5 備えが大事なんよ
「さて、早速だが翔太、明日から修行するぞ」
魔王が、帰宅後すぐにそんなことを言い出した。
「何のだよ⋯⋯?」
「そりゃあもちろん武術のだ」
「⋯⋯何時から?」
「お⋯⋯こっちで言うところの早朝10時頃かな? ⋯⋯ていうか、なんでするのか聞かないのか?」
「いや、後で聞くつもりだったんだけど」
どうせ修行せざるを得ない理由なんだろうし。
「じゃあ今のうちに話しとくか」
ギムギスさんとフローラさんが部屋から出ていったのち、魔王が「今回の作戦」について解説し始めた。
「ちょっとめんどくさい話になるが、聞いてくれ。まず、俺達が翔太を必要としているのは、ある計画のためなんだ」
「「ある計画?」」
レンとシルフが同時に言って、その後シルフが「パシリじゃなくて?」と、レンが「雑用なんじゃ⋯⋯?」と付け足す。
⋯⋯うるさいわい。
「そう、100年前にできた俺達魔王軍の印象を変えたくてな」
「⋯⋯ほう」
魔王のその言葉に、シルフが何かを理解したと言うように頷く。
「それで、これまでの悪印象をどうやったら好印象にできるか考えてきた結果⋯⋯よし、娯楽施設でも作ってみるか! ってなったわけなんだが」
「何を作るかまではまだ決まってないと⋯⋯」
そこで、魔王の説明を俺が引き継いだ。
「そんでもって、何を作るかは一旦置いておいて、当面の目標としては、少しでも印象を改善するため、慈善事業をしていくことになったんだ」
娯楽施設に関しては毎度毎度議論が絶えなかったからな。
新米の俺がわざわざ止めに入らないと終わらないレベルで荒れていた思い出だ。
「それで今日、『地龍は任せろ!』って国のお偉いさんがいるところまで言って吠えてきたんだね」
「そういうことだ。⋯⋯いやー、エリシャが乗り気で助かったぜ、これもひとえに翔太とシルフのおかげだな」
唐突に褒められ、俺達は少し照れる。
「まあ、7割型翔太の手柄だな」
「いやいや、そんなことも⋯⋯あるけどさ」
「あるのかよ!」
魔王のツッコミが入る。
俺は限りなく真実に近い主観を語る派だからな。
「そうすると、地龍に構ってる間、城の守りが手薄になるんだ。⋯⋯そうなると勇者やら賢者やらがわざわざ乗り込んでくる可能性がある」
魔王が話を戻して、あくまでも軽い口調のまま言った。
「え⋯⋯でも、魔王以外は残るんじゃ⋯⋯?」
俺は口についた疑問をそのまま吐き出す。
「いや、他の2人にはそれぞれ別にやるべき事がある。だから翔太⋯⋯」
そこで魔王は間を開け、
「俺達が戻るまで、城を守ってくれ」
俺の次なる任務を明かした。
俺は空唾を飲み込んでから言う。
「まあ、いいぜ。そのためのこれなんだろ?」
ポケットから支給されたスタンプを取り出し、魔王に見せる。
「ああ、話を聞かないやべーやつはそれで抑えてもらって構わねえ。⋯⋯夏蓮は負傷したやつの手当てを頼む。予報では翔太の腹に槍がぶっ刺さるらしい」
こっわ!!!! ⋯⋯ていうか予報ってなんだよ!
「うん、任せて!」
「夏蓮⋯⋯嫌ならやめてもいいんだぞ?」
レンのあまりにもあっさりした対応に、シルフが心配する。
「大丈夫だよ。翔太1人に大変な思いはさせたくないし。それに、あっちの世界でも大変な日々を送ってきたし⋯⋯」
嬉しいことを言ってくれたが、最後の一言で不安になるな⋯⋯。
なんにせよレンは、むしろ巻き込むべき人種だったらしい。
これでやっと魔王軍の戦いが始まるな!
「それじゃあとりあえず、翔太は学校の宿題やろうね!」
「え⋯⋯⋯⋯⋯⋯」
その前に俺の戦いが始まるようだ。
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