3 船上にて
深夜投稿にならなくてホッとしてます。
「よし、まずは一人達成だな!」
達成感に満ちた声でシルフへ語り掛ける。
「耳をふさぎたくなるくらいぎこちない会話だったけどな」
「うっ……」
確かに、思い返してみると若干勢い任せなところもあったかもしれない。あと、カラットさんも若干引いていたかもしれない。
「でもまあ過ぎたことは仕方がない、次行こうぜ次!」
自身を鼓舞して船内へ向かう。するとそこには、お茶を飲みながら優雅に窓の外の景色を眺めている老夫婦の姿があった。
(これは……話しかけてもいいのか?)
(別にいいだろ。……というか、翔太がそんな調子だから私のはいつまで経っても元に戻らないんだぞ?)
シルフがそんな身も蓋もない――――――
(え? それ真面目に言ってるのか?)
(ああ、真面目な顔で言ってるぞ、大嘘を)
………………。
(……おい)
(あはは! すまんすまん、翔太の困る顔を一日に一回は見ておきたくてな)
(え……一日一回で済んだ日がないと思うのは俺だけか?)
とはいえ、「やれやれ」とわざとらしい動作をしつつ、安堵と哀傷の入り混じった吐息を漏らす。
(おお? あの二人、何か話しているぞ)
物陰に隠れて会話を聞こうと思ったが、シルフに「やめておけ」と止められたため、堂々と近くにあったフカフカのソファに座って耳を澄ませる。
「じいさんや、あとどれくらいで着くのでしょうかねえ」
「さあ? どれくらいでしたかな」
おお、なんかそれっぽい会話だな。
「家族で旅行するのは久しぶりですねえ」
「そうですなあ」
なんだろう、この二人だけで世界が完結しているような感覚は。……これが熟練された夫婦の雰囲気というものなのか? 隣では現界したシルフがあくびをしている。
「こうしてみんなで旅行にあと何回行けるんでしょうねえ」
「さあ? わかりませんが、可能な限り行きましょうか」
なんか重い話になってきた。……だが、ここで去るわけにはいかないだろう。別にやましいことをしているわけではないし、二人の性格を知るうえで大事になってくると感じるから。
「ばあさんは死ぬ前にやっておきたいことはありますか?」
来たぞ……! 重い質問が。
「孫の結婚式には出たいですねえ!」
「奇遇ですね、私もなんですよ」
そう言って二人はこちらの方を向く。
「……」
「「…………」」
………………。
「失礼しました!!」
腹の底から叫んで、俺は脱兎のごとく船内を後にした。
なんとなーく、「期待しているよ」と目で言っている気がした。
船上を一通り探索し、再びコレットのもとへ戻ってきた。
「なんか今回やばいな!」
「いつもはそこまで大変じゃないみたいな言い方はやめておいたほうがいいと思うわよ?」
これで今会える人とは全員会ったはずだ。ちなみに、コレットの両親は船の操縦を二人で行っているため、今はやめておいた。
少し海でも眺めて心を落ち着けようかと考えていると、
「翔太! 見つけたぞ!」
女王様に見つかった。
「ああ、エリシャか」
一つ息を吐いて、表情を切り替える。ほぼ毎日会っているエリシャと会話することなんて、今朝あったばかりの人と話すことと比べれば、安らぐことこの上なかった。
「なんだ? 何かあったのか?」
「いや、むしろ何も起きなくてこまってるんじゃが!?」
何も起きない……なんてすばらしい響きだろうか。なんて思っている間に、話は進んでいく。
「ならエリシャは何が起きると思っていたんだ?」
俺も思っていた疑問を、シルフが尋ねる。
「決まっているじゃろう? 殺人事件じゃ!」
「え……」
期待を瞳いっぱいに含みながらエリシャは元気よく答え、コレットの表情が若干引きつった。
……なるほど、快活に言っていい言葉じゃないとは思うが、一理あるな。
「俺もどうせ、何かが起こるとは思っているさ」
「そうじゃろ!?」
「え……翔太?」
「だが……そういうのはどうせ島に着いてからだから今は期待しないほうがいいぞ」
「ふむ! そうじゃな、着いてからのお楽しみじゃな!」
「ああ! 楽しみだな!」
「いや私は何も起きてほしくないんだけど!?」
「ハハハ!!」と二人で笑いあう。
「翔太はもはや何も起こらないことを諦めているな」
「対して、エリシャの方は純粋に旅行とはそういうものだと思っているネ。……推理物に触れすぎるのはよくないネ」
大精霊の二柱の、冷静な分析が聞こえた。
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今回はコメディを意識して書いてみたんですけど、どうでしたかね? それでは!




