2 はじめまして、ダイア様
目を開け、周りの情景を確認する。
「⋯⋯よし、潜入成功だな」
俺は映像の情報から瞬間移動出来たことに少し喜んでいた俺をシルフが諌める。
(そんなこと言ってる場合じゃないぞ)
確かに、既に扉の向こうから足音が聞こえてきている。
俺は無駄だと思いつつも、身を隠せる場所がないか周囲を見回す。⋯⋯ダメだ。いくらこの風呂が広いと言っても、利用出来るのはあくまでも1人だけ⋯⋯今こちらにやって来ているであろう例の王様だけなのだから。
(待てよシルフ、ここ⋯⋯湯が張ってないぞ!)
(水だけでも浴びるつもりなんじゃないか? そもそも湯が張ってあったら翔太の眼鏡は曇ってるけどな)
なるほど。確かに。と二度関心しながらも俺の目線は必然的に扉の方へと向かう。
正直言って、今の俺には2つの「緊張する」理由がある。
1つ目は、単純に王様が俺の話を聞いてくれるかどうか。
そして2つ目、俺はここの国の王様について一切なんにも存じ上げていないことだ。
以前、魔王やフローラさんに聞いてみた時があったが、「そんなの、事前に知っちゃったらつまらないでしょ?」と言われ、街で情報を手に入れようにも異世界語を覚えていないため不可能だった。
ぶっちゃけ、若い女性であってほしい⋯⋯だって、異世界転移して、味方(?)側の魔王が男とか、なんか悲しいし。
そうこうしてるうちに、扉が開く。
果たして王様の姿は、俺より頭2つ分背が低く、長い髪が特徴的な、女の子だった。
⋯⋯女の子だった。
俺は思わずガッツポーズをする。
「なんじゃ? お前達は?」
「えー、ワ、ワタクシ、異世界から来ました。す、鈴木翔太と申しま⋯⋯す?」
(て、なんで言葉通じるの!?)
(神々の特権というやつだ。この国の王は代々半人半神の者が務めているぞ。ほら、私だって初めから通じていただろ? 全く気にしてもらえずにここまできたが。⋯⋯あと、変に声量上げなくてもいいぞ、私が上手く調節するから)
神様、意外となんでもあり説あるな。って声量調節できるのかよ、お前もすげえよ。
「ほう⋯⋯異世界から来た、とな。それを証明できる物はあるか?」
「え、ええと⋯⋯」
うーん、これは少し困ったぞ。こっちの世界にも漫画やアニメ、ゲームやラノベみたいなサブカルは腐るほどあるみたいだしな。
「簡単なことだぞ翔太、ここで能力を使って見せればいいだけだ」
「⋯⋯! なるほど」
シルフの現界に少しビビったが、俺は横に目を向けて、数メートル先の見えた場所に飛んでみせた。
「ほう⋯⋯!」
「これだけじゃ証拠として薄いっすかね?」
「いや、これで十分じゃ⋯⋯⋯⋯よ!!」
「ぐえ!?」
「!? 翔太!」
俺は突然身動きが取れなくなった。あの王が魔法でも唱えたのだろう。俺の鼓動が途端に速くなる。まじか⋯⋯。
「ってあれ?」
拘束は予想外に即行で解かれた。
「ふむ、この感触⋯⋯確かに、お前はどうやら異世界人らしい」
「よ、良かった⋯⋯俺の体質が役立って」
俺の体質についての話は置いといて、ここで彼女に一気に畳み掛けるか!
⋯⋯やっぱダメだ。緊張して口がうまく開かねえ!
と、俺が口をモゴモゴさせながら苦悩していると、当の攻略相手から、救いの手が差し伸べられた。
「まあ何にせよ、遠い地からよくぞ参った。妾が直々に歓迎してやろう」
助かった! 向こうからなにかしてくれるなら願ったり叶ったりだ。⋯⋯シルフは未だ警戒を解いていないが、ここからなんとかしてお近づき(?)になるしかない。
「鈴木翔太⋯⋯と言ったか。お前、ゲームについての知識はあるか?」
「え⋯⋯? あ、はい」
もしかして、陛下もゲームする口ですか?
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