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(第二部)六十章 何度も言うておるがやってはならぬ職業が

(第二部)六十章 何度も言うておるがやってはならぬ職業が


※この話題は時代に即していない話題となっております。差別的な意図はありませんが戦前世代の価値観や古い家筋での一風景として書いております。職業的な田舎の古い考え方がお嫌いな方はお読みにならぬようにお願いいたします。また読まれる方もそういう考え方があったのだなという程度の認識で読んでいただければ幸いです。


「何度も言うておるがやってはならぬ職業がある。この話になると途端に話を聞かんから何度も言うておく。」

「その話は何度も聞き、話は覚えておりますが・・・。」

「覚えておっても話を聞いておらん、じゃから何度も話をせねばならん。」


 おいおい何度目の同じ話なんだ?、意味がわからんぞ、意味がわからないという話を投げてみるか・・・「なぜそれらの職についてははならぬか聞いておりませんから得心がいきません。」という内容を話した。

「やはり話を聞いておらんかったようじゃのぉ~。」

 えっ?、内容の話を聞いていないぞ、凄く話の食い違いがあるような・・・と内心思いながら不思議な顔をしていたと思う。

 「まぁええ、話してやろうかのぉ。」


上から目線なのは祖母のいつものことなので気にしていては埒があかないのでそのままで聞く姿勢を整える。姿勢が崩れていると聞いていないと言うことになりいつまでも話が終わらない。

 だからだけではないがとりあえず姿勢を正す。ちなみに礼儀や人間性の基礎は幼年や若年に作り上げるもので、そういうものは周りの大人達が気をつけて接してゆくことが大事と後々気づくことになるが、今頃になって周囲の大人達のありがたさが少しづつ感じ始めた。

 もっともその当時はうっとうしいことこの上ないし、とくに祖母には良い思い出がない、上記を考えてみればかなり不器用な人だったのではないかと思う。


「まず美容関係の事じゃが、あれは人を切っておる。」

「?。?。ですが髪の毛ですよ。」

「じゃが人の身体に変わりは無い。」

「はあ・・・。」

「髪の毛は切らねばボサボサになるのでは?。」

「人がやるのは良い、うちの家筋のものがやるのがだめじゃ。」

「他人が良くて自分たちがだめなのですか。」

「おかしな話に聞こえるかもしれぬが、だめなものは駄目じゃ。」

 祖母とは堂々巡りの話でそのように伝わっているからそういうことという理屈らしかったので逆に理解しがたい話となった。


 後日この話を母方の祖母にしたところ同じ見解での話であったがより意味のわかる話を聞いたので補足としてそれを書いておこうと思う。


「美容関係をやってはならんと言う話は人の身体を切るということは話を聞いたの?」

「はい、聞きました。」

「うん、それから先が聞けんと言うことで意味がわからんと言うことじゃな?。」

「まあそういうことです。」

「なるほど、それはなこの家もそなたの家の先祖も武士の家だからじゃ。」

「??」


また意味がわからぬ話が出てきたぞと内心思うが、そのままで話を聞くこととした。


「だから武士は戦働きをする、つまり人を切って人を守り領地を守り国を守っていた家業じゃからの、いくさや身を守る以外で人を切るのは避けるという事じゃ。これはそういう先祖を持つ家筋ではよく言われることじゃから覚えておくがええ。」

「なるほど、先祖がそういう関係だからしてはならぬと、しかしいまはそういう時代ではないですが・・・。」

「普通に考えればそういう答えになるわなぁ。じゃがな因果はついて回ると言う話じゃ。」

「因果ですか?。」

「先祖がそうしたからそうであって自分は違うと思うじゃろ普通は、しかし自分はしていなくてもそういう家筋に生まれると言うことは前世とか何かで同じようなことをしていたから武士に家筋に生まれたという事じゃ。」

「なるほどなんとなくわかりました。」


「完全にわからんでもそういうことにしておくとええ、それとな・・・。」

「はい。」

「革加工に関することも同じような意味での、生き死にの中にあった家筋だから死んだ者を冒涜することを嫌ったのじゃろう。それがたとえ牛馬であったとしてもじゃ。」

「・・・。」

「我らの先祖とて牛馬の皮は使うことがあって自分のものは自分でも補修していることもあったじゃろうが、それを生業(なりわい)にしてはならんと言うことじゃ。」

「生業?」

「生業とは職業のことで革加工や美容業のことで金銭を得るという意味のことじゃ。我々がそれを生業にすれば業が深まって地獄に落ちると昔はいうとったの。」


 当時はよくわからないことが多かったが、なんとなく言わんとする意味がわかったような気がしたものだ。

 もちろんすべて納得したわけではなかったがこの話の意味はこういう部分なのだろうと思うしか無い。

 私の父方も母方の先祖もともにある意味繊細な感覚を持っていたのかもしれないとその時分には思ったものだ。

 職業的な差別意識はないが自分はとりあえずその二つの関係は避けておこうと思った。

次話投稿は3月21日の予定です。

よろしくお願いします。

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