二十八章 竹をちょうど良い幅に割って
二十八章 竹をちょうど良い幅に割って
竹をちょうど良い幅に割っていく。
四尺ほどに切った竹を割ってゆく。
竹の幅は一寸程度。
竹の幅がとれるだけ取って割ってゆく。
竹の種類にもいろいろある。
家の周りに生えている竹だけでも幾つかのものがある。
そのなかでも一番身が厚い孟宗竹をこの度は選んだ。
竹は柔らかすぎてもいけないが、堅ければ良いというわけでは無い。
そういう適した竹を見つけるだけでも大変な労力が必要だ。
柔らかすぎれば曲げすぎてしまうし、堅ければ力を入れたときに折れてしまう。
できれば竹を切って採取する時期もある。
水をたくさん吸い上げる時期もあれば、水をほどよく吸いながらも堅固な時期と・・・。
もちろん竹材として良い時期に採取することが大事。
そう作ろうとしているのは竹弓だ。
ほどよい竹材を幾つか選び出して凹凸やバリを削ってゆく。
先ずは竹の節の残りを鉈で削る。
ついでに大きくいびつな部分も鉈で軽くそいでゆく。
つぎに肥後守でささくれや出っ張りを削り取ってゆく。
さらには弦をかける凹凸をつけてゆく。
不精者であればこの後すぐに竹を曲げつつ弦を掛ければ簡単な竹弓ができあがる。
できあがるが強度も不安定だし、張力も弱く良いできとはいえない。
もう一工夫といわず二工夫したいところだ。
この時分は風呂は五右衛門風呂で薪での風呂焚きだ。
この火を使って一工夫目をしてゆく。
もちろん焚き口の中に突っ込むわけでは無く火の消えない段階まで多を起こした後、風呂焚きに支障の出ない様にしつつ、ほどよく燃えている薪を幾つか焚き口まで引っ張り出して使用する。
火に直接当てないように下手に焦がさないように竹を暖めて、十分に熱を持った段階でじんわりと竹を曲げてゆく。
それは一本だけでは無く下加工したものを適宜必要分曲げてゆく。
が、火力が安定せず一気にできるものでは無いし、風が吹き込んできて根津か逃げることが多い。
かなりの悪戦苦闘の作業だ。
何日かに分けて制作してゆくが、どうしても気持ちがはやる。
しかしここではやる気持ちに負けては何も良いものができない。
二本を一組にして形を合わせてゆく。
一本は内側を、一本は外側に。
二つのそりが合うように曲げてゆく。
内側は身の薄い物を用いる。
作り方にもよるが時分の場合は内側の長さが七割程度のものを用いた時が具合がよかった。
もちろん技術が向上し、平面に近い削りと曲げができたなら同程度の長さにして膠などで貼り合わせて行くのが良いのだろう。
父にねだって工業用の膠を調達したことがあるが、煮詰めてゆく段階から調子が判らず膠を溶かしてゆく段階で失敗した。
さらに高い段階に仕上げてゆくにはかなりの研究が必要になってくるだろう。
工夫は様々する。
内側の端と端を外側に向く方向を削り斜面を作る。
そうすると引き絞ったときに、外側の竹材にかかる負荷が線では無く面になるので痛みにくいし、そのほかの効力もあるだろう。
合せることのできた竹材を紐を巻いて巻き合せてゆく。
握り手の部分と少し離れたところと三箇所、拳の幅より少し広い程度に紐を巻いてゆく。
諸に巻いてゆきたいところだが、そうすると壊れることが多かった。
もちろん素人技の子供仕事であるので・・・。
一番考えなくてはならなかったのは弓本体では無く弦の方だ。
下手な紐を使うと、張力の強い弓だと数回も弓引くと切れてしまう。
もっとも単体の竹材を使った程度の竹弓であればあまり考えなくても良い程度なのだが・・・。
どのように工夫をしたのかはここでは伏せておこう。
弓ができれば矢を制作しなければ、できたとはいわないだろう。
これはいろいろの材料を使った。
竹材の余りや蒲の茎やススキや姫竹など。
矢作りは特別なことは無いと思うが丁寧に作ることが大事。
矢が曲がっていては、放ったときに曲がって飛翔する。
急激な凹凸があれば握り手を怪我させてしまうばかりか、弓に引っかかりかなり危険なことになる。
矢羽根を集めるのも大変だった。
雉の羽は極上だったが落ちていることはまれで、鴉のはねが多い・・・が、厚紙で代用することで何とかした。
鏃をつけたいところだが、ここまでやってしまうと人が勝手に使ったときにすごく危険なものになるし、もし間違って人に矢が向かっていったらということでそこまではやらなかった。
のだが、矢の先に釣りの錘に鉛の板錘というものがあって少しだけ取り付けて見たことがある。
とても良い安定性を見た。
さあできあがった。
何をするのか・・・。
それはお遊びの弓祓え&的当て&○○脅しのためだった。
弓祓えは祖父からおよその形を聞いていたのをまねての遊び。
といっても弓を作る段階から遊び道具として祓え具として作り方も教わったということ。
竹材を貼り合わせることも祖父が言っていたことを子供心に再現がどこまでできるのかを試したわけだ。
あとは山遊びの時に重宝した。
どのように重宝したのかは読者の想像力にお任せしたい。
もちろん人に向けたりはしていないですよ。
次話投稿は30日17時の予定です。
よろしくお願いします。