二十七章 池の畔、川の畔
二十七章 池の畔、川の畔
草深き田舎の青垣に包まれている場所でありながら、自然の中に浸りたいと思うこともある。
自然に浸って・・・といえば格好いい、実態は単なる息抜きがしたいと言うことだ。
そこで釣りの出番となる。
この頃(この話の当時)同級生のなかでの流行り物が釣りだったので、員数あわせのように声がかかることもあった。
もっとも釣りに関しては、祖父が海釣りなどに連れて行ってくれたことが度々あるので珍しいとも思わなかったが。
明らかに員数あわせの声がかりの時には煩わしさが無い場合が多いのでついて行くことがあった。
逆に人数の集まらない同級生からの声がかりの時には、何かと煩わしいことが多々ある。
どちらにしてもすべて断るのもさすがに小学生生活に支障が生じることがあるので、適度な回数付き合うことにしていた。
同級生のグループでは誰かが新しい道具を買ったら見せびらかすように学校へ持ってくる。
話題が盛り上がって何時々釣りに行こうかという話となる。
そういう風になると釣話しばかりに教室中がなってゆく。
釣り話しに夢中になっている同級生を横目に、自分たちで作った道具では無んじゃんいかな~とか馬鹿みたいな事を思ってしまう。
難しい道具は別として自分の手で道具を作ることは楽しいし、何かひと味違うような気がする。
海釣りに連れて行ってくれた祖父はできる限り仕掛けは自分で作る様にしていて、釣り針を縛る手伝いをしたことが何度もある。
「釣り針や仕掛けを自分で作るのは、もちろん安く仕上げることができるということもあるが、命を頂くのに既製品ばかりでは気が引けていけんのんじゃ。」
と、母方の祖父は時折そのように言っていた。
その言葉に納得するものがあったので、同級生の釣り道具自慢を聞いてもあまり心が動くようなことも無かった。
もちろん既製品は性能が良く扱いもしやすいだろう、そういう意味ではいいものだろうね。
さて同級生と行っても、一人で行っても、兄弟連れで行っても自然の中でぼーっとしたいときには餌をつけずに釣りをする。
目的が釣りでは無いことが多いのでそういうことが多い。
同級生と行ったときには釣果がないので、同級生たちが勝手に勝ち誇ったような顔をするのが面白い。
ときおり餌をつけていないのに魚がかかることがあって、急に引き始める竿に驚いて池に落ちそうになったたこともある。
あれには驚きで、のんびり鳥の飛ぶさまを観察していたところで、鳥があちらへ飛んでいこうとしているさまの途中に、竿が引かれると自分もそちらへ行っているような感覚がある。
これが合体すると池に落ちそうになる。
で、餌の無い釣り針に魚がかかったとき、ちょうど同級生に見つかり周りで騒がれることになる。
運が良いのか悪いのか、こういうときに限って普通に大きい魚が釣り上がる。
で、その結果がたまにしか釣り上げないが釣り上げると大物を釣るという評価になって時折釣り仲間に誘われることがある。
心の中では魚さんごめんね。。。とつぶやいて。
釣りはやるけどあまり好きで無いようになった出来事がある。
釣り上げた魚の取り扱い方のこと。
もちろん釣りに行くこと自体がかわいそうでは無いかと言われればそうなのだが・・・。
釣り上げた魚の釣り針がうまく取れないからと、同級生は力任せに糸を引っ張って・・・どうなったかは想像にお任せするが見ていて残酷極まりなかった。
そのような場面を見ると次は次第に張りも釣り糸にしかけなくなってくる。
これで安気に、ぼおっと釣りもどきができるわけだ。
しかし釣り針をつけていないからといって釣りが面白くないわけでは無い。 ウキや錘を小魚がつついて遊ぶので、ちろちろとウキが動いて竿先が振動する。
見ているだけで飽きが来ない。
ただ釣り針をつけていないのを弟に見つかってしまった。
「兄貴、釣り針が付いてねぇじゃんか・・・つけんと釣りにならんが。」
と、弟には兄の自然と遊ぶ心は判ってもらえないようであった。
次話投稿は23日17時の予定です。
よろしくお願いします。