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三十二章 バスに乗って

三十二章 バスに乗って


 バスに乗っての旅すがら、奈良から北に向かって調子よく車は走っているらしい。

 京都に向かっての車中では、ハイテンションの同級生たちの話し声が乱立しまったくの雑音にしか聞こえない雰囲気である。

バスガイドさんのアナウンスも四分の一程度しか聞く児童はおらず、後は騒いでいる。


 騒がしい中のガイドさんのアナウンスを適度に聞きながら、流れゆく風景を眺めている。

 隣の座席はぼっち君であったため、とりとめのない会話から解放されていた。

 ぼっち君はなにやら話しかけたそうにしていたが、そういうそぶりを見せたときそういう雰囲気を目線で殺していた。

 なぜか話したい雰囲気ではなかったためだ。

 それというのも妙な胸騒ぎに似た感覚があったため、さてこの胸騒ぎは何だろう、その感覚と付き合いながら景色を眺める。


 二時間揺られたのだろうか、三時間雑音の密室に居たのだろうか?

 既に京都市内に入っている。

 市内の交通量と信号渋滞と人通りの多さに驚きながら、都会の景色を眺めている。

 何を考えながらでもなく、ただある風景を眺めているだけだ。


 どこであったのか、単なる車上の児童に詳しい地点など判るはずもない。

 が、そのどこであったのか定かでない地点にさしかかる前に、動悸に似た胸騒ぎを覚え、胸を押さえるほどだった。


 その強い胸騒ぎのなか、顔を上げ車窓から外を眺めた。

 先ほどまでコンクリートの建物の林立し、車は車道に列をなし、人々はわらわらと粗密に行き来していたそういう景色はどこにもなく、家々は低く瓦葺きの屋根なども視界にはあらず、行き交う人は着物を着てその着物は時代劇などによく見る物よりも違いがあり、細身の袴にしなだれたような烏帽子をかぶって洗いざらしたような質感の水干を着ているような人も居た。

 町並みは高級感よりも生活感があるような感じだった。

(この当時の自分では説明できない衣服や風俗で、この風景を鮮明に記憶していたので後々に調べました)


 何かに乗っていてこの景色を見たことがあるような、そういう感覚にとらわれた。

 この景色はおそらく三秒ほど見ることが出来たのではなかろうか。

 もしかしたらもう少し長い時間だったかも知れないし、ほんの一瞬だったかも知れない。

 ただ写真のような感じではなく、人々や街路樹は動き揺れていたので数秒ほど眺めることが出来たのではないかと考えている。


 この時代錯誤な風景は記憶に強烈に焼き付いて、旅程の中でついついぽろりと同級生に話してしまった。

「またこいつの妄想話が始まった。」

といわれたが、旅行の中のハイテンションに飲み込まれて、からかわれることも少なかったのが幸いだ。


 この記憶も人の可能性を調べてゆくという興味を加速させるものだった。

 長い時間、人の可能性や神界や幽界を研究できているのもこういう体験に支えられていることが多い。



次話投稿は28日17時の予定です。

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