3 冗談は休み休みに言ってくれないか?
「よいしょっと」
どうやら俺達は本部である、ジグラットのような形をした城の後ろ側に、無事移動できたようだ。
「うし! ギムギスを探すぞ。あいつさえいればなんとでもな―――」
魔王が言い終わらないうちに、裏口から1つの影が俺達の前に飛び出してきた。⋯⋯いや、飛ばされてきたのか。
「私を呼びましたか?」
飛んできたものは、魔王軍参謀担当のギムギスさんだった。
「お、おう」
唐突な展開で俺を含めた一同は困惑する。
「あれ? なんだ、時間切れかよ」
ギムギスさんが飛んできた方向⋯⋯つまり裏口から声が聞こえた。⋯⋯この声はもしかして。
「まあ、仕方ねえか。これ以上やったところで全力を出してくれる雰囲気もないし」
「ハハ⋯⋯それは手厳しい。ですが事実なので、謝罪を。何分、王とその腹心の部下が本気を出すのは最後だと相場は決まってましてね」
「違いねえな⋯⋯それじゃあ行ってこいよ」
そう、ギムギスさんに話している人物は、俺がついさっき道を尋ねられた女性だった。⋯⋯てか、あの人あんなに強かったのかよ。
「ということで魔王様、お待たせしました。事情はこちらの本部にも伝わっております。あとはおまかせを」
「おう、頼んだぜ。あいつら、俺の言葉には全く耳を貸してくれなくてな」
(さあ翔太、移動するぞ!)
(お、おう)
ギムギスさんを吹っ飛ばした彼女のことも気になるが、今はコルトの心配をしないとな。⋯⋯てか、あの女性胸元広げすぎじゃない?
「まあいいか、行きますよ!」
俺は全員集まったことを確認して、屋台の前に再び瞬間移動した。
「よっしゃあ、あとは任せたぞギムギス!」
「いえ、魔王様も手伝って下さい」
「え、ええ⋯⋯」
到着したそこは⋯⋯とにかく凄いことになっていた。何が凄いかというと、コルトや他の屋台の人以外、人が1人もいないことと、ありえない高さの壁がいつの間にか出来ており、こちらに来るための道が完全に塞がれていることだ。
「これが⋯⋯コルトの力か⋯⋯」
「ああ、契約前でこれだからな、将来有望と言える」
思わず嘆息して口に出してしまったが、シルフも何故か悔しそうな様子だ。
「そうです。これが僕の本来の力です。⋯⋯そして、約束通り僕の願いを聞いてもらいましょうか」
「お、おう⋯⋯」
一体なにを頼まれるのやら⋯⋯。
「よし、同機完了だ! コルト、外していいぞ!」
丁度その時、壁でなにかしていた魔王がコルトに呼びかける。
それを聞いてコルトは地面につき立っていた槍を抜いた。どうやらあれを刺すことで地面を盛り上げて壁を作っていたらしい。そして今、壁の制圧権は魔王が貰ったらしい。
「それで、願いとは?」
「知っての通り、僕は今日正式に勇者になります。ですが⋯⋯その前に1つ、いや2つ僕にはやり残していることがあります」
ほう⋯⋯。読めたぞ。
「つまり、やり残したことを俺達に協力してもらってやり遂げたいと?」
「いえ、違います」
「なるほどねー、いつも通り頼まれて⋯⋯え? 違うの?」
うそだろ⋯⋯。じゃあ一体なんなんだ? 人生相談? もしくは進路相談? いや、このタイミングそれはないか。ついでに言うと相談事なら頼まれなくてもなんとかするしな。主人公っぽく。
「魔王とももう一度したかったのですが⋯⋯まあ、今の僕の実力では遠く及ばないでしょう。それはさっき一目見るだけでわかってしまった」
なんだなんだ⋯⋯? 尋常じゃなく嫌な予感がするんだけど。
「でも、あなたはやはり違う。⋯⋯⋯⋯再戦だ。スタンプを構えろ、鈴木翔太」
「うっそだろお前⋯⋯」
正気か? この人畜無害な俺にか?
あと、どうでもいいけど⋯⋯
「『スタンプを構えろ』って口上すこぶるダサいな」
「ぐっ⋯⋯勢いで言っちゃったんです! 悪いですか!?」
コルトは俺と照れ気味で言葉を交わす⋯⋯が、構えた槍を一向に下ろそうとしない。
⋯⋯⋯⋯え? 本当にやるの?
お待たせしました!(別に誰も待ってない)
少し面倒ですが、コルト君の清算に付き合ってあげてください。
とりあえず、ここまでお読みいただきありがとうございます!
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