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輪廻転生  作者: 香月薫
第4章
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第82話  国王がこもっている裏で1

「のん気なものですね」

 貴族たちは、セルリアン王宮にある宮殿の静かな部屋で、囁き合っていた。

 その中に、貴族院の姿も、ちらほら含まれていたのである。


 ここに集まっている貴族たちは、反シュトラー王派な者たちだ。

 密かに集まり、今後の動向について話し合われていた。


 この部屋は、貴族たちのために、造られた部屋だった。

 勿論、この部屋を使うに当たって、入念に盗聴器や盗撮器具がないか、調べられていたのである。

 だから、誰もリラックスし、喋られていたのだ。


「現在、陛下はボイコットして、執務室にこもっているそうだ」

 呆れ交じりの声で、とある貴族が嘲り笑っていた。

 貴族たちの耳にも、執務室にこもるシュトラー王の話が、伝わっていたのである。

 今日は、貴族院の集まりもあり、多くの貴族たちが、宮殿に集まっていたのだ。


「それに、殿下は妃殿下と共に、妃殿下の実家となった、メイ=アシュランス子爵邸に、お泊りだそうだ。気楽なものだ」

 皮肉混じりに話す、貴族たちの声。

 何かと、強硬な姿をみせる王室に、不満を募らせていたのである。

 そうした意見を持っている者が、出始めたことを認識しつつも、ガス抜きの意味を込め、ソーマたちは見逃していたのだ。


「確かに。執務室にこもったり、優雅にお泊りとはな」

「自由気ままで、羨ましいものだ」

「メイ=アシュランス子爵の力が、強まりそうだな。何せ、能無しの妃殿下の実家と、なったからな。どう出てくるか……」

 唐突の声に、誰もが懸念した顔を漂わせている。


 反シュトラー王派の貴族たちは、勢力を伸ばすかもしれない、メイ=アシュランス子爵を王太子の結婚が決まった当初から、ずっと懸念し続けていたのだ。

 けれど、メイ=アシュランス子爵の動きが読めない。

 これまで以上に、表舞台の催し物や、パーティーなどに、顔を出していなかった。


「元々は、軍人を多く輩出して、以前はそれなりの力があっただろうが、当主のゲイリーは、会社経営をしているからな」

 メイ=アシュランス子爵は、政治関係から手を引いていた。

 会社経営に、専念していたのである。

 反シュトラー王派には、不気味に映っていた。

 これから伸ばそうとしているのか、掴めずにいたのだ。


「軍人でも、貴族院でもない。強まると言っても、高が知れているだろう」

「そうだな」

 どこでも、楽観する者がいる。


「気になると言えば、第二継承となるラルム殿下の、母親メリナ妃だ」

「ああ。その話は聞いた」

「密かに、動いているらしいな」

「私の耳にまで、届いている」

「以前、親交のあった貴族たちと、頻繁に会っているらしい」

「いろんなところにも、顔を出しているようだ、メリナ妃は」


 ここにきて、反シュトラー王派に、危惧する出来事が増えていたのである。

 自分たちだけの争いで、自滅してくれる分にはいいと、誰もが抱いていた。

 王太子の突然の結婚、メリナ妃の動向。

 密かに、動いていた面々に、焦りの顔を覗かせていた。


「ラルム殿下か、傀儡なっていただける人物か」

 相手の顔を、それぞれに窺っている。

「どうだろうな。何せ、陛下の孫だしな……」

「ラルム殿下や、メリナ妃は、今後、どう動くか、見ていくべきだな。それで決めればいい」


「貴族院に、これまで出ていなかったのに、頻繁に陛下は、顔を出すようになったな」

「それに、異様なほどに、妃殿下を可愛がる」

「ああ。あれには驚いて、目をむいたぞ」

「私もだ。何なんだ? あれは?」


「それに、貴族院の古狸の二人も、動くのかと思ったら、今は静観している様子だな」

 貴族院の古株であるカークランド侯爵と、ハーデンベルギア侯爵の動きを気にしていた。

 古株の貴族であるゆえ、それなりに大きな力を持っていたのである。


「あの方の動向も気になる。ジュ=ヒベルディア伯爵が、妃殿下に近づいたらしいぞ」

「それなら、私の娘からも、聞いた」


 誰もが、困惑の顔を滲ませている。

 アメスタリア国は、強固な一枚岩ではない。

 裏では、いろいろなことが、暗躍されていたのである。


「そう言えば、妃殿下の測定結果は、厳重に情報を規制しているようだが、驚くべき数字を出したらしいぞ」

「確かに、厳重に情報を隠しているところから推測しても、考えられる行動だな」

「だが、なぜ、あんな小娘が?」

「私も、信じられん」

「だから、王室を強固にするために、数値の高い小娘を、取り入れたのだろう?」

「そうだな。そうでなければ、あんな小娘を、嫁にする訳がない」


「これで、アレス殿下の力が、さらに強まったら、大変なことになりかねないな」

「アレス殿下と妃殿下で、デステニーバトルで、これまでにない活躍すれば……」

 唸り声と共に、眉間のしわが濃くなっていく。


「……これまで大して内部に、干渉してこなかった殿下が、干渉してくるかもしれない」

「あり得る話だ。何を考えているか、わからない殿下だからな」

「干渉しないと言う態度のわりに、いろいろと調べているようだからな」

「会議の時にも、時々は、はっとすることを言ってくる」

「抜け目がない殿下だな」


「デステニーバルトで、成果を残すことも大切だが、これ以上、陛下たちに、大きな顔をされたくないからな。どうする?」

「妃殿下のこと、調べられないのか?」

「難しいな。あそこは陛下や、あの二人の息が掛かった者が多い。こちら側の人間を送り込む隙が、なかなかない」


 二人とは、ソーマとフェルサのことを指している。

 貴族院のメンバーであり、勢力がある貴族でもあったのだ。


 デステニーバトルの関係者は、厳しく審査された後、採用されていた。

 厳しい統制の元で、内部の情報が、外に広まらないようになっていたのである。けれど、少なからず、抜け道となるところや、穴となるところがあり、内密となっていたリーシャの測定結果が、僅かに漏れてしまったのだった。


「そこを、どうにかしろ」

「そういうな」

「ハーツパイロットを、引き込めないのか? その能力者を、ホワイトヴィレッジに押し込むとか、あるだろう?」

「貴族の中からは、難しいだろうな。やるとしても、民間から見つける必要がある」

「それでは、時間が掛かるだろう?」

「けれど、方法がない」


「それも、今後の課題の一つだな」

「……そうだな」


 シュトラー王が執務室にこもって、仕事を止めていた間に、貴族たちが、こんな話をしていたことに、気づいていなかったのである。


読んでいただき、ありがとうございます。

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