6 ただ勝つだけの話
「何? このゲームが欲しい?」
エリシャと区切りをつけて別れ、魔王城に戻った俺は、魔王に頼みごとを伝えた。
「おう。これやってみて面白かったから俺達の分も欲しいんだけど⋯⋯ダメか?」
「んなこと言われてもなあ、このソフトもううちにあるしなあ⋯⋯どうしても欲しいのか?」
「お、おう⋯⋯どうしてもだ」
「なら、仕方がねえな、明日にはお前の部屋に置いといてやるから、期待して待ってろよ」
⋯⋯なんか親子の会話みたいだなと自分でも思った。
それから1週間後の夜。
「何? こいつで妾に勝負せいじゃと?」
俺達はエリシャに勝負を挑んだ。
「おうよ! いい加減勝たせてもらいますからね!」
「そうだそうだ! 遠慮なく倒してやるからな!」
「ふん⋯⋯いいじゃろう。やれるもんならやってみるがいい」
「勝った⋯⋯?」
「やった⋯⋯! やったぞ翔太!」
見事エリシャに初勝利を収めた俺達は、ふたりで抱き合う。
この1週間、暇さえあればふたりでこのゲームをプレイし続けたしたかいがあったぜ!
もちろん、勝因はそれだけじゃなく、このゲーム⋯⋯というか、この○リカーもどきは超が付くほどのアイテムゲーで腕前よりも、アイテム運のほうが大事なゲームだったからだ。
まあ、どうでもいい解説は置いといて⋯⋯とりあえず、俺達はエリシャに勝ったということだ。
で、その肝心のエリシャ様はというと、
「ありえん⋯⋯私が負けるなんて⋯⋯ありえない」
口調がブレるほどショックを受けているようだった。
「もう1回だ! もう1回勝負せよ!! なんでもしてやるから!!」
「いやいや、今のはたまたま運が良かっただけで、もう一度やったら負けますよ!?」
謙虚でもなんでもなく、本当にたまたま運が良かっただけだ。⋯⋯あと、むやみやたらになんでもするとか言わない。
「そうだぞ、私たちはそのたまたまの運にかけてエリシャに勝っただけだ」
シルフも俺の意見に同意する。
「ならば何故、そこまでして妾に勝とうとした?」
「そりゃあ、任された仕事があるからってのもあるけど⋯⋯やっぱり負けると悔しいじゃん?」
1番の理由は、エリシャに「お前とも張り合えるぞ」言ってやりたかったからなんだけどな。
「いやー流石の私ももう疲れた⋯⋯」
シルフがそう言って、あくびをする。
「ふむ⋯⋯通りで夜やっていたゲームじゃあ集中できておらず、よく死んでいたわけじゃな」
「あ⋯⋯⋯⋯それは素直にすまんかった」
いや、ほんとにごめんよ⋯⋯。
「それで、妾に聞きたいこととはなんじゃ?」
エリシャが切り替えて、こちらに問う。
「さあ⋯⋯? なんなんでしょうね?」
うん、ぶっちゃけ言ってこっちが知りたいことだった。
「⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯」
そんな冷たい目で見ないで、俺凍えて死んじゃうよ。
しばらくの沈黙のあと、エリシャが「ふぅ」とため息をついてから口を開く。
「恐らく、情報収集なんぞはダメ元だったんじゃろ?」
「多分そうだな。翔太を通して、多少なりともエリシャに魔王軍の印象を良いものにしようとしていたんだろうな」
エリシャに問われて、シルフがそれに答える。
? でも、そうなると1つ疑問が残る。
「じゃあなんで俺に最初からそういう旨を伝えなかったんだよ?」
別にふたりが答えを用意しているとは思ってはいないが、一応口に出したところ。
「お前⋯⋯突然『王様と仲良くしてきてね』なんて言われてここへ来れるか?」
「無理ですね、はい」
シルフも俺も即答だった。
なるほどな。
コミュ障な俺の緊張を和らげるためだけにそんなことを言ったのか。⋯⋯別にあんま変わらなかった気しなくはないけど。
「何はともあれ、今日も今日とて始めますか!」
「「お前が仕切るな!」」
うおっ! ハモったな。
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