#2 高速じゃなくて、光速な
再開する時は最初が1番辛いのはわかってたつもりだったんですけどね……。とにかく楽しんでいただけたら幸いです。
「あなた、お茶が入りましたよ」
「ありがとう」
我が愛妻からコップを受け取る。うん、いい湯気が経っている。アツアツの紅茶だ。……気温は今体感で25度くらいあるけど。
せっかくだから飲んでおこうか、丁度喉も乾いていたし。
「そういえば小僧、この間有給をとっていたな? どこへ行っていたんじゃ?」
「ああ、私達、旅行に行ってたの」
「ほほう、旅行とな?」
エンドラとフローラの女子ふたりでトークに花を咲かせている間に俺はアフタヌーンティーをじっくりと味わう。……時間的には午後だからアフタヌーンティーで合ってるはずだ……たぶん。
「そういえば、私未だに何やってるのか聞いてなかったわエンドラのところで楽しく働いてるとは聞いていたけど」
「おお、そうか。なら儂が教えてやろう、職場でのこやつの活躍を」
ブーッ!! 身の危険を逸早く察知し、俺は口に含んでいたものを全て吐き出す。
「うわっ! 魔王汚いぞ! なんで私にかけるんだ!?」
俺の正面にいたギムギスがなにか文句を言っているがそんなことを気にしている場合じゃない。
「ま、まあそういう話は夜にでもしようぜ! ……ゲホッ! ゴホッ!」
「今、夜だけど?」
しまった! 今って夜じゃねえか!
「じゃなくてだな! そういうのは向こうの布団の中でコソコソとするものじゃないのか!?」
「それ、しょーちゃんの方の文化じゃないの?」
「うぐ……」
くそ……! こんなことになるならもっと序盤から話を逸らしに行くべきだった! 誰だよアフタヌーンティーとか言って余裕ぶっこいてたの!
いや、今はそれどころじゃない。もしフローラが俺の職場は女の子だらけだって知ったら……。
一難去ってまた一難……か。
「っていうか、まだ着かないんですか?」
コルトが俺の心境を察してか(多分違うだろうけど)、自然な流れで話題を逸らしてくれた。でかした! こいつには後でジュースを奢ってやろう。
「えーと、探索したところ……まだ四分の一と言ったところですね」
ギムギスが苦い表情でコルトの疑問に答える。ちなみに、濡れた服などは全て魔法で乾かしたらしい。
「えぇ!? やっぱり僕の魔法を使った方が……」
「まあ待てって、すぐ着くから」
「すぐっていつですか! このまま何もしないで舟に揺られるのは嫌なんですけど!」
コルトが痺れを切らして自身の魔法を行使しようとした所―――
―――閃光が、こちらに向かって飛んできた。
「うわぁ!? 一体なんですか!?」
「お待たせしました! 女神ヒノデ! 母の代わりに参上です!」
はきはきとした声で光る彼女はそう言った。それも、朝を連れて。
「えっ!? あのヒノデさん!? ……ちょっ、眩しくて見えない!?」
コルトが予想外の展開に驚いている。……さては地龍、このことを教えてなかったな。
「ちょっと魔王さん! なんなんですかこの状況は! ……って、サングラスかけてるなんてずるいですよ!」
ふん、なんとでも言え。聞いていなかったお前が悪い。……あ、ちょっ、取りに来るんじゃあない!
やがて光が収まり、コルトの視界が回復した頃。
「というわけで、助っ人のヒノデだ」
改めてコルトに紹介する。
「あ、どうも!」
「はい、初めまして!」
コルトから歩み寄って、ガシッと握手。うわぁ、これ絶対翔太には出来ない芸当だな。
「コルトの方には連絡が行ってなかったみたいだが、ヒノデに舟の操縦をやってもらうつもりだったんだ」
俺の補足説明にうんうんと頷くヒノデ。
「それじゃあ早速ですが、飛ばして行きますね!」
くるっと回転して、彼女が前方を見た瞬間――――――舟が光速で移動を始めた。
…………うっ。ちょっと酔ってきた。
ここまでお読みいただきありがとうございます!
感想、誤字脱字の指摘はお気軽にどうぞ。
ちなみに、「ヒ ト デ」じゃなくて「ヒ ノ デ」ですからね……。




