幕間 エリシャ編
「ほお〜、そんなことがあったのか」
「ああ、ほんときつかった⋯⋯」
いつも通り、エリシャを訪ね、俺達は今日あったことを雑談がてら話す。
「私は、翔太がまさか最後の最後にあんなセリフ言うなんて思わなかったぞ」
「む? あんなセリフとは、なんじゃ?」
まずいな、エリシャが興味を持ってしまった。
「おい、せめてそれは俺のいないところで言ってくれ」
「シルフと一心同体な仲のくせによくいうのお?」
「ぐ⋯⋯じゃあせめて、俺に聞こえないように頼む」
俺のその声を聞いた瞬間、シルフがエリシャの元へ行き、耳打ちをする。
「う⋯⋯ウワー⋯⋯そ、それは⋯⋯災難じゃった⋯⋯ぷっ⋯⋯な」
「笑いながら慰められましても⋯⋯」
「ぷははっ! まあよいではないか!」
エリシャは、笑いながら俺の背中を叩いてくる。⋯⋯意外と痛いですよ、エリシャ様。
「もういいだろ! さあ今日もやるぞ!」
その後も、エリシャはしばらく笑っていて、なかなかゲームに手が付けられなかった。
「それで、あとはなにかしたのか?」
「うーん⋯⋯」
施設内を一通り散策したことについてはもう話してしまったため、俺は他に何をしたか思い出す。⋯⋯何があったっけな?
「ああ、あれだ。コレットに連絡先を渡したんだった!」
「⋯⋯ほ、ほう。⋯⋯実は最近、妾も連絡手段を持てるようになってな」
「へー、それは良かったな。なあシルフ?」
「⋯⋯⋯⋯私にもまだ与えられてないのに、ずるいぞ!」
「ちょ⋯⋯殴るなって⋯⋯!」
そう言ってシルフが俺に八つ当たりしてくる。⋯⋯地味に痛いわ。
「それで⋯⋯妾の連絡先がどうしても欲しいというなら、教えてやってもよいぞ?」
「へいへい、エリシャ様の連絡先をどうか教えてくださいな」
「む⋯⋯翔太にはもう少し、プライドというものはないのか?」
「んなこと言われても⋯⋯エリシャの連絡先欲しいし⋯⋯」
プライドなんて、俺にはいらないと思ってる。
⋯⋯それとは別に、正直エリシャとの連絡手段は欲しかった。運悪く他の誰かがいる時に行ってしまった⋯⋯なんてことが起こったら困るからな。⋯⋯あれ?
「エリシャ?」
「そ、そうか! 翔太がそこまで言うなら仕方がない、後で交換するとしよう」
なんか、エリシャの挙動が不審だな。⋯⋯まあいいか。
それからしばらくして、
「そうだ! コレットってどんなやつ?」
「ああそうだ! 翔太の連絡先はもうバレてるんだ。いつ何が送られてくるかわからないんだった!」
俺とシルフが迂闊さを暴露してから、エリシャに尋ねる。
「ああ、コレットか⋯⋯多分大丈夫じゃろ」
「え、マジで?」
エリシャの返答で、今後の対策を練ろうとしていたんだが⋯⋯出鼻をくじかれてしまった。
「あいつはフツーだからな」
「でも、普通のやつなら、その情報は大いに有効活用するんじゃ?」
困った時に呼んでくれといった手前、極力あちらの要請に応えるべきだが、多分9割型罠だと予想して行かなければならない気がする。⋯⋯と、俺達は思っていたんだが。
「逆じゃ、コレットは荒事や、世界の危機を救う英雄なんぞに向かない、普通の女なのじゃ」
エリシャのその答えを聞いて、事前に調べていたコレットについての情報を思い出す。家族は、父と母そして共に両親は健在、確か妹もいたっけか。なるほど、確かにフツーだ。完膚なきまでに普通だ。
だから、あんなに不安そうな顔をしてたのかもしれない。今日知り合ったばっかの人間だけど⋯⋯何もしてやれなくて不甲斐ないな。
そこで、俺はあることに気づく。
「ってことは、ある意味俺と同類?」
「うーむ⋯⋯同類といえばそうじゃが⋯⋯」
「翔太は⋯⋯なんか違うな」
「うむ、庶民の中の変人じゃな」
「変人て⋯⋯」
わかってはいたけどさ。やっぱり直接言われるとショックだよね!
⋯⋯と、ここで、俺の端末がポケットでメッセージの受信を知らせた。⋯⋯まさかな。
俺は恐る恐る、魔王から支給されたスマホのような小型の機械を取り出し、確認する。
「! なんじゃ? 来たのか?」
「まさか⋯⋯」
シルフとエリシャも画面を覗き込んでくる。
果たしてそこに書かれていたいたのは⋯⋯
『今日は色々とありがと、また今度、美味しいもの食べに行こうね』
⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯。
「「普通だ⋯⋯」」
まさかの連絡に、俺とシルフの声が揃った。
「⋯⋯ふぅ。この感じだと、悪用されることはなさそうだな。あー良かった。⋯⋯あれ? エリシャ?」
「⋯⋯ほう。あいつとまたどこかへ行くのか⋯⋯妾が毎晩この空間だけで我慢しているというのに⋯⋯」
何故かわからないが、彼女の琴線に触れたらしい。⋯⋯俺はてっきりインドア派かと思ってたんだけど、そうでもないのだろうか。
その後、エリシャをなだめ、眠くなってきたので、いつも通りの時間に俺達は家へと帰った。
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