8 浄化されるゾンビの気分
「それじゃあ、楽しんできてね。調子に乗って迷惑かけちゃ駄目だよ?」
「わ、わかってるよ。……サンキューな、この埋め合わせはまた今度するよ」
「うん、待ってる」
夏蓮に釘を刺されてから屋敷を去る。
(どうだった?)
(どうもなにも、『女の子なんだからもっと気を使わないと!』って怒られたくらいだな)
(ほうほう)
あの夏蓮が……少し意外だ。
何はともあれ再び常夏の島に戻った俺達はついに浜辺に出る。
「うわあお、貸し切り状態のビーチってちょっと新鮮だな」
「その割にはあんまり嬉しそうじゃないのはどういうことだ?」
「うん、まあ……」
インドア派な俺にはそこまで心に響かない光景だからな。太陽は眩しいし、たいして泳ぎが得意なわけでもないからなあ。
「あ、いた。二人ともどこ行ってたの?」
サンダルで砂浜の上を歩くことを無駄にためらっていると、背後からコレットに声を掛けられる。
「ん? いや、ちょっとシルフに日焼け止めを塗ってもらうために……」
それより後はコレットの姿に言葉を失って言えなかった。
「………………う、うおおおおおおおおおおおおあああああああぁぁぁぁ!!!!!!!!」
「……な、なに!? どうしたの!?」
ま、眩しい……! 降り注いでいる日光よりも輝かしい魅力を放っている彼女の姿がそこにはあった。
「ぐっ……目が……」
「そ、そんなにダメだった……?」
自信なさげに尋ねてきたが、俺は今目が殺られていてそれどころではない。
「はぁ……いや、翔太の目がいかれるほど似合っているってことだぞ」
シルフがため息交じりに俺の心の声を代弁してくれた。
「そ、そう……良かった」
(ていうか、なんかコレットと私で反応に高低差がないか?)
(いやだって、一日に一回は見るお前のそれと、コレットのあれが対等だと思うか?)
(その顔やめろ)
やれやれとわざとらしい動作と表情でシルフを煽っていく。
「と、とりあえず他のみんなと合流しようぜ!」
シルフとの会話で落ち着きを取り戻した俺は救いを求めるように他の仲間を探しに歩き出す。
「い、いやー今日は熱いなー」
「そ、そうね」
無言はまずいかなと思い出来るだけ自然に話題を送ってみる。
「ぎこちなさすぎだろ翔太……あと、もっとちゃんとコレットのほうを向いて話せよ」
「う、うるさい! 遠慮なく見れたら非リアなんざやってねえっての!!」
「あ、ははは……」
先ほどからコレットの反応がいまいち薄い。
だが、ここで何もできないほど俺は落ちぶれちゃあいないぞ……!
「コレット!」
「は、はい!」
振り向き、目を見てしっかりと伝えよう。
「……似合ってるぞ」
「……! ……あ、ありがとっ」
言えた……けど、気まずい。どうしよう、今言うのは悪手だったのか!? でも直接言っとかないと思いが伝わってるかわかんなくて不安だったし……!
「ヤーヤー、眩しいねェ! お二人サン」
などと考えていると突然、土の大精霊の声が聞こえた。周りを見渡すが、姿を確認できない。一体どこにいるんだ?
仕方ないから少し移動しながら探そうかな。
「あ、チョット! 動いちゃダメ……フギャ!」
「……なにやってんだお前は」
「うわ! す、すまん!」
何気なく踏み出した足の下にチャイドの顔があった。悪気はなかったが、反射的に謝罪の言葉が口から出た。
「イヤ~、カラットとエリシャと遊んでたらいつの間にかこうなっちゃってたヨ」
「……意味が分からん」
珍しくシルフが眉間にしわを寄せている。……頭痛でもあるのかといった表情だな。
しかしチャイドの登場によって、俺とコレットは少しホッとしていた。
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次回は今週中にできたらなと考えています。それでは!




