4 速やかに撤収!
『では、これより地龍解放へのプレゼンテーションを始めます』
どこからともなくフローラさんの声が聞こえ、部屋の照明が一斉に消された。
『えー、まず、代表者の言葉を魔王⋯⋯どうぞ』
魔王にライトが集中し、胸を張って言う。
『はい、本日はお日柄もよく〜〜〜』
集会かよ。⋯⋯思わず脳内で突っ込む。
困惑しながら画面を見ていると、はやくも魔王の演説が終わる。
『ありがとうございました。では次に、計画内容の発表⋯⋯並びに黒歴史暴露、ギムギスさんお願いします』
『はい⋯⋯えーまず、こちらをご覧下さい』
ギムギスさんがそう言った瞬間、彼の背後にプロジェクターも何も無いのに、ある図が映し出される。
照明が消された時点で発生していたざわつきが止むこともなく続いている。
『まず、地龍が目覚めるとされているのは12日後の昼間⋯⋯私達としてはその目覚める場所である危険地帯Aで速やかに地龍を起こす予定です』
「起こすって⋯⋯討伐とかじゃないんだな」
「ああ、ただ酷いぐらい寝相が悪いだけだからな」
へー。神様ってやっぱ変なひとばっかなんだな。
『実行するのはうちの魔王1人⋯⋯他の者は、周囲の集落の安全を確保します。⋯⋯このようなプランはいかがでしょうか?』
「魔王1人って⋯⋯勝てるのか?」
実のところ、俺は異世界に来てからというもの、魔王軍の全力というものを見たことがない。そのためこのような疑問が日頃からついてまわっていた。
「五分五分と言ったところだな。魔王1人で最高位の神1柱に匹敵するからな」
へー。⋯⋯さっきからシルフが解説役に徹してるな。
もうちょっと破天荒にいこうぜ。
『ふむ⋯⋯魔王1人というのは不安が残るが、失敗すれば、直ちに他の者が向かうのじゃな?』
エリシャの問いに、ギムギスが首肯する。
『よろしい、その計画でいこう!』
「おお! 初めはどうなることかと思ったけど、なんとかなりそうだね」
レンが歓喜の声をあげる。
『⋯⋯ただし、周囲の集落の安全確保にはこちらの者共をつかわす。⋯⋯それで良いな?』
『ああ、任せるぜ』
エリシャと魔王が意味深な笑みを交わす。
『ではこれより、ここに居る全ての者に同意をとることにしよう』
『あ、その前に⋯⋯⋯⋯ギムギス、頼むわ』
『お任せを⋯⋯まず、今年から王宮騎士に昇級したガリエさんは、先輩女騎士の胸をいやらしい目つきで見てるとか見てないとか⋯⋯』
『な⋯⋯!?!』
周囲にいた騎士のうちの1人が声を上げた。⋯⋯ガリエさんか。
『次に、宮廷魔術師のフォーリックさんは、過去に70股をしたことがあるとか、ないとか』
『うそ!?!?!』
またしても、周囲にいた魔法使いっぽい人達の1人が声を上げた。⋯⋯70股て⋯⋯⋯⋯どうやったんだよ。
俺達が引き気味で見守る中、ギムギスさんは周りのことなど気にせず語り続ける。
『次で丁度50人目ですね。この国の王、エリシャ・ダイアは誰にも中を見せたことのない秘密の部屋があるとかないとか』
『ひぅ!?』
俺とシルフはそれを聞いて即座に連想する。
(ああ、ゲーム部屋か)
(ゲーム部屋だな)
『ええっと⋯⋯あとは、奥さんがいるにも関わらず、2次元の女の子にばっかりかまけている上に、一日中室内にこもりっきりの⋯⋯ああ、すみません。これ、うちの王でした』
『お前今の絶対わざとだろ!! まあ、いいや! このぐらいにしておいてやれ』
それを聞いて、騎士や魔術師の人達から安堵の声が上がる。
『はい⋯⋯いいですか、我々はあなた方の情報を常に収集しています。あなた達が私達に行っているように』
『よし! 終いだ。来い、翔太!』
呼ばれたな。
「うし、行くか! 2人とも、俺に掴まってくれ」
「うん」
「わかった」
俺の声を聞いて、シルフは俺の手を握り、レンは肩に手を置いた。⋯⋯実は、レンの方が2cm高い。
「よっ⋯⋯と」
モニターで見ていた魔王達の所へ俺達は飛んだ。それを見ていた人達が驚きの声を上げる中、魔王が言う。
「それじゃあ、あのプランで議会に申請しといてくれよな。⋯⋯⋯⋯誰も異論はないよな?」
皆、ゴクリと空唾を飲み込むだけで、反論を言ってこなかった。なんて姑息なんだろうか。俺はこの人達についていって良かったのだろうか。
謁見の間を去る際に、魔王が真剣な声色で言う。
「あと、うちに来るなら強制転移結晶は全員に普及しとけよ。まだ海龍の方はなんとかしてねえからな」
俺にはその意味がよく意味が分からなかったが、とりあえず門を全員無事に出て、みんなが俺の身体を掴んできたので、魔王城に帰ることにした。
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