表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
41/67

(第二部)三十九章 眠くなりそうな昼下がり

(第二部)三十九章 眠くなりそうな昼下がり


 教室の中には数組のグルーブが談笑している、眠くなりそうな昼下がりのひととき。


 談笑しているグループの合間を縫うようにして、ポツポツと席についてぼっとしたり、こっそり雑誌を読む者など様々だ。

 私も昼下がりの睡魔と格闘しようか、それとも誘われようか迷っていた。

 

 そんなまどろいの横合いから時折視線を感じる。

 談笑している女子のグルーブの一つから。

 好意的な視線ではないだろう、興味的な視線でもなさそうだ。

 絶対とはいえないが嘲笑的な視線を感じるし、わざと聞こえる大きさの噂話というものも聞こえてきた。


 噂話はそもそも身に覚えのないものが殆どで、斜め上に勝手解釈したものが殆ど。

 そんなの見てみたい~という言葉が聞こえてきたが、自分もそんなの見てみたいわと思うこと然り。

 ただそうは思うものの、根も葉もない話がぽろぽろと入ってくれば気も滅入ってくる。

 本人たちは悪気無く楽しそうに話をしているが、楽しければ真実がどうであれ関係ないのだろう。

 そんな感じのはっきりと聞いてこず、聞かせたい部分のみ聞こえるように話す噂話を二~三日おきにされれば、気が滅入るからさらに深く気分は落ち込んでゆくのは自然なことだった。


 何度かそんな噂話をせず聞いてくれれば話すと言っても、そんな話はしてないもんね~うん、そうそう、という感じで返ってからかわれるだけだった。

 当時の自分にはこれはさすがに理解が出来なかった。

 家風を大事にした考え方や精神的に幼かったという事もあり、意味もわからず、女子の習性も知らなかったので仕方なかったが、なにやら晴れない気持ちが積み重なってゆく。

 女子を撲打するという考え方は無かったし、非常時以外は婦女子に手を掛けてはならないという古風な考え方が底辺にあった。

 古風な考え方が底辺にあり、現代的な平等観の中に生きて、女子の習性を知らないという条件が重なれば向かう先をうしなう感情がある。

 けっこう長い間続けられていたので鬱屈した気分から抜け出せずにいた。


 その日も何度も繰り返される女子噂話の昼下がりだった。

 鬱屈した気持ちをたたえたまま、何となく鬱屈の原因となっている女子グループの方をみた。

 みたと言っても注視するわけでは無く、ぼんやりと見渡す感じだった。

 違和感に遭遇した。

 女子グルーブに重なって「色」が見える。

 それは決してきれいな色では無く、ヘドロを感じされる粘質感のある緑色だった。

 通常の視界で無い違和感に驚くと、「色」は急に見えなくなった。


 昼からの授業はもので暗澹たるもので、先ほどの「色」が何だったのか気になってしょうがない。

 何度も教師に注意され同級生の幾人から野次が飛び交う。

 それでも教師も野次も気になるどころではない。

 何か聞いたことがあるような気がすると思いながら、授業の間中、記憶をたぐり寄せる。

 そういえば祖父との何かの会話の中にあったような・・・。

 喉まで出かかっている思い出せれる様な思い出せないもどかしさを抱えながら自転車に乗って下校する。


 自転車は行く。

 ほどよい風の中を自転車は行く。

 そよぐ風の中をゆく。

 風に緑の葉がやさしくざわめく。

 そんな日は少しゆっくり自転車を漕ぐ。


 常速よりおっとりした速度。

 周りを見渡す余裕がある。

 前方を気にしながらも遠くの山々を眺めたり、遠ざかっていく民家を楽しんだり、ゆったりと変化してゆく雲の形に和んでゆく。

 

 ふと道路脇の草花が目に付いた。

 小さくてきれいな花。

 名も知らぬ花。


 ああそういえば・・・。

 祖父曰く「薬草を煎じるにも問診しただけでは駄目だ。人の発する色を見て体の善し悪しを観る。人は色を持っていて元気のない部分は発する色が薄いか濁っている。その濁っている処に対応した薬草を煎じて飲むようにする」と。

 

 また昔一個下の男子が電線に色が見えるとかと言っていたな。。。

 そうか、あれがそうなのだろう。

 ここでいう「色」の補足説明をしておけば、昨今市民権を獲得したオーラと同等のものをさすと考えれば良い。


 夜、祖父に「色」について聞いてみる。

 昼間に体験したことは「色」で間違いがなかったこと、色を観るための鍛錬方法などを聞いた。

 それによるとまず神棚や神様にご挨拶と色を観る鍛錬の実施のご報告をする、次に押し入れや壁の白いところの前で和源の加持印を組み、目線の位置に指先が来るほどに腕を持ち上げる。

 手や指先を見ずに壁の白を眺めつつとある呪文をゆっくりと唱える。

 それを続けてゆくと、体調や精神状態にもよるが「色」が見えることがあった。

 さらに続けてゆくと回数が増え、見える時間も長くなっていった。

 

 今では常時、透明の霧のような状態のものが人の周りに見えるし、体調や精神状態の良いときには見ようと思えば「色」を見ることが出来る。

 ご祈祷の時などに見て置くことによって、祈りの確度をあげる一つとなっている。

 また人と話すときなどにも役に立つことがある。

 もちろん自分の健康維持のためにも活用できてありがたい。


 

 あの時の昼下がりに女子たちが私の噂話をせず、のんびり暮らすことが出来ていれば、学生生活はより楽しかっただろう。しかしあれがなければ「色」を見るという処に到達していないかも知れない。

 何らかの精神状態に純粋に統一される必要があり、なおかつわかりやすい環境にあることが大事だからだ。

 禍転じて福となる事もあるようだ。

 その時の苦しみに埋没しないことが大事なのかも知れない。

 苦しみを前進の力に変えること、それが革新してゆくコツなのかも知れない。

次話投稿は13日または20日の17時の予定です。

執筆速度が不安定のためどちらになるかわかりません。

よろしくお願いします(^_^)

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ