3 老人と孫
「今日はどういった目的でここに?」
「ええと⋯⋯まあ、野暮用です」
俺は、隣に座っている老人と話している。たまにあるよね、電車とかバスの中で話しかけられること。
⋯⋯でも、今回はなんか違和感があるな。異世界だからか?
「そちらは?」
俺はあえて話を続けることにした。残り時間はあと5分だが、今更ここを離れるのもどうかと思うからな。
「私は散歩ですよ。あとは、孫を見守るためと言いますか⋯⋯」
「へえー」
俺は適当な相槌で会話を続ける。
「⋯⋯1つ、質問してもよろしいですか?」
「あ、はい。どうぞ」
「君には、与えられた役目を全うする自信がありますか?」
そこで一瞬、線のように細いお爺さんの目が開かれた気がした。
「ええっと⋯⋯?」
予想外の質問に俺は戸惑っていると、
「いい加減、暇なんだケド! ヒマヒマヒマヒマヒマヒマヒマヒマヒマヒマ!」
突然お爺さんの俺と反対側の隣から子供が出てきて、駄々をこね始めた。
見た感じ、シルフと同じぐらいの体格で、茶髪の女の子だ。⋯⋯この子が孫なのだろうか。
「⋯⋯ええっと?」
「なら、私と遊ぶか?」
またしても予想外の出来事に俺は戸惑っていると、いつの間に現界したのか、俺のもう一方の隣にシルフが座っていた。
「うん! 遊ぶー!」
「はぁ⋯⋯仕方ないなぁ。こっちに来い」
と言って、シルフが手招きする。⋯⋯契約のせいで、あんまり離れられないからな。
「何して遊ぶノ? 何して遊ぶノ?」
「知らん、自分で考えろ」
「えぇー、そんな⋯⋯冷たいナ〜もう!」
すぐ近くで幼女2人の楽しそう(?)な会話を聞き流しながら、俺は質問の答えを練る。まあ、真面目に考えたが、ある程度は適当に応えようか。
「申し訳ないんですけど⋯⋯わかりませんよ、その時その時の気分によりますから。⋯⋯今は、その気はありますけどね」
残念ながら、時空龍や魔王軍、そしてエリシャ達に色々と尽くしてもらって、この世界での役割をもらって、ここまで来たけど、まあ所詮俺は一般人⋯⋯ころころ気分が変わる平凡な人間ですから。
いつしか、お爺さんは、俺を見定めようとしている⋯⋯そんな気がした。
「ふむ⋯⋯では、もうあと2つだけよろしいですか?」
「ええ、まあ」
ここまできたらもうやけだ。恐らくコレットの方で土の大精霊は見つけてくれているだろう。
「君は、今の自分に、今の境遇に、満足していますか?」
「⋯⋯」
まさか、こんな質問がくるとは⋯⋯これに対する俺の答えは1つ。
「してるわけないじゃないですか。まだまだまだまだ、上を目指しますよ」
少し語気が荒くなってしまったかもしれない。あんまりにも威勢よく言ってしまったためか、お爺さんが驚いたように目を見開いている。
一言、付け足しておこう。
「まあ、自分は恵まれてるし、今のままでも十分幸せなんだろうなと思いますけど」
「⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯ふむ、そうですか。では最後に、あなた、鈴木翔太の調停者としての⋯⋯いや、1人の人間としての、モットーを教えてくれませんか?」
モットー⋯⋯つまり座右の銘か。
「ええっと⋯⋯あるにはありますけど⋯⋯恥ずかしいんで、言いたくはないというか」
「翔太の理想はな〜全てをこうt―――もがっ!?」
おおっと危ない。いつも通りシルフが隣でなんか口走っているではないか。
(言えるうちに言っておけ、翔太。相手は、お前の考えを笑うようなやつじゃないから)
いつものように口を抑えていれば、黙っていてくれるだろうと思っていたが、今回はそういう問題でもないらしい。シルフがここまで言うのなら、きっと何かあるのだろう。
はあ⋯⋯っとため息をついてから、俺は口を開く。
「全ての意見を肯定した上で、自分は最も良いと思った側に就くこと⋯⋯が、俺のちょうていしゃ?としての振る舞い方です」
ああ、恥ずかしい。かっこつけみたいじゃないか。俺、あんまりそういうキャラじゃないのに
「なるほど、なかなかどうして、普通の人かと思っていましたが⋯⋯⋯⋯これはいい。あなたになら、孫を任せてもよさそうだ」
「え?」
孫って⋯⋯シルフと一緒に遊んでる子のことか?
「あれ? シルフ、そこにいた子は?」
「? ああ、少し前からどっかに言ってしまったぞ。私が『そろそろコレットに会ってきたらどうだ?』と言ったらささっとな」
「⋯⋯へぇ」
慌てて振り向くが、そこに先程までいたお爺さんの姿はなく、周りを見ても、彼の姿は確認出来なかった。
⋯⋯⋯⋯まさか。俺に、初めからあった違和感は⋯⋯。
「じゃあ、今の子は⋯⋯」
「ああ、土の大精霊、チャイドだ」
「あのお爺さんは?」
「恐らく、コレットの祖父だろう。そして⋯⋯元土の大賢者だ」
「えぇ⋯⋯えぇ⋯⋯」
そういうの、先に言ってよね!
ここまでお読みいただきありがとうございます!
色々と喋っていましたが、要するに「コレットを頼んだよ」ということです!
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