5 いつでも呼んでくれ
ちょっとコレットのキャラと、その他諸々に手こずりました。
俺達とコレットが出会ってさらに数時間が経った。
「なあコレット」
「ん? 何?」
未だ呼び捨てに慣れないものの、俺はこの数時間でわかったことがいくつかある。
出会った時からそうだったが、顔色が悪いことと、化粧をして隠しているようだが、目にクマがあることだ。
「少し人混みに疲れたから、静かな場所で休憩を取りたいんだけど⋯⋯」
「うーん⋯⋯いいわ。あたしに任せて!」
よし、これでなんとかなりそうだ。
ちなみに、正直人混みにはもう疲れた⋯⋯。
「うわあ⋯⋯こんなところもあるんだな」
俺達はコレットに案内されて、屋上庭園に来た。その見事な景観にシルフが思わず感嘆の声を上げている。
「今の時間なら人も少ないから⋯⋯ここでいい?」
「あ、ああ。助かるよ」
俺はすぐそばにあったベンチに座り、「ふいー」と息を吐く。⋯⋯歩きっぱなしでマジで疲れた。
「よいしょっと⋯⋯」
コレットも俺の隣に座る。⋯⋯緊張するんだが。
少しの沈黙の後、
「コレット、ずっと気になってたんだけど⋯⋯」
俺は、本題に入ることにした。
「なんで、顔色が悪いんだ?」
「⋯⋯⋯⋯それを、翔太に言って、なんになるの?」
こ、こっわ!! いきなり睨んできたんだけど! ⋯⋯まあいいや、俺は続けるだけだ。
「ファンですから⋯⋯あと、今日俺がここに来た目的でもあるんだよ」
「7日以内に魔王城を攻め込む気なんだろ?」
「ぐっ⋯⋯!」
コレットが図星という顔をする。⋯⋯知ってたけど! というか、俺とシルフの顔ってバレてないのか? 今更すぎて気にするだけ無駄な気もしてくるが。
「話せないんなら、別にいいけd―――」
「いいよ」
「え?」
まさかいいとは⋯⋯流石に予想外だ。
「え⋯⋯え、こんな今日会ったばっかりの見ず知らずの人間に言っていいの?」
「別にいいわよ、こんな悩み⋯⋯さっさと片付けたかったし」
ええ⋯⋯。意外とサバサバしてるな、この人。
「それに、あんた達になら話してもいいかもって思ってるの」
お、おぉ⋯⋯。意外と信頼されてんのかな?
「実はね―――」
そうして、コレットの話を俺達は静聴した。
地の勇者見習いが魔王達に強い恨みを持っていること。危険だから、自分達見習い組2人は、明日から始まる遠征に参加しなくてもいいこと。ただ、地の勇者はそれでも魔王城に行くと言い出していて、日頃からお目付け役として共に行動している自分としては、参加せざるをえなくなっていること。
「なるほどねー⋯⋯その遠征って、誰か死んだりするの?」
「まあ、うちの母親クラスじゃないと、生き残れないかなー」
「親さんというと、賢者さんか⋯⋯」
「ふむ⋯⋯なら、それ以外の者は死ぬ覚悟があるのか」
攻められる場所を拠点としているふたりと、そこに命懸けで向かおうとしている者という奇妙な構図が出来上がっているな。
「何人ぐらいで行くんだっけ?」
「あたしとあいつを抜いて、総勢100名ね」
そう言えば、死ぬって⋯⋯何で死ぬことを想定しているのだろう? 海龍か、もしくは魔王か。
別にいいか。俺達は、誰も殺させないつもりだし。
「ふーん⋯⋯⋯⋯行けばいいんじゃない?」
「ええ⋯⋯そんなあっさり?」
「コレットがいないとその勇者見習いは大変なんだろうからね。⋯⋯それに、困ったらここに、今いる場所の写真付きで送ってくれれば⋯⋯俺がなんとかするよ」
そう言って、俺はさらっと連絡先のメモをコレットに渡す。
(お、おい! 私には名前を明かすなとか言っておいて、翔太はなに気軽に連絡先渡してるんだ!)
(ごめん⋯⋯俺、やっぱ嘘つくの苦手だわ)
「いいの? あたしがこれでなにするかわかんないよ?」
その一言で、やっぱりバレてたか〜と心の中で言う。そりゃそうだ。シルフの顔ぐらい知ってただろうし、俺が瞬間移動で初めの料理店に入ってきてたのを見ていたかもしれないし。
「そん時はそん時だ。ただ1つだけ言いたいのは、俺は誰にも死んでほしくはないってこと」
魔王軍の関係者であることと、風の大精霊を連れていることがバレたので、俺はベンチから立ち上がって、そうそうに立ち去ることにした。
「よっと⋯⋯それじゃあ、また⋯⋯⋯⋯あれ?」
まさかの別れ際に、魔王からメッセージが届いた。
『最後くらいキザなセリフ言っとけ』
いや、いいよ別に⋯⋯恥ずかしいし。⋯⋯ていうか、近くにいるのか!?
『言わないと給料無しだからな。
あと、集合場所は正面玄関で頼む』
俺に給料なんてあったんだな。⋯⋯別にいらない気もするけど。
「⋯⋯どうしたの?」
いつまでも沈黙している俺に、コレットが聞いてきた。⋯⋯もう、いいや!
俺はオホンっ! と言ってから、気を取り直して、
「ああ、それと、不安で食べ物が喉を通らなかったんだろうけど、ちゃんとご飯食べろよ! ⋯⋯せっかくの美人が台無しだぜ?」
「ふぇ⋯⋯!?」
俺はすぐに正面玄関へと飛んだ。
あぁ⋯⋯冗談抜きで、穴があったら入りたい⋯⋯。
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