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輪廻転生  作者: 香月薫
第7章
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第186話

「ところで、面白い情報が、入っていないのか?」

 探るような、アレスの双眸。

 微笑んでいるカーラからは、何も、読み取ることができない。


 ここを訪れた目的は、リーシャだけではなかった。

 いろいろなところで、暗躍が起こっているので、喉から手が出るほど、アレスとしては、情報を欲していたのだった。

 少しでも、リーシャに、降りかからないようにだ。


 動くことが、少なかったアレス。

 このところ、頻繁に、動くようになっていた。

 そして、至るところから、情報を収集していたのである。


「ただ、聞くの?」

「いくらだ」

 そっけない、アレスの態度だ。

「可愛げが、ないわよ」

 口を尖らせ、愛らしい姿を覗かせている。


「結構だ」

 じっと、無表情でいるアレスを、捉えていた。


(ホント、可愛げがないわね。普通の男なら、あっさりと、靡くのに……)


「教えてあげない」

 そっぽを向いていく。

「……出すって、言っているだろう」

 険を帯びた、アレスだ。


 だが、王宮にいる人間とは違い、態度が崩れない。

 まるで、睨み合う、虎と龍のようだ。

 距離がある程度あるので、リーシャたちは、気づく様子がなかった。

 のほほんと、お喋りが、続けられていたのである。


「お金の問題では、ないから」

「じゃ、何の問題だ」

「私が、話したいか、そうじゃないかよ」

 ムッとしているアレスの方へ、顔を巡らせた。

 その形相は、余裕な顔を、滲ませている。


「……」

 思い通りに行かない状況に、苛立っていった。

 けれど、改善される訳もなく、冷静に、思考をしていく。

「話す気には、慣れないわよ、それじゃ」

「どうすれば、いい?」


 不敵に笑っているカーラ。

 アレスが、目を細めている。

 さらに、二人の間に、不穏な空気が流れていた。


(相変わらず、人に、物を聞く態度では、ないわね。ま、生まれを考えると、しょうがないのかしら)


 妖艶な笑みを、カーラが滲ませている。

「態度を、少し改めなさい。それでは、息がつけなくなるわよ」

「……知らない」

「そうでしょうね。少しは、相手の気持ちを、考えてあげなさい」

 顰めっ面で、アレスが、黙り込んでいる。


(……考えている。リーシャが、どうすれば、笑うかと。だが、わらかないんだ)


「そうしないと、誰も、ついていかないわよ」

「……別に、構わない」


(……誰も、欲がある人間ばかり、だからな。そんなもの、いらない)


「困るのは、あなただけじゃないのよ。一緒にいるリーシャちゃんも、困ることに、なるのよ。そのことを、よく考えておくことね」

 楽しげに、喋っているリーシャを、アレスの瞳が捉えている。

 ハイテンションな様子が、気にならない訳ではない。

 暗い表情よりも、幾分かは、いいと、抱いていたのだった。


(……どうすれば、前のように、笑うんだ?)


 突然、意識を別なところに向けても、カーラの表情が変わらない。

「話してほしいなら、きちんと、お願いしなさい」

「……」

「できないのかしら?」

 ニッコリと、微笑んでいるカーラだ。


「……頼む」

 ブスッとした表情だ。

「素直じゃないわね」

「……」


「少しは、お友達二号さんを、見習うべきね」

 ラルムのことを言われ、ムッとした顔を滲ませていた。

 そうした表情を見せるアレスに、ふふふと笑っている。

「……何、笑っている」


(まったく、面白くない。何で、ラルムを見習わないといけない)


「別に」

 咎めるようなアレスの眼差し。

 それに対し、カーラは、笑顔のままだ。


(もっと、素直になれば、いいのに)


「少し、面白いものが、見られたから、情報を提供してあげる」

「……」

「結構、他国の人間が、入り込んでいるわよ」

「知っている。それは」


 そうした情報は、アレスの下にも、集まっていたのである。

 だが、そこまでしか、集まっていない。

 早々に、行き詰っていたのだった。


「頻繁に、自国の人間とも、会っているようね」

「……」


 アメスタリア国の人間と、他国の人間が、通じている話は、面白くない。

 表情に、険しさが醸し出していると同時に、野放しになっている状況に、陛下たちは、何をやっているんだと言う思いが、膨らんでいく。

「会っているのは、貴族だけでは、ないようね」


(何? どういうことだ?)


「貴族以外の人間が、会っているのか?」

 カーラに注がれる、射抜くようなアレスの双眸だ。

「えぇ。中流社会の人間や、経済界の人たちね」

「何を、考えているんだ。連中は?」

「そうね。自分たちの利益となる情報を売って、彼らは、何を得ようと、しているのかしら」


「わかるか?」

 問いかけるアレス。

 通じている人間の思考が、全然、理解できなかったのだ。


「そこまでは、わからないわよ」

「そうか」

 残念そうな顔を、アレスが、覗かせている。

「でも、完全に、野放しになっていないわよ」

「どういうことだ?」

 訝しげな双眸を、巡らせていた。

「彼らを、探っている者も、いるみたい」


(陛下たちが、探っているのか。だったら、なぜ、捕まえない?)


「泳がせているのかしら」

「なぜ? 危険過ぎないか」

「もっと、大きな魚を、捕らえるため?」


(……大きな魚か……。あり得るな。……でも、危険過ぎないか? もし、リーシャの情報が、向こうに、渡ってしまえば、他国だって、リーシャを、ほっとくことが、できないはずだ。リーシャを可愛がっている陛下が、危険な真似を、犯すのか? ……一体、陛下たちは、何を考えているんだ……)


 いっこうに、答えに、行き着かない。

 考えれば、考えるほど、迷路に嵌っていく感覚に、襲われていた。


「わかっているだけの、リストを上げる」

 紙に、書かれたものを渡された。

「後は、使っている人たちに、探らせみたら?」

「……ああ」


 返事をしたものの、こうしたことに、頼む人員が少ないことに、頭を悩ませていた。

 王宮の中を、探らせる人間を、飼っているが、外を探らせる人員が、極端に少なかったのだ。

 アレスが、持っている手駒は、非常に、少ない。

 表情には出さないが、心の中で、噛み締めていたのだ。


「どうかした?」

「いや」


読んでいただき、ありがとうございます。


諸事情により、少しの間、投稿をお休みさせて貰います。

年内にアップできるように、体の調子を整えたいと思います。


では。


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