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魔王城へようこそ!  作者: 大和(大)
『土の賢者』編 第3章
66/233

10 式典にて



「お、魔王達だ」


 俺達とは反対方向に、魔王達が並んでいるのを発見した。おーい、と俺は手を振る。⋯⋯が。


「まったくこっちを見てくれないな」

「何かあったんだろうな」


 よく目を()らして見てみると、向こうにいる人達は表情が固く、いかにも険悪ムードといった感じがする。


「それにしても、コルト君が正式な勇者になるための式典⋯⋯ですか」


 なにやら、チトセがボヤき始めた。


「この後もそこのコレットさんの試練が待っているとは⋯⋯もういっその事、タイトルでも変えた方が良くないですか?」

「良くないです」


 いきなり何言ってるんだこの人は⋯⋯。


「そ、そのうちなにかしらの動きを見せてくれるだろ? きっと」

「そうですか? なんだかんだ言って、気づいたら遊園地が出来てたっていう展開になりそうで私は心配なんですけどねー」


 そう言った後、はぁ、と謎のため息を着いた。



「お! そろそろ始まるか?」


 そうこうしているうちに、観衆がいる方へ1人の男性が向かいだした。その男性は、いつか俺達がモンド城に行った時にいたエリシャ側の参謀ポジの人だ。


「ん? どうしたシルフ?」

(いや、なんか寒気がしてな⋯⋯)


 唐突にシルフが俺の手を掴んだ。なんだろうか⋯⋯この俺の保護者感は。


「シルフを挟んで立っている私達⋯⋯もしかして夫婦に見られてたりして⋯⋯」


 チトセが恍惚(こうこつ)の表情を浮かべている。うーん、それは少し無理があるような⋯⋯。


「いや、私はお前の手を握ってないから多分そうは見られてないぞ」

「⋯⋯」

「おい、無理矢理握らせようとするな」


 今隣では、二柱(ふたり)の神の無言の攻防が繰り広げられている。


「⋯⋯⋯⋯。どうしたコレット」


 そのもう一方の隣で、今度はコレットが肩を寄せてきた。


「別に⋯⋯なんでもないけど?」

「ああ、『寂しかった』的な?」

「そ、そんなわけないから!」


 ふいっとそっぽを向かれてしまった。だが、肩は離れていない。⋯⋯な、なにゆえ? やっぱり寂しかったのだろうか?


『えー、皆さん静粛に。大変長らくお待たせいたしました。これより、式典を始めたいと思います』


 両手に花とはこのことかな、と思っていると、参謀ポジの人が、観衆に向かって呼びかけた。隣を見ると、シルフとチトセが動きを止め、正面を向いている。


 俺も何となく姿勢を正す。


『本来ならば、前座として色々と行いたいものなんですが、地の神()()()様が早くも睡眠モードへと移行しつつあるため、急遽予定を変更して、早速着任の儀を始めたいと思います』


 進行役と思われる参謀ポジの人は、落ち着いた声色で説明したが、実行委員会(?)と思われる人達は何やら忙しなく会場を動きまわっている。


 


「本当に急遽だったんだな。⋯⋯しかし『ネムイ』て⋯⋯名前安直過ぎるだろ」

「チトセって名付けたあなたが言うんですか?」

「うっ⋯⋯」


 それを言われたらお終いだ。⋯⋯ただ、それとは別に、「あなた」の発音の仕方がおかしかったんだけど。奥さんの言うそれだったんだけど。


「静かにしろよ、ふたりとも。準備がいよいよ整ったらしいぞ」


 シルフの注意喚起で、俺は再び姿勢を正す。


 言い忘れていたが、俺と魔王は銅色のような豪奢(ごうしゃ)絨毯(じゅうたん)を挟んで並び立っている。椅子(いす)はもちろんあるが、みんな立っているので、俺ももうしばらくそうしていることにする。


「そういえば、俺達が集めた素材って、結局何に使われたんだろうな?」

(あたし)はだいたい予想出来てるけど⋯⋯多分アレね」


 アレとは一体?


「今にわかるわよ」


 コレットに小声で伝えられ、俺は少し期待を込めて、待つ。



 俺達が入ってきた物とは別の扉がゆっくりと開き、コルトの姿が(あらわ)になる。

 先程会った時のような薄着ではなく、勇者然とした格式の高そうな服を着ている。



 もう既にこちらの前を通ったのだが、緊張しているのか、左右を見ることなく、正面を見据えたまま、この空間の最奥にある玉座へと歩いていく。




 遂に、最奥のネムイの前にまで到着した。


(⋯⋯何を話しているんだ?)

(契約内容の確認といえばそうなんだが⋯⋯まあ、翔太もいずれわかるだろうさ)


 ごにょごにょと、何やらふたりで話している。ネムイの方は目を擦っていて、言われていた通り、既に眠そうだ。


 ややあって、


「新装―――贈呈」


 そんな、厳格な声がかかったかと思うと、コルトに地龍ネムイから、槍と、新しい服や装身具が手渡される。⋯⋯持ちきれなくてコルトが困っている様子だ。


(おい、あれってまさか⋯⋯)

(そうだ。私達が集めた素材を使ったコルト専用の新装備だぞ)


 まさか、俺達が集めた物があんなにも素晴らしい装備になっていようとは⋯⋯驚いたが、少し感動するな。


 ふと思ったのだが⋯⋯。


(あのふたりももう、俺達みたいに脳内会話が出来たりするのか?)

(ああ、多分できると思うぞ。⋯⋯ただし、できるのはお互いに同意した時のみだがな)

(なんだよそれ⋯⋯むしろ羨ましいんだが⋯⋯)

(そうか? 私は不便だと思うんだが)


 えぇ⋯⋯?



 そんなこんなで、突然の変更があったものの、式は順調に進んでいく。



投稿する間隔をだいぶ開けてしまってすみません。

あと、この章はもう1話ほど続くので、もうしばらく式典……というかお祭りにお付き合いいただけたらなと思います。


それでは!

ここまでお読みいただきありがとうございます!

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