3 いじりますね、ダイア様
「ほら、ここが妾の部屋じゃ」
王様に案内されるがままここへ来たわけだが、1つ、聞きたいことがある。
(なあシルフ、なんでこの人城の中で一人暮らししてるんだ?)
先程の風呂場を出て、廊下を十数メートルほど歩いた所に今の部屋はある。ちなみに、反対側の扉を出ると、ボディーガードと思しき人達が数名いらっしゃるそうだ。
(さあ? わかんない)
シルフからは当然の返答。
「妾は幼少期から自立というものがしたくてな、昨年毎日のように駄々をこねたらこういったスペースを設けて貰えたというわけじゃ」
「あ、ああ。そうなんですか」
2人でそわそわとしていたら王様自ら説明して頂けた。
「適当にくつろいでくれ」と言われたので、俺はとりあえずその場で座る。⋯⋯あれ、シルフ?
「所で、だそろそろ名前を聞かせてもらおうか」
「ふん⋯⋯人に名前を聞く時はまず自分から名乗るのが常識じゃろ?」
「な、なにおう!?」
王様の小馬鹿にするような言い方にシルフがキレる。⋯⋯テンプレかよ。
「ま、まあまあ! シルフ、落ち着いて」
「ちっ⋯⋯風の大精霊シルフだ。以後よろしく頼む」
王様は、「大精霊」と聞いて一瞬目を丸くされたが、すぐに戻り、
「エリシャ・ダイア。2人とも気楽にエリーと呼んでくれて構わん」
と、名乗った。
さて、
「じゃああとは俺だな⋯⋯」
「いや、お前はいい」
「鈴木翔太じゃろ? わかっておるわ」
⋯⋯さいですか。
「それで、ゲームをするのか?」
「うむ、そうじゃ。このボードゲームでな!」
バンッとエリシャはボードゲームを机に置く。
「こ、これは⋯⋯! 互いに条件を付けて、敗者だけがそれを飲むという伝説の悪魔の遊戯じゃないか!」
なんだよその危険な遊び。闇のゲーム並に怖いよ。ぶっちゃけ言ってやりたくねえよ。
「さあ! お前達は何が望みだ? 心臓か? 腕か? 脚か?」
「え? え?」
「妾の能力が欲しくてここまで来たんじゃろ? 遠慮することはない、全力でかかってくるがいい!」
なんだろう、このどう考えても話が噛み合っていない感。
止めたほうがいいのだろうか? というか止められるのだろうか。
「⋯⋯なんじゃ、そういう事だったのか」
あの後、「フハハハハッ!!」と不敵に笑い始めたため、いよいよこれはまずいと全力で止めた俺達は、現在、魔王軍についてのこれまでの経緯をエリシャに説明していた。
「それで、妾から城の内部事情を探ろうとしていたわけだな?」
「え、あ、はい」
「ちょっと翔太! わざわざバラしてどうする!」
あ、ごめんと言おうとしたが、時すでに遅し。シルフにバシッと頭を叩かれた。あれ? 意外にも痛くないぞ。もっと全力でくると思っていたんだが。
「ほうほう、じゃが妾としてはお前の方に興味があるな。時空龍に選ばれるほどの者だ。この世界の者として、興味を抱かないわけがない」
エリシャがこちらに顔を近づけてくる。
「へ? ええっと⋯⋯」
緊張のあまり言葉が出なかったため、救いの手を差し伸べてもらおうと隣のシルフの方を見ると、
「確かに、それについては私もまださっぱりだな」
そう言って、こちらに顔を向けてきた。
⋯⋯ダメだった。シルフも味方じゃなかった。
「いや、その⋯⋯」
俺は仕方なく立ち上がって後退するも、その後ろは本棚で、広い室内なのに、即行で既に追い詰められてしまった。
「俺も、さ⋯⋯」
逃げ場がなく後ろにもたれようとすると、
「うわっ!!?」
ガコッと言う音がして、扉のようにズレて、俺はそのまま倒れてしまった。
「だ、大丈夫か翔太!」
「あー大丈夫大丈夫。⋯⋯てなんだここ?」
奥の隠し部屋を見渡すと、至る所にさまざまなゲーム機やカセットが置かれていた。
ふとエリシャの方を見ると⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯。
「⋯⋯こ、これは⋯⋯! その、あ、あれだ。あの、資料という⋯⋯という⋯⋯」
先程の饒舌が嘘のように、しどろもどろでなにやら話している。⋯⋯ちょっと突っ込んでみたくなってしまった。
「資料って⋯⋯この未開封で積んであるやつも?」
「う、うむ」
「全シリーズ揃ってるどころか番外編まで買ってあるこれも?」
「そ、そうだ」
「この、見るからにやばそうなBLゲーも?」
「それは⋯⋯! そ、そ、それもそうだ!」
「なんの資料なんですか?」
「え⋯⋯? ええと、その、あの⋯⋯⋯⋯」
「⋯⋯一応、写真とか撮っといてもいいですか?」
「嘘ですごめんなさい趣味で隠れてやってましたぁぁ!! だからこれ以上漁らないでぇぇぇぇ!!」
「ええと、どれどれ? あ、乙女ゲーもあるじゃん!」
嬉々としてエリシャをいじる俺を、ゴミを見る目でシルフは見ていた。
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