(第二部)六十二章 彼の瞳は寂しさを
今回はとても短いです。
つかの間の出来事でしたが、そういう話結構考えさせられる場面でしたのであえて書いてみました。
(第二部)六十二章 彼の瞳は寂しさを
彼の瞳は寂しさをたたえていた。
夏休み直前というその日の出来事だった。
あまり話のしたことのない同室生が話しかけてきた。
「俺、明日から学校に来ないから・・・。」
「えっ?、何があったん。」
「まぁ、色々とね・・・。」
その会話を切り口に暫く彼の話を聞くこととなった。
話を進めていく上で何となくだが少しだけ突っ込んで話を聞いてほしそうな感触があった。
「喧嘩に明け暮れていたわけでもなさそうだし、女がらみが原因?。」
「彼女はいるけどそればっかりじゃあないんだよね。」
「とりあえずはそれもあるけど、他が原因ということ?」
「まぁねぇ、色々あるね。」
「じゃあ家の問題があってということなのかな?、あまり聞きすぎもよくないけど気を悪くしたらゴメンだけど。」
「ああ、全然気分悪いってことはないからいいよ、家にも色々あるよなぁ~。」
「ふぅん、なるほど色々ありそうだね、これからのことだけど、やっぱりすぐに働くとかいう感じ?」
「うん、働き口は大丈夫なんだ。もう決めてある。」
「それは良かった、君の事だから土方とかはないと思うけど、どんな業種?。」
「それはどこかであったら声をかけるよ。楽しみにしててくれよ。」
「おう、それはどこで会うかわからないけど、楽しみにしておくよ。」
段々とさみしそうな瞳に力が戻ってきている感じがした彼の細身の目の中に。
「じゃあ俺はそろそろ行くよ、君に話しかけて正解だったよ。」
「?、?」
「君なら話を真面目に聞いてくれそうだったし、何となくわかってもらえそうな気がしたから。」
「そうか、そういわれるとうれしいな、じゃあ元気で、どこかであったら声をかけてくれよ。」
「ああ、そうするよ。君も元気で。」
彼はスマートに踵をを返して去っていった。
彼の面と同じくスマートな感じで・・・。
この後、一度も彼とは会っていないが何故か強い印象が残りこのときのことを忘れたことはない。
あまり話をしなかった人物だが好感を持っていただけに残念な気持ちと、学業の途中で去っていくと人がいるというリアルを生で感じることとなった。
彼は元気でいるだろうか?、少し勘違いされそうな容姿をしていたが、女にもてたし、それでいて要領が悪そうなところがあったが、今も頑張って生きているのではないかと、そう祈りたい。
次話投稿は4月18日十七時の予定です。
よろしくお願いします。