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(第二部)三十八章 内密の掟

(第二部)三十八章 内密の掟


「今まで儂が教えてきたことは誰にも教えてはならんという事をよう守った。もう少し進んだことも見せるが、自分でも鍛錬してゆくことが大事じゃ。練習してゆくことが大事じゃが、習ったことは誰にもいうてはならん。許可なく秘伝のことをいうと大きな神罰が下る。努々忘れてはならんぞ。これは内密の掟じゃ。約束じゃぞ。」


 祖父の言葉はそれは重たい気をはらんでいて、いいえがいえないような雰囲気だった。

 その雰囲気がなくとも、小学生時期に少しでも霊界のことや加持についての事を話せば同級生からのからかいや異質な者を見る目を体験しているので、心新たに自分に言い聞かせた。


 だんだんと話題の幅が広がっていくなかで問題も出てくるかも知れないと思うからだ。

 さてついつい口から出てしまうものについてどうしようかと思案することとなる。


 場所は変わり学校での休憩時間のこと。

「テレビアニメのあの○○○○○ありキャラええよなぁ。」

「おうおうあれもええけど○○○○○もええじゃろ。」

「そうじゃなあ、ええだけじゃのうてああなりてぇのぉ~。」

「成れたらええよなぁ~。」

「うん~そうじゃなぁ。」

などとの同級生のいつもと変わらない会話が聞こえてくる。

いつまでたっても飽きない奴らだな、同じ会話を二日と開けずにしてているよな、と心の中でつぶやきながら聞いていた。

 この時期も多少の会話はするものの深く交流する同級生はいなかったが、時折さみしいと感じることがあっても交友関係はこの程度で良いかと思う方が多かった。

 が、急に同級生から占いがどうのとか、超能力番組や、夏の特番の霊体験番組についてのコメントを求められたりとすることがあって、ついつい祖父との約束を破りそうになることがあった。


 

 たまたま実入りの良いお手伝いをこなし、雑誌か漫画でも買おうと一山越えて暫く自転車を走らせて本屋までやってきた。

 同級生が話題にしていたあの漫画でもないかな、面白いっていってたし・・・ぷらぷらと店内を歩いてみる。

 コーナーにたどり着く。

 ない

 無い

 目当てのものがない。

 店員さんに聞いてもないものはない。

 小さな田舎の本屋、その宿命。

 頭を切り替えてノンジャンルで探してみる、何か気になりそうな本がないかどうか。


 行ったり来たり、本の題名が目に飛び込んできたものを手に取って見開いてみたり。

 なかなか面白い本がない。

 ああ見つからない。

 ふと店内でも奥の方の余り客が行きそうにないコーナーが目に付いた。

 別段店内なので、霊スポットというわけでもないのに余り人が行かないコーナー。

 自分もその辺りにいったことがない。

 じゃあ行ってみようかなとふと考えたかも知れない。

 すうっと近寄ってみた。

「あれなんだこの本は・・・」

○○気功法と書いてある本を手に取った。そういえば先日テレビ番組でこんなのやっていたよな、解説本が出ているのかと思いつつパラパラと項をめくってみる。

 めくって確認してみれば参考になる部分もありそうな気がしてきた。

 祖父から教えられたことの意味を自分で研究する材料の一つにもなりそうだ。

 と、そこでふと閃きがあった。

 とりあえずテレビ番組でやってるくらいだから、認知度は高いだろう、気功法を隠れ蓑にしていけは、内密の掟を破らないで良いのでは、と着想したときその本を持ってレジへと向かった。


 読んでみると為になることも多かったし、祖父のいっていたことを理解する手助けになった部分もあった。

 あと趣味ジャンルを同級生に認知させておけば、祖父との約束を破らなくても良いだろう。

 と、いうことで○○気功法の本を学校に持って行って時間の長い休憩時間に本を開くようにした。

 もちろん読み返したい部分もあったからだ。


 そうすると何を読んでいるのか、怪しい本に違いないとかヒソヒソと会話する同級生の噂話が聞こえてくる。

 その噂話にしてやったりという内心気持ちになっていたが、もの悲しい気持ちにもなった。

 これは仕方が無いと思いつつも、他者から見たら痛いヤツに見えていたのではなかろうか。


 そうして暫く経って少しくどい質の同級生の一人が近づいてきて「何の本を読みょ~ん。」といって聞いてきた。

 そう言いながら近づいてきて、本や小物を取り上げて「先生にいうた~ろう。」などといいながら教室を歩き回るという過去を持った者であったので、少し警戒感を持ちつつも本の表紙を見せた。

「なんじゃこりゃ?。」

「いや気功法の本。」

「なにそれ?、どんなやつ?。」

「少し前にテレビ番組でもやっていたやつだよ。」

と、近くにいた物知りを気取った同級生が勝手に解説してくれた。

物知りの同級生が近づいてきたことで、気になっていただろう同級生がわらわらっと寄ってきて「ちょとこの本貸して。」といいながら数人がかりで持って行ってしまった。

 その同級生についてくどい質の同級生もついて行って読んでいるようだった。


 その後、気功法という私のあだ名が一つ増えたことは喜ばしいことなのか悲しいことなのか判らないが、妙なあだ名が増えたものだとおもった。

 まぁ当初の目標は達成したが、何とも言いようのない気持ちに何度もなった。

 同級生の中でも特殊な趣味を持っているヤツだという認識を持たれたのはそれで良いとしよう。

 これで多少口がすべってもああいう趣味の人間だからそういう話題もあるよなと思われることが増えただけだ。

 何故か自分の心がさみしい気持ちにもなるが。


 意外だったのは、少しくどい質の同級生が一緒に研究しようと行ってきたことだ。

 もちろん気功法のことだ。

 おそらく自分が人気が無いのを知っていて、力をつけて見返したいと思ってのことではないだろうか。

 きっかけは何であれ、それも向上心で素晴らしいと思う。

 祖父からの教えを隠しながら時折、気功法の練習をすることとなる。

 後々これにあと二人ほど加わることとなるのだがそれはまたの講釈で。

 


次話投稿は10月6日か13日の17時予定です。

お勤めの予定が急に詰まってきたりと色々ありまして・・・

そういう感じですが、よろしくお願いします。

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