2 踊らされてる気がしなくもない
「⋯⋯ここ、どこ?」
「翔太がここに連れて来たんだから、そんなこと言われても困るぞ」
とりあえず後ろを振り返る。⋯⋯良かった、フローラさんはいないみたいだ。
「あのー、お客様?」
「へ?」
女性の声に驚いて振り向き、改めて周りを見回す。⋯⋯ここ、飲食店だわ。
(どうやら館内にいろいろあった施設紹介の写真をイメージして、ここに来ちまったらしい)
(それはいいけどここ、異様に高級感があるが⋯⋯大丈夫か?)
「⋯⋯すみません、帰ります」
「は、はあ⋯⋯?」
店員さんに珍妙な目で見られながら俺達はその場をあとにした。
その後俺達はいろんな場所を巡り、沢山の真新しい物を見てきたが、ついぞ勇者と賢者を見つけることは出来なかった。
「翔太〜、お腹が空いたぞ」
「おう、むこうだと丁度昼頃だしな」
ここから魔王城では、時差が20時間ほどある。ぶっちゃけ言って、今ここは深夜だ。
まあ、48時間営業で助かったんだけど。
「お、あれ魔王じゃないか?」
そう言ってシルフが示した方向には⋯⋯
「いや違う。あれはただの犯罪者だ。そう、きっと犯罪者、歩く黒歴史とはこのこと」
騎士達にご厄介になっている魔王の姿があった。⋯⋯というか、こっちに向かって来てるし! こっち奥エレベーターのようなので逃げ場ないし!
(いいかシルフ、このままスルーだぞ。バレたら俺達まで危ない)
(わかった。私も犯罪者扱いだけは流石にもうこりごりだ)
覚悟を決めて、魔王達の前を気配を消して通ろうとする。⋯⋯なんとかなったか?
「あ、翔太達じゃん。丁度良かった、俺の無実を証明してくれy―――」
魔王の声を聞いた瞬間、俺達はダッシュでその場を離れる。
「違うんだって! 翔太! 俺はちょっと暇だったからあの店の魔道具に細工もとい改善をね! って話を聞いてくれ!!」
無理だろ!? 商品を勝手にいじったことを俺にどうしろと!? 頼むから大人しくお縄についててくれ!
「し、翔太! 後ろから騎士達が追ってきてるぞ!」
「まじかよ! ⋯⋯あ、ギムギスさんだ!」
俺達が全力で逃走していると、ギムギスさんが前方にいるのを発見した。
「翔太さん、丁度良かった。こちらの下着とあちらの下着、どっちがいいでしょうか?」
「知らないですよ! ていうか、あんたただでさえ出番少ないんだからあんまりぶっ飛んだこと言わないでくださいよ!?」
「と、とりあえずギムギス! 後ろのやつらをなんとかしろ!」
俺達が立ち止まって会話をしている間に追っ手はどんどんと迫って来ている。だがまあ助かった、ギムギスさん魔王軍の参謀担当だ。これでなんとかなるだろう。
「⋯⋯ああ、では私は転移魔法で離脱するので、健闘を祈ります」
「え、ちょ!」
ギムギスさんはそう言うが早いか、床を僅かに光らせて、虚空へ消えてしまった。
「まじかよ! あの人でも手に負えないってことか!?」
「ならもう私達も瞬間移動するしかないだろ! 翔太!」
「了解⋯⋯!」
俺は今まで見てきた館内の中で、取り分け印象の強かった景色をイメージし、『瞬間移動』を実行した。
「よし、成功だな!」
「よし⋯⋯って、ここさっきも来た高級料理店だぞ!」
うっ⋯⋯周囲の目線が痛い。でも、だからこそここが印象に残っていたんだが⋯⋯。
(待てよ⋯⋯翔太、金はあるか?)
(一応軍資金は持ってるぞ、5万ダイアほど)
「ダイア」とは、この国のお金の呼び方だ。⋯⋯間違ってもダイアモンドが5万というわけではない。
(相席するぞ⋯⋯!)
(それって、もしかして⋯⋯)
ついさっきの出来事が衝撃的すぎて忘れかけていたが、俺達の目的は、賢者見習いとあらかじめ交友を持っておくことだった。
(ああ、窓際で1人で食事をしているあいつが、土の賢者見習いだ)
シルフの発言から窓際に目を向けると、そこには⋯⋯
(おぉ⋯⋯なんか普通だな)
正装だが、地味な感じがする物を着ている、茶髪で瞳の色も茶色な、女の子がいた。
(でも、魔王から事前に教えてもらった特徴と一致するぞ?)
(じゃあ、あの人で間違いないんだろうな⋯⋯⋯⋯行くかぁ)
「こっちでは今まで現実離れのした女性と会ってきた弊害かもしれない」と、ため息をついてから、俺は彼女に接触を試みた。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
おまけ
(あ、そうだ。シルフ、よくやったな⋯⋯よしよし)
(わ⋯⋯私に⋯⋯い、いや、これぐらい当然だ!)
つい昨日見たアニメの主人公のような行動をとってしまったが⋯⋯まあ、シルフも満更でもないようなのでよしとしよう。
ここまでお読みいただきありがとうございます!
感想、誤字脱字の指摘はお気軽にどうぞ。
活動報告もやってるのでそちらも見ていただければなと思います。




