ?」」
困惑気味だったのはもちろん俺とコレットだ。
「はい! これにて試練は終了! さあさ、祭りに行くヨー!」
⋯⋯⋯⋯というわけで、俺とシルフは今、代行だった魔王に代わって屋台で鉄板料理を作り続けている。
コレットはここに戻る時に再開した祖父と2人で色々と巡っているらしい。
「「「速くしてください」」」
ついでに眷属の方もここに来ている。そして俺をよく急かしてくる。なんだか妙に棘がある態度だな。
「それにしても、今回は仕方なかったとはいえ、あんまり無茶しないでよね」
「お、おう⋯⋯すまん」
夏蓮が本当に心配しているといった感じの声音で言われ、思わず謝った。
「翔太はなー、今回はぐしゃっt―――」
「はいはい、手を動かしてねー!」
シルフがまた余計なことを言おうとしていたため、作業していた手を止めて、口を抑える。余計なことというか、面倒になりそうなことだな。
「うん、翔太をグシャっと潰しちゃってネ。いやー申し訳ないネェ、彼女さん」
「べ、別に彼女とかじゃないから⋯⋯って、潰れたの!?」
「う、ウン」
ああ⋯⋯夏蓮にも色々言われるのか。
もう既に3人(?)からコメントをもらうことが確定してるというのに⋯⋯。あと、「彼女」発言でなんとかうやむやにできるほど夏蓮は甘くなかったみたい。
「みんなおつかれ! あとは俺に任せな!」
それからしばらくして、魔王が沢山のちびっ子を引き連れて来た。
「⋯⋯後ろの誰だよ」
「ああ、俺のファンだな」
なんだろう⋯⋯この、胡散臭いのに嘘は言っていない感じ。
「子ども達が魔王に純粋無垢な羨望の眼差しを向けていることから、まあ大丈夫だろう。それより、私はここに行きたいんだが」
気づけばシルフがこの祭りのパンフレットを開いていた。⋯⋯いつ貰ったんだ。
「レンもお疲れ様。代わりの者を雇ったから後は楽しんできてくれ」
「ありがと。じゃあボクもこれで」
夏蓮もおもむろに立ち上がる。
「さあ翔太、行こうか」
「おう。⋯⋯⋯⋯え?」
そう言ったのは、シルフではなく夏蓮だった。
「『え?』じゃないよ。ボクも巡りたい所が山ほどあるから翔太に付き合ってもらわないと」
「り、了解⋯⋯」
「うん、ヨロシクね」
なんでだろう。夏蓮の顔が怖いんだけど。
「あと、ボクが店番をやっている間に女の子を数人ベッドの周りに侍らせてた話とか聞きたいなー?」
「あ⋯⋯はい」
そういうことね。うんうん、誤解を解くのは大事だけどそんなこと言いふらしたやつを探すのも大事だと思うんだ。
「魔王! お前だろ! そんなこと教えたのは!」
「うん? いや、俺は別に言ってないぞ。ちょっと知り合いに話を流しただけで」
「もっとダメなやつじゃねえか!!」
「翔太ぁー、まだかー?」
「くっ⋯⋯」
シルフに急かされたので、俺は渋々引き下がる。
ああ⋯⋯後はもう楽しむだけだと思ってたのに。なんだか少し憂鬱な気分だ。
ここまでお読みいただきありがとうございます!
作者は今、次回からの内容を少し決めあぐねているところですが、感想、誤字脱字の指摘はお気軽にどうぞ。
翔太と夏蓮の春休みの話はいつか書ければなあと思ってます。




