5 趣旨が変わってきたか?
「おお、翔太か。今からエリシャの所へ行くのか?」
と、魔王が机で何か作業をしながら聞いてきた。
⋯⋯なぜバレているんだ。俺は一言も言ってないのに
「うん、まあな。⋯⋯シルフが飯を食い終わり次第行くつもりだけど、何かあるのか?」
「ああ、丁度翔太に渡そうと思ってた物が今完成してな」
そう言った魔王は「ほいっ」と言って、何かをこちらに投げ渡してきた。
「なんだこれ? スタンプか?」
やや驚きながらも受け取ったそれは、地球でも見られるであろうインク内蔵型のノック式スタンプの形をしていた。
「そうだぞ」
スタンプだった。
「念には念をと思ってな、そのスタンプには拘束魔法と、スタンプを押した相手の魔力を使用して発動する術式が組み込まれているんだ」
「おぉぉ⋯⋯」
俺は今猛烈に感動している。
「初めて魔王らしい所を見た気がする」
「感動するとこそこかよ!」
とはいえ、これは本当に嬉しい。やっと自衛手段を手に入れることが出来た。これで単なる魔術師相手なら能力とうまく噛み合わせて無双できるはずだ。
「へへっそれを造るのにどれだけ時間がかかったと思ってる⋯⋯俺は朝昼晩とゲームばっかしてたわけじゃないのさ。正確にはゲームをしながらも考えていたのはいつもそいつのことだったんだ。いかにして衝撃、水、熱への耐久性を上げるか⋯⋯それはもう暗闇の中で初めてみるタイプのプラモデルを組み立てるがごとし⋯⋯⋯⋯⋯⋯」
「うははっ!」
魔王が何か言っているが、俺は気にせずノック式スタンプをカチカチと鳴らしまくる。異世界版スマホを貰った時も飛び上がって喜んだ記憶があるが、これもなかなかに感激な代物だ。
「ふいー。⋯⋯じゃあ翔太、そろそろ行こうか」
どうやらシルフが夕飯を食べ終わったので、エリシャの元へ行くこととしよう。スタンプをポケットにしまい、テレパシーを送る。
(おっけい、じゃあ掴まってくれ)
シルフが服をつまんだのを確認して、俺はノーモーションでエリシャの部屋へと飛んだ。
「やっと来たか翔太!」
「う、うん⋯⋯まあね」
瞬間移動した場所にいきなりエリシャの顔がどアップできて、戸惑いながらも俺は答える。
「よしよし、なら今回はこれをやろう。⋯⋯異論はないな?」
「ええ、いいっすよ」
「よし、これで妾が勝ったら明日から毎晩会いに来ること。2戦目も勝ったら1週間勝負は休戦して妾と一緒にゲームをすること⋯⋯いいな?」
「えぇ⋯⋯いいっすよ」
こちらの要求は「何か有効な内部事情」で変わらないし⋯⋯ていうか、ほんとに生き生きしてるよな、エリシャ。
「ガハッ! 負けた」
「しかも2対1で2回も⋯⋯」
今回はシルフとタッグを組んで練習時間もある程度とってもらった上での敗北だった。⋯⋯流石に悔しいな。
「ではでは、早速こいつをやろう!」
エリシャはさっさと切り替えて、もう俺達とやるゲームを持ってきていた。
そういえば、
「気になってたんだが、エリシャって友達いないの?」
「⋯⋯」
ピタッとエリシャの動きが止まった。おいおいまじかよ⋯⋯まあ俺も友達少ないけどね!
「素人目に見ても、いくら人数差があったとはいえ、夕方より容赦なかった気がするぞ」
「うぐっ⋯⋯」
確かに、この2戦はエリシャに心の余裕がなかった気がする。
2対1だったんだから当然と言えば当然なんだろうけど。
1分ほど経って、ようやくエリシャが口を開く。
「いや、正直言って、友達は多い方だと自負出来る」
おいおいまじかよ⋯⋯。
「ただ、ゲームをやる友達はおらんな。⋯⋯女王様がゲーム好きだとバレるのは何かと問題があるじゃろうと思っての。知り合いには公言をしていないんじゃ⋯⋯翔太とシルフ、お前達以外にはな」
なんか睨まれたので、本能的に背筋を正す。
「だからその、ふたりには責任をとってもらうと言うか⋯⋯」
エリシャは恥ずかしいのか、途中で言うのをやめてしまう。とはいえなるほど、そういう事ね。
「ならエリシャには毎晩1日1戦、それが終わったらエリシャの希望に俺達ふたりで付き合うことにするか⋯⋯シルフもそれでいいか?」
「主が言うんだから仕方がないだろ?」
確認がとれたので、エリシャの方を見ると、
「ふ、ふむ! ならばそういうことにしてやろうではないか!」
一瞬面食らったような顔をしていたが、快く了承してくれた。
さて、また夜が長くなるなあ⋯⋯。
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