第44話 評議会2
輪廻転生、今年最後の投稿となります。
来年も投稿しますので、よろしくお願いします。
セルリアン王宮で、定例の評議会が開かれている。
ほとんどの貴族院が出席していたが、欠席している貴族院もいた。
シュトラー王の他に、長老でもあるカークランド侯爵、ハーデンベルギア侯爵など数名の貴族院たちが、顔を出していない。
これは、通常のことでもある。
ここ最近、王太子の結婚問題などがあり、珍しく勢揃いしていただけだった。
数年、評議会で仕切っているエクセルアムール子爵が揃っている顔ぶれを確かめる。
「来られないでしょうね」
その顔は、やや憔悴しきっている感が否めない。
いつも来ないメンバーが、評議会を掻き回していたからである。
主に、シュトラー王やカークランド侯爵、ハーデンベルギア侯爵だ。
その面々がいないだけで、ホッと胸を撫で下ろすことができたのだった。
「では、始めましょうか?」
何気なく、嘆息を漏らしていた。
王太子の結婚問題を優先していたために、いくつもの議案の採決が後回しになっていたのだった。少しでも解消するために、時間を無駄にできなかったのである。
「少し、よろしいか?」
唐突な発言に、エクセルアムール子爵の顔が曇っていく。
発言者であるルザリス男爵へと顔を傾けた。
憔悴しているエクセルアムール子爵とは違い、どこか涼しげだ。
無碍にできない。
「何でしょうか?」
「王太子妃殿下のことです」
「……」
ますます重苦くなっていくエクセルアムール子爵。
それに重なるように、ソーマの代理を務める弟のクラーツの顔も、眉間にしわを寄せている。
表情を一つも変えずにいるのはフェルサだけだった。
ニタッと、薄気味悪く、口角を上げている人間も、ちらほらいたのである。
「彼の方に、王太子妃を承認してよかったのでしょうか? このところ、いい噂を聞きませんし、振舞いに関しても、いかがなものかと思われることもされています」
「……」
ルザリス男爵が、ここにいる貴族院の顔を窺う。
どの表情も、芳しくないと覗かせていた。
「王太子妃殿下には、評議会として、何か言った方がよいかと思うのですが? それに今後のことを踏まえると、王太子殿下に相応しい側室を考えて貰うべきかと、進言した方がよろしいのではないでしょうか?」
無遠慮な眼差しを傾けてくる。
間違ってはいないと言う自信の現われでもあった。
「結婚したばかりで、側室とは……」
「ですが、早い方がよろしいかと。王太子殿下と、王太子妃殿下の不仲間も、囁かれていますし……。今回の結婚の話は、事前に私たちに報告をせずに、勝手に陛下が決めたことです。ですので、私たちも、お二人の関係を思えば、早めに側室のことも、考えておく必要があると思うのですが?」
「……」
何人かの貴族院が頷いている。
どの顔ぶれも、自分の身内を王太子の妃にと望んでいた者たちだった。
チラリと、黙り込んでいるフェルサの様子を窺うクラーツ。
何も、ソーマから言われていなかったのだ。
クロスとシュトラー王のことを知っているエクセルアムーム子爵も、フェルサの顔色を窺っていた。それに自分と同じように、二人の関係性を知っているであろう顔を、何人か見定めていたのだった。
その表情は、自分と同じように当惑している者や渋面している者、平然としている者がいたのである。
その誰もが、重く口を閉ざし、静観する立場を構えていたのだ。
暗黙の了解の下、国王の昔の行動については、閉ざすことになっていたのである。
大きく嘆息を吐いた。
答えを待っているルザリス男爵へ顔を巡らすのだった。
「先ほども話しましたが、お二人は、まだ結婚したばかりです。側室と言う話は、早計かと思いますが? 今はお二人も、戸惑っている時期でしょう。それに王太子妃殿下は、まだ王室に嫁がれて日も浅く、慣れないことでしょう。私たちも暖かく見守りましょう」
「それは、悠長ではないのか?」
ギムオーランド伯爵が口を挟んできた。
彼も自分の妹をアレスの妃にと考えていた一人だった。
それに側室と言う話は渡りに綱であり、側室の話を進めてもいいと巡らせていたのである。
これまで喋っていたルザリス男爵が、貝のように黙っていた。
その顔は、とても満足げだ。
「新参者は、せっかちで困るな」
貴族院の新参者の一人であるギムオーランド伯爵を、嘲笑するようにコーンフェルド侯爵が見下していた。
隠そうともしないコーンフェルド侯爵に、ムッとしている。
新参者とは、ここ数年で多額の金を積んで、貴族院のメンバーに加わった者たちのことを揶揄する意味も込められていたのだ。
「大切なことと、思いますが?」
苛立ちを滲ませているギムオーランド伯爵。
「ゆっくりと、見定める目を持つことも、寛容と思うが?」
二人の対立の光景に、ほとほと呆れているエクセルアムール子爵だった。
彼の思考は、早く溜まっている議案を片づけることなのである。
その進行を阻む面々に、嫌気をさしていたのだ。
ふんと、コーンフェルド伯爵が鼻で笑っている。
不愉快な表情を、前面で出しているギムオーランド伯爵だった。
「ギムオーランド伯も、せっかちの人のようだが? 妹殿もせっかちな人のようだな?」
「それは?」
ギロリと、ギムオーランド伯爵が睨んでいる。
その相手は、余裕の顔を覗かせていた。
「王太子妃殿下に、姑息ないたずらを仕掛けているとか」
「……見たのですか? 妹がいたずらを仕掛けているところを」
冷静にことを運ぼうとしているが、どこか気がそぞろだ。
それに対し、コーンフェルド侯爵は慇懃な態度だった。
「私は見ていないが、私の知人が見ていた」
言われた瞬間、苦虫を潰した顔を漂わせている。
ギムオーランド伯爵は、妹がリーシャに嫌がらせをしていることを、把握していたと言うよりも、どちらかと言えば、加担していたのだった。妹をアレスの妃にして、権力を手に入れたいと言う大きな野望を抱えている一人でもあったのだ。
まさか、それをコーンフェルド侯爵の知人に、見られていたことに、悔しさで顔を歪めていたのである。
他の数人も、つめが甘いなとほくそ笑んでいた。
「何か言うことはあるかね? ギムオーランド伯」
「……見間違いでは」
惚けてみせるギムオーランド伯爵。
ここで素直に認めることができない。
貴族院としての立場がある以上。
それに、大きな野望を持っている以上だ。
潰れる訳にはいかなかったのである。
「いや。それはないな」
鷹揚な態度を崩さず、唇を噛み締めているギムオーランド伯爵を見つめている。
「それとも連れてこようか、ここへ」
「……」
藪蛇でしかない。
視線を宙に彷徨わせる。
「コーンフェルド候。その辺で」
稚拙なと思いながらもエクセルアムール子爵が、愉悦に浸っているコーンフェルド侯爵を窘めた。
それでも、コーンフェルド侯爵はやめる気配がない。
「いかが思いますか? ラズミエール子爵」
挑むような眼差しを、フェルサに注いでいる。
名指しされ、軽く息を漏らし、コーンフェルド侯爵へ視線を巡らせた。
「その件でしたら、耳に入っております」
「ほう。そちらにも、入っていましたか」
シュトラー王の重臣でもあるフェルサにも、入っていたのかと驚愕が隠せないギムオーランド伯爵だった。
「部下が、実際に見ていましたから」
部下と言う響きに、身内がリーシャを貶めようとしていた者たちは戦々恐々となっていた。
だが、その顔は表に出ていない。
必死に隠していたのだった。
「陛下に、報告はされたのかな?」
「いえ、まだです。ただ、今後も、このようなことが続けば、報告しなければと思っています」
「いいのですか? 報告しないで?」
「大丈夫です」
平静と、嘘を言うフェルサだった。
きちんとシュトラー王に報告していたのである。
確かに、していないものも含まれているが、ギムオーランド伯爵の妹の件は、しっかりと報告済みだ。
僅かに、面白くないと言う顔を窺わせているコーンフェルド侯爵。
この件を利用し、少しでも新参者を排除したかったのである。
「首が繋がりましたな、ギムオーランド伯」
「……」
口惜しげに、ギムオーランド伯爵が、コーンフェルド侯爵やフェルサのことを睨んでいた。
場の空気を変えるために、僅かに声のトーンを上げたエクセルアムール子爵。
「評議会の立場としては、王太子夫妻に関しては、見守ると言うことでいいですね」
それぞれの顔を窺う。
けれど、異論を述べる者がいない。
「では、溜まっている議案に移りたいと思います」
溜まっていた議案に入っていくのだった。
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