幕間2
今回は最初魔王視点で始まります。
「はい、あなた。お茶が入りましたよ」
ああ、ありがとうと言ってフローラから受け取る。もう夜も大分更けている。翔太達も帰ってしまった。
⋯⋯さて、この周回イベもあと一息だな。
⋯⋯そう思って、今日も今日とて魔王にあるまじきゆるゆるっとした1日を過ごしていたんだけどな~。まさかあの時の茶に睡眠薬が入っていたなんて。
「オマケに朝チュンとか⋯⋯」
やってしまった⋯⋯完全にやってしまった。俺は未だ隣ですやすやと寝ている妻を見ながら頭を抱えた。
「起きてるんだろ? なんでこんなことしたんだ?」
パチりと目を開けたフローラは悪びれもなく答える。
「だって、最近あなたったら私に全然かまってくれないんですもの」
「はぁ⋯⋯あのなあ、」
「それに『アナスタシアちゃんまじかわええ⋯⋯』とかなんとか言って、他の女⋯⋯それも2次元の子に鼻の下を伸ばしてたじゃない!」
「そんなことでわざわざ不意打ちなんてするなよ」⋯⋯と言おうとしていた口が硬直する。
「あ、あぁ⋯⋯それ、聞いてたの⋯⋯⋯⋯いやその、あれは一時の気の迷いというか⋯⋯」
⋯⋯俺こと魔王、早々に絶命の危機じゃねえか!
ハッ! ドアの向こうで声が聞こえる。助かった! 速く開けてくれ! 微妙な空気になってもいいから!
俺は一縷の望みを掛けてドアの方に意識を集中させていたが⋯⋯彼らはすぐに立ち去ってしまった。⋯⋯うそん。
「なんでさああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!」
「シルフ様の朝食? ああ、それならフローラ様に頼みに行ってください⋯⋯私は今手が離せないもので」
そう、こちらに背を向けたままギムギスさんは答えた。
「にしても忙しそうだったよなー、見たか? あの大量の書類」
「見た見た⋯⋯朝からご苦労な事だ」
他愛のない雑談をしながら、俺とシルフはフローラさんの部屋へ向かう。
「てかシルフはなんでそんなに元気なんだよ」
「そうか? ならやっぱり熟睡は大切だな。昨日よりも格段に体に力がみなぎっている」
⋯⋯さいですか。俺なんてもう眠くて仕方がねえ。今朝だって、ギリギリまで寝て、異世界に寄ってから学校に間に合うような時間で家を出たからな。正直、瞬間移動の能力を持ったところで、人目に付く場所にすんなり行けるわけじゃからな。
「⋯⋯ぉっと」
ぼーっとしていたら、目的の部屋の前に着いてしまった。
ちなみにここまでだってある程度“瞬間移動”して来たんだが⋯⋯俺が想像出来る場所がまだまだ少なくて、こうして自分達の足で歩くことになっているわけだ。
扉に手を掛ける。
「⋯⋯⋯⋯ん?」
中から奇妙な声が聞こえてくる。⋯⋯異世界の言語っぽいな。
「おいシルフ、中でなんて言って⋯⋯シルフ?」
「あわ、あわわわわ⋯⋯」
隣にいるシルフの顔が赤い。
「は、離れるぞ⋯⋯翔太」
「え⋯⋯あっ」
察し。
「朝飯は俺達だけでなんとかしようか」
「そ、そだな」
シルフがそう言った瞬間、俺は彼女を連れてギムギスさんのもとへ飛んだ。
⋯⋯にしても、意外と純粋なんだな、俺が言える立場じゃないけど。
⋯⋯⋯⋯その後、俺の意識が覚醒するほどの城主の絶叫が魔王城内に響いた。
やっぱヤンデレは怖いな!
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