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輪廻転生  作者: 香月薫
第7章
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第180話

 仮宮殿のリーシャの部屋では、ユマたち四人が、顔を合わせていたのである。

 いつの間にか、また、いなくなっていたリーシャのことで、話し合いが行われていたのだった。

 他の侍女たちは、各自に与えられた仕事を、こなしている。


「一体、どこへ?」

 困った顔を、覗かせているユマ。


 仮宮殿の警備に、ユマやバネッサがついていた。

 王宮に、人の出入りが、普段よりあるので、いつも以上に、仮宮殿の警備に、重点を置いていたのである。そのため、ユマとバネッサが中心となり、仮宮殿の周囲を、警戒していたのだった。


「申し訳ありません」

 しゅんと、肩を落としている、クララだ。

 くれぐれも、目を離さないように、ユマから、注意されたばかりだった。


 退屈だろうリーシャを気遣い、クララが、お菓子と飲み物を用意している間に、部屋から、また、姿を消してしまい、右往左往してところへ、ユマやバネッサ、ヘレナが来たのだ。

 ヘレナの表情も、落ち込んでいる。


「とにかく、リーシャ妃殿下の行方を、一刻も早く、捜さないと」

 バネッサの言葉で、二人は、落ち込んでいる暇がないと、ハッとさせられる。

「「はい」」

 元気を取り戻した二人。

 バネッサが、小さく笑っていた。


「また、ヘルヴィン宮殿の方へ、行かれたのかしら?」

 眉を潜めている、ユマだった。

 広い王宮は、捜す場所が、多くあるのだ。


(一体、どこに、いらっしゃるのかしら……)


 ある程度、王宮を網羅しているユマの頭に、いくつか、候補が上がっているが、それでも、捜すのに時間が掛かることに、頭を抱えていた。

 自分たちが、派手に、動き回る訳にはいかない。

 リーシャの醜聞に、やりかねないからだ。


 民間から来たこともあり、そうしたことが、リーシャ自身、理解できなかったのである。

 そんなリーシャを影で、支えていたのだった。

 目立たないように、動き回っているリーシャを、捜す必要性があった。

 時間が短ければ、短いほど、よかったのである。


(とにかく、捜すところを、もっと、限定した方が、良さそうね……。ヘルヴィン宮殿だとすると……)


 先ほど、行方を眩ませた際は、すぐに見つかり、ことなき終えたが、次も、そうなるとは限らない。

 ユマを窺うような、クララの眼差し。

「それは、ないと思います。もう、こちらには、一人では行かないようにと、お願いしましたので」

「……そうね」


(お願いすれば、リーシャ妃殿下は、いかない方でしたね。私は、焦っていたようですね、落ち着かないと)


 ユマが、気持ちを、瞬時に切り替える。

「リーシャ妃殿下は、とても、好奇心が、溢れているお方だから、また、別な宮殿の方を、散策しておられる可能性が、高いわね」

 バネッサの意見に、ユマも、賛同している。


(あり得るわね……。どうして、あんなに好奇心が、旺盛なのかしら……)


 これまで、リーシャの好奇心により、何度も、迷子になった経緯があったからだ。

 本人の自覚は、薄かったが、ユマたちは、密かに、迷子になっていると、巡らせていたのだった。


(早く、捜さないと……)


「警備のモニターを使うには、少し危険ね……」

 ユマの呟きに、バネッサたちも、同意見だった。

 軍の会議があることにより、それに、付き添っている者たちも、王宮に、大勢入り込んでいたのである。その全員が、中立派や、シュトラー王派とは限らなかった。


 反シュトラー王派も、入り込んでいる可能性もあったのだ。

 だから、注意することに、余念がない。

 自分たちの動きにより、アレスやリーシャの情報を、敵の者たちに、教えることにもなり兼ねないからからだった。

 細く、長い息を、吐いているユマだ。


(私が、ついていた方が、よかったかしら)


 頭の痛い出来事に、苦慮している。

 リーシャの筆頭侍女と言う立場もあったユマは、仮宮殿の警備にも、目を光らせる仕事も同時に、請け負っていたのだった。

 ユマの仕事は、多岐に渡っていたのである。


(困った自体ね……)


 広大な王宮の敷地を、自分たちの手だけで、捜すには、とても無理だったからだ。

 不意に、ウィリアムの顔が、浮かび上がっていた。


 リーシャの件は、まだ、ウィリアムに伝えていない。

 リーシャ同様に、アレスも、行方を眩ませており、ウィリアムたちは、密かに捜していたことを、ユマ自身、把握していたからでもある。

 ユマやバネッサたちは、仮宮殿を警備しつつも、アレスの姿も、捜すことも担っていたのだ。


(二人して……)


 勝手に、姿を晦ます二人に、ウィリアムとユマは、手を焼いていた。

「ここで、論じているよりも、とにかく、近くを、捜してみましょう」

「バネッサの言う通りね」

「私とクララは、別な宮殿を、捜してみます」

「私は、念のために、ヘルヴィン宮殿の方を、探ってみるわ」


「それでは……」

 ユマが、懸念を示す。

 自分たちのしていることが、向こうに知られないかとだ。


 ニコッと、微笑むバネッサ。

「向こうを、利用しましょう」

「どういうこと?」

 微かに、ユマが、眉間にしわを寄せている。


「向こうは、情報を探ろうと、動き回っているはず。そして、そのことは、向こう側の人間も、気づいているし、それでもなお、動き回っている。だったら、それを探りに来た、侍女として、動き回るのよ」

「……」

 渋い顔のユマだ。


(そんなことが、可能かしら……)


「大丈夫。その辺は、抜かりがないように、するから」

 自信を覗かせている、バネッサだ。


(一緒に、姿を晦ますなんて……。最近、アレス王太子殿下は、変わられたような気がするし、もしかすると、リーシャ妃殿下と、一緒にいらっしゃる可能性も、あるかもしれないわね。でも、あの、アレス王太子殿下が、変わられるなんて……)


 誰にも、気づかれないように、バネッサが、口角を上げている。

「……そうね。向こうの情報も、入れておきたいし……」

「じゃ、決まりね」


「私は、こちらの警備しつつ、リーシャ妃殿下の行方を、捜しましょう」

「お願いしますね、ユマさん」

「では、動き始めましょう」

 ユマの合図と共に、四人が、動き出したのだった。


読んでいただき、ありがとうございます。

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