五・五章 なんじゃこりゃなんじゃこりゃ~
久しぶりに投稿しました。
時期的に第一部のいずれかなのですが、それは適当な箇所に差し込んでみました。
五・五章 なんじゃこりゃなんじゃこりゃ~
なんじゃこりゃなんじゃこりゃ~
目が合った。
それと目が合った。
あり得ないモノと目が合った。
あり得ないモノも驚いて大きく目が開いている。
お互い目が合って。
固まっている。
先にフリーズから回復したのはあり得ないモノの方だった。
さらに大きく目を開いて、慌てた様子で目を閉じる。
それこそ見ていても懸命にギュッと目を閉じている。
自分が驚きから回復して、さらにそのあり得ないモノを凝視した。
あり得ないモノは、少しだけ異形の手足の付いたニンジン、それはありふれた姿だった。
錯覚だったのかと思って、異形のニンジンを触って確かめてみる。
なんともないニンジン。
くすぐって見れば何か変わるかもとくすぐってみるが何も変わらない。
手でもかじってみれば普通のニンジンかどうかわかるかもと齧ろうとしてみれば、どういうわけか怯えているような雰囲気がする。
なんだか可哀想になって齧るのをやめると安心したような雰囲気になる。
なんとも普通のニンジンに見えないニンジンだ。
「遊んでないでこっちを手伝え。」
どうにかして正体を暴いてやろうと苦戦していると祖父から声がかかる。
作物の収穫を手伝っている最中だったことを忘れていた。
が、どうしても手中にあるニンジンのことが気になってしまう。
「おい、早く来て掘り起こすのを手伝ってくれ。」
と、いわれてしまう。
どうしてもあきらめられない当時の自分としては、祖父に異形ニンジンを見てもらうことにした。
「手と足の生えた普通のニンジンだ。それを置いて早く手伝え。」
そのように祖父に言われてしまったが、あきらめのつかない気持ちがあり、目が合ったその瞬間、そして齧ろうとしたら怯えていた雰囲気があったことの話をした。
「なるほどな、まあそういうこともあるじゃろう。もののけが憑いたのかも知れぬし、もののけそのものかも知れぬ。じゃがしかし今はお天道様が天にあってもののけが活動できぬ時間じゃ。このニンジンもお天道様の力で普通のニンジンになったのじゃろうよ。」
手を止めて話を聞いてくれた祖父。
仕方なしに、ニンジンに目印をつけ収穫袋の一番わかりやすい一番上に置いておいた。
一刻半ほどたっただろうか。
なんとか収穫を終えて異形ニンジンを確認しようとした。
無いのである。
居ないのである。
周囲を探しても、袋の中をかなり出してみても。
収穫袋からニンジンを出していると祖父に怒られてしまったのもあって、しぶしぶ探すのをやめて気落ちとともに目線を落とした。
収穫袋のすぐ隣にさっき窪んだかのような状態の小さな穴が二つ。
逃げやがった・・・と幼心に悟った。
今は昔、草木が生えた昔は畑その記憶。
異形との出会いの記憶。
誰も信じてくれないと思い、ずっと話すことなく心に仕舞っていた出来事。
ずいぶんたって異形のニンジンはもしかしたら、マンドラゴラだったのではないかと一致する部分が多い。
※西洋の魔法や魔女の世界に出てくることもある不思議な植物?
それは声を発さなかったし、まるで生き物のような感情を感じたそれだった。
まんどらごら マンドラゴラ マンドラゴラはよ
夜な夜な畑に忍び来る。
まんどらごら マンドラゴラ マンドラゴラはよ
ニンジン抜いて寝やがった。
まんどらごら マンドラゴラ マンドラゴラをよ
引っこ抜いたら大変だ。
まんどらごら マンドラゴラ マンドラゴラのよ
声を聞く前に手でふさげ。
まんどらごら マンドラゴラ マンドラゴラのよ
寝ぼけたやつはカジっとけ。
まんどらごら マンドラゴラ マンドラゴラとよ
であったら不思議がいっぱいだ。
異世界、もののけ、幽世に。
純粋な心に忍び来る。
また時間が空いたら新しく書き進めていきたいです。
よろしくお願いします。