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(第二部)四十一章 ものは試し

(第二部)四十一章 ものは試し


「ものは試しだ、やってみるか・・・。」と、一人つぶやき材料と道具を集めてみる。

 そう収集に難しいものは無いがある程度正確に作る必要がある、といっても素人学生レベルが正確にというはなしであれば程度の物は知れていよう、そう思っていただければと思う。


 材料は、適度な長さの針、250CC清涼飲料水の空き缶、空き缶の十分入る大きめのコップ、固定用ゴム(消しゴムで代用した)、2.5cm×6cmくらいの腰のしっかりした紙、半田。工具はカッターナイフにハサミ、半田付けくらいのものか・・・そうそうあとはガーゼマスクを用意する。


 まずはコップに空き缶をゴムで固定するのだが、まっすぐに固定するのが些か難しく第一難関。これはコップの底に3cm程度の隙間を作るために空き缶を浮かした常態で固定せねばならぬ為。

 つぎに固定した空き缶の上部真ん中に針を立てつつ半田付けをする。もちろん空き缶のプルタップは下部に向けているので、上部はいわゆる底部だ。

 その真ん中にまっすぐ針を立てなければならない。

 片方から見てまっすぐなようでも、多方向から見れば曲がっていることなど多々ある。

 この工程がしっかりできる限りの正確さが出ていなければ全くの失敗となる。

 この工程を何度もやり直して何とか納得のいく物が出来たようだ。

 最後に長方形の紙を斜めに横長に二つ折りにする、いびつな台形が向かい合っているような簡易プロペラのような感じだ。

 紙の簡易プロペラを針の先にバランス良く置いて「T」字に安定させる。

 針の先に置いた紙の簡易プロペラに息を吹きかければ、するすると回転するような仕上がりにする。


 できあがった、さあ工具や工作で出た破片やゴミを片付ける。

 少し前に自作した修行着、何のことはない白布の真ん中に頭が通るくらいに穴を開けて腰の辺りで適当な紐で縛る、つまり貫頭衣の形状。前身と後ろ身は少し長めになって臀部が十分隠れる程度の丈、前身はそれより少し短い。

 その修行着を着用して片付いた机の上にさらに白布を敷いた上で、その妙な紙プロペラの附いた装置を机の真ん中辺りに置く。

 実験?挑戦?の準備のしつらえができ、マスクを掛けて呼吸の影響が出来ないようにする。


 椅子に座り装置と正対し姿勢を正す。

 呼吸を整え半田付けをした針の根元に目線を据えつつぼんやりと見る。

 微音で呪文を唱えて集中する。

 集中しつつ簡易プロペラが回転するように念じる。

 集中の仕方が悪く呼吸を忘れて、息苦しくなって集中が途切れる。失敗。

 集中をしてゆくにつれ目に力が入って入りすぎて目が軽く痙攣。。。失敗。

 集中してゆく肩や腕に力が入って無駄なところに力が逃げていく。失敗。

 試行錯誤を繰り返してゆく。


 いい加減集中力が切れた頃に宿題のことを思い出す。。。

 明日は英語のおにおにな先生だ、ある程度やっておかねば頭に響くうなり声と放課後の居残りが決定する。

 それは非常に困る、必要箇所の宿題を早急に手をつけ終わらせようとした頃に夕食の声がかかる。。。


 夕食に湯浴みやその他の身支度を終わらせて、もう一度、念動力実験を開始する。

 修行着を身につけマスクを掛けて椅子に座り姿勢を正す。

 呼吸を整え次第に深くゆっくりとした呼吸に鎮めてゆく。

 視線は針の根元ににらみつけないような柔らかくぼんやりとした目付をする。

 そうしてさらに深い集中力を得るために呪文を唱える。

 未熟な自分では呪文を唱えても少しだけ違うように感じるのみだが、それでも何もしないよりかなりましだ。

 現時点の段階で出来ることを総動員して態勢を整えてゆく。

 先ほどの実験では急いて体制が十分でなかったかも知れないとおもい、事前準備を落ち着いて行うように注意した。

 そろそろだろうか、簡易プロペラの回転を念じても良いのは。

 ゆっくりとした呼吸の調子に合わせて念じて思いの方向性を整えてゆく。

 

 ぴくりと上下に揺れた。

 もう一度その振り幅が大きくなった。

 軽い紙が重たい動作をし始める。

 鈍重な紙の簡易プロペラ。

 そうして念じた意図と反対側に回り始めようとするので、一度目を閉じて心を整える。

 ピクリと簡易プロペラが反応したときに心が乱れたのだろう。

 もう一度念じ始める。

 再び鈍重な回転力がかかりはじめた。

 今度は思う方向へと回り始める。

 うれしさで精神が乱れ始めるのを再び整え、ゆっくりと念じてゆく。

 しだいしだいに回転力が加わりやがてクルクルと紙の簡易プロペラが回り始める。

 何とか実験は成功した。

 成功したら力が抜けて暫く体を動かすのが億劫になるほどだった。


 これらの一連の念動力実験は、テレビの話題を発端とした超能力の話題が教室中に溢れ、信じる人は少数で信じない人が多数を占めたところで、静かな反骨心が出て、実験や挑戦しても居ないのに否定するのはおかしいという妙な正義感が原動力だった。


 その超能力話題の中で久しぶりに同級生から話題を振られたときに、念動力実験の事をして成功したことをいうと、やっぱり可笑しなあっち側のヤツだわという宣告を同級生から受けることとなった。

 が、しかし実験の成功は事実だし嘘を言ったわけでもないので特に気にはしなかったが、自分以外の同級生からさらに痛いヤツ認定をされて話しかけられることがさらに減ったのは些か読み間違えだった。


次話投稿は10日か17日の17時の予定です。

よろしくお願いいたします(^_^)

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