7 いまだに室内
コレットに先に行ってくれと言われたため、トボトボと廊下を歩いていると、丁度真横の部屋からごそごそと音が聞こえた。
「……? ……!」
扉の隙間から覗いてみると、見知らぬ男性が床に魔法陣のようなものを書いているではないか!
「え……えと、」
「ん? ……ああ、翔太さん」
勢いよく部屋に入ったは良いが、なんと声をかけようか逡巡していたところ、向こうから話しかけてくれた。
俺の名前を知っている? ええっと……。
「誰?」
「おっと、すいません。この姿のことを説明していませんでしたね」
よっこらしょ、と言って立ち上がる男性。工事現場で見るような作業着を着ていて、片手には陣を書くためのチョークのような物を持っていた。
年齢は、見た目から判断するにコレットの父より若く、魔王よりは歳を重ねているように見えた。
「どうも、コレットの祖父のドライ・アガルダです」
……は? コレットのじいちゃんって、あの爺さんか!?
「ドライはな年齢詐称ができるんだぞ」
「人聞きの悪いこと言わないで下さいよ。ちょっと年寄り割引や遊園地の年齢制限に利用しているだけなんですから」
はははっと優しげに笑うドライさん。シルフはそれを羨ましそうに見ている。
シルフも今の見た目に多かれ少なかれ不満があるようだ。
「それはそうと、ここで何してたんですか?」
「ああ、魔法陣を書いていたんです。転移魔法陣をここに書いて、魔王達のいる島と連絡が取れるようにするんですよ」
「なるほど」
思わぬ所で面白い話が聞けた気がする。……俺には多分使えないから関係ないかもだが。
「窓からの日差しが反射して目に入るので書きづらかったんですが、なんとか書ききれましたよ」
腰に手を当てて作業中の苦労を話すドライさん。……日差し。
「あ!」
「どうしました?」
「い、いえ。そういえば日焼け止めを塗ってなかったなーと思って。……ほら、行くぞシルフ! 失礼しましたー!」
「ああ、はい、行ってらっしゃい」
「えー、めんどくさいぞ」と文句を言うシルフを引きずって、俺はドライさんと別れた。
魔法陣の部屋を後にした俺達は夏蓮の屋敷に来ていた。
「あいついるのかな?」
「いるみたいだぞ。今、私達が来たことも伝えたしな」
それは良かった。無断で来てしまって少し怖かったからな。
扉がガチャりと開き、俺達が居る部屋に夏蓮がやってきた。
「二人ともどうしたの? ……って、何? ボクが待機している間に随分と楽しそうなことをしてるみたいだね?」
「うっ……」
そう言われると後ろめたくて言い出せない……。
「嘘だよ。羨ましいけど、翔太のことはほっとけないし……今は我慢するよ」
「お、おう」
ほっと胸を撫で下ろす。
「それで、ボクになんの用?」
「ああ、シルフに日焼け止めを塗ってもらいたい」
瞬間移動で持ってきた日焼け止めと少し嫌そうな様子の風の大精霊シルフを夏蓮に渡す。
すると何故か夏蓮の表情が微妙に引きつっているのに気づく。
「どうした?」
「いや、改めて使い方を間違えたら危ない能力だなと思って」
そういうことね。いくらでも悪用できる能力だからな。
「使っているのが俺で良かったよな~」
「え?」
「え?」
その後、俺たちの間にしばらく気まずい空気ができたのは言うまでもない。
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