3-2 シルフとの1日②
「よっ⋯⋯と」
無事我が家の自室に到着した⋯⋯んだけど。
「あれ? シルフは?」
俺がそう言った瞬間、
(ここだバカもん)
「うお!?」
シルフの声が直接脳内に響いた。⋯⋯こうなればやることはひとつだ。
(こいつ、直接脳内に⋯⋯!)
(お、おお⋯⋯いきなりなのによく出来たな)
(俺、やればできる子だから⋯⋯てそんなことより、結局どこにいるんだよ?)
(そんなことて、密接な契約を結んだ者同士にしかできない意思疎通をそんなことて⋯⋯)
俺の投げかけた疑問に答えず、シルフは何やらショックを受けているようだ。
(お前は私の予想外のことばかりするな⋯⋯まあいい、私は今、翔太の右手の薬指にある指輪の中にいる。私とお前の距離が一定以上離れたら私はその指輪に強制転移させられるというわけだ)
なるほど、この指輪にはそんな機能があったのか。
え⋯⋯神様を中に入れる機能って⋯⋯⋯⋯この指輪、実はものすごい代物なんじゃないだろうか。と、俺が手に汗を浮かべながら指輪をまじまじと見ていると、
「? どうした翔太?」
突然俺の目の前にシルフが姿を現した。
「うおお!? ⋯⋯びっくりした」
「これからはこれが日常になるんだから慣れてくれ⋯⋯それに、面と向かって話せた方が安心するだろう?」
「ああ、そうだな⋯⋯と、ところでシルフ⋯⋯その、俺とお前が離れられる距離ってどんぐらい?」
「? フローラ曰く、こっちの世界の度量衡でいうところの3メートルほどだそうだが?」
ほうほう。
「じゃ、今から俺トイレ行くんで、それ維持しといて」
「お、おう⋯⋯」
シルフが呆気にとられた顔をしているが、俺は気にせずトイレへと向かう。こういうのは勢いが大事だと最近俺は思っている。⋯⋯恥ずいが、どうせこれも慣れていかなきゃなんないし。まあ逆もあるだろうからおあいこだよな!
「ふいー、いきなりごめんなシルフ」
「別に、トイレの個室の中を防音にできるからいいぞ」
「え⋯⋯それ先言ってよね!」
妙に緊張しながら用を足してしまったではないか。
「それで翔太、お腹が空いたんだが⋯⋯」
「ああそっか⋯⋯⋯⋯⋯⋯」
しまった。今日は外で食べて来るからと今は外出している家族に言ってしまったんだった。
⋯⋯どうしよう。時計を見れば、既に1時を回っている。
カップ麺⋯⋯は流石にまずいか、こんな愛らしい容姿をしているが、仮にも彼女は神様だ。栄養価の高いものを食べさせたい。いや、食べてもらいたい。
「じ、実はな翔太⋯⋯」
俺が悶々と考えていると、シルフが言いにくそうに口を開く。
俺はおうおう言ってみ? と、続きを促す。
「魔王城にフローラの作り置きがあるはずなんだ⋯⋯」
⋯⋯⋯⋯まじか。
(何をそんなにこそこそしてるんだ?)
(仕方ないだろ。もし魔王達がいたら絶対笑われる)
俺は家で数分躊躇ったものの、やはり背に腹は代えられないということで、再び魔王城にやってきた。
それで現在、息を殺して食堂の前の廊下にいる。
(なあ、ほんとにあいつらいないんだよな?)
(いないいない、確かライブに行くとかなんとか)
シルフの返答を聞いて俺はほっと肩の力を抜き、食堂の扉を開けた。⋯⋯もちろん、中には誰もいなかった。
魔王城の食堂は⋯⋯というか、城内のほとんどの設備がエネルギーの効率上最低限しか機能していない。家具なども同じように、使わないものは全て売るか捨てるか倉庫にしまうかされており、城内はどこか寂しい雰囲気が漂っている。
この食堂だって本来は下っ端の悪魔達のために作られた施設で、沢山の机と椅子があったらしいが、今は机も椅子もひとつもなく、食べるならカウンターで立ち食いでしかできないようになっている。
俺はそのカウンターに置いてある2つの容器から、保温機能のある魔道具を外し、中身を確認する。
⋯⋯⋯⋯⋯⋯。
「うどんか」
「うおう!?」
やっぱり驚いちまうな、急に現れると。てかうどんて⋯⋯できれば異世界感をもうちょっと意識してもらいたかった。
俺は側にあった入れ物から箸を2膳とって、現界したシルフに手渡す。
⋯⋯と、うどんの入ったお椀の下に紙があるのに気づいた。
「なんだこれ⋯⋯?」
お椀をどけて見てみると。
『もし食後にシルフとどうやって過ごせばいいか迷ったら、倉庫に行って適当に暇つぶし用兼スキンシップ用のゲームでも取ってきたらどうですか?』
と紙に書いてあった。
⋯⋯なんだよ、1人でキレて出てった俺が馬鹿みたいじゃないか。ちょっと優しさに泣きそうだよ⋯⋯。
「今度からは落ち着いて行動しような」
「⋯⋯はい」
俺は幼女に諭されるという貴重な経験をした後、昼食を済ませた。
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