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輪廻転生  作者: 香月薫
第6章
151/422

第142話

新しい章に入ります。

少し、サブタイトルを考えるのが、大変になってきたので、

なしにさせてください。


 ヨーロッパにある、アメスタリア国の首都キーデア。

 王族が住む宮殿や、執務を行う宮殿が多く建ち並ぶ、セルリアン王宮がある。


 セルリアン王宮にある、宮殿の一室。

 真剣な眼差しを巡らせ、物々しい国王シュトラー王がいたのだ。

 その前に、軍のエリート部隊と称される、《コンドルの翼》のメンバーが召集されている。


 シュトラー王は、齢六十を超えているが、若き精鋭が集まる顔触れに、負けないほど、全身から、精気が溢れていたのだった。

 上司である総司令官を通さず、シュトラー王の執務室に呼び寄せられていた。


 誰もが、かちこちに、固まっている。

 室内には、秘書官も下がらせていたのだ。

 シュトラー王と、《コンドルの翼》のメンバーしか、揃っていない。

 重苦しい空気が、部屋一面に、漂っている。


 緊張の面持ちの男たち。

 ゴクリと、つばを飲み込む。


 そんな雰囲気にもかかわらず、シュトラー王は気にしない。

 ただ、呼んだメンバーを、見据えている。

「準備は?」

「大丈夫です。滞りなく、進んでおります」


 直属の上司である総司令官に、内密で、進めている出来事があった。

 その進みぐらいを、確認するため、極秘に、呼び出したのだ。

 呼ばれたと同時に、何を求めているのか悟り、彼らは厳しい形相で、姿を現していたのだった。


 中には、冷たい汗を、一筋流している者もいる。

 それとは対照的に、シュトラー王は、万事、ことが進んでいると、僅かに、不敵な笑みを滲ませていた。


 重大な任務を、請け負っているメンバー。

 とてつもないプレッシャーに、誰もが、押し潰されそうだ。

 彼らに、息つく暇さえ、与えない。


 状況を、より深く確かめる。

「一切の遅れは、ないな」

「ありません」

「気づかれることは?」

「まったく、ございません」

「アレスにもか」

「はい」


 満足いく答えに、ニンマリと、顔を綻ばせていた。

 このところ、いやなことが続き、腐っていたのだった。

 その最中に、ある事柄を聞き、あることを実行するため、総司令官たちに知られないように、重大な任務を、《コンドルの翼》に与えたのである。


「決して、秘密は、漏れていないな」

 有無を言わせない顔。

 更なる、圧が降り注がれた。

「はい」

 強く、頷いた。


 与えられた任務に、漏れが、許されない。

 《コンドルの翼》のメンツも、掛かっていたのである。

 だから、誰しも、抜かりがないように、細心の注意を払いつつ、着々と、命じられた任務を遂行していたのだった。


 王政君主制をとっている、アメスタリア国では、国王が、政治に携わっていたのである。

 きちんと、議会も、存在していたが、国王が、最終的な承認を行っていた。

 議会で、決定したものでも、国王の承認がなければ、認められない。

 それほど、国王の力が、勝っていたのである。


 誰にも、知られぬなと言う言質を、思い返す《コンドルの翼》のメンバー。

 ズキリとする痛みを、生じていたのだ。

 直属の上司に、内密に、進めるしかないことが、《コンドルの翼》のメンバーは、憂鬱だった。

 事実を知られてしまったら、後の仕打ちを巡らせるだけで、背筋が震えるほどだ。


 けれど、シュトラー王の厳命で、どうすることも、できない。

 国王の命令が、絶対だった。


 シュトラー王と、上司との板ばさみ状態に陥っていた。

《コンドルの翼》は、難しい立場に、立たされていたのである。

 それでも、粛々と命令に従って、彼らは動いていたのだ。


 そんな苦労も知らず、平然と、上司の話を、持ち出す。

「ソーマは、視察だな」

「はい」

「フェルサは?」

「副司令官殿は、部屋で、仕事をなされています」


 ふと、眉を潜めているソーマの顔が、浮かんでいた。

 総司令官ソーマは、表の仕事で、地方に配置されている、軍隊の視察に出かけ、王宮を離れていたのである。

 総司令官と副司令官が、同時に、王宮から離れることがない。

 どちらかが、残っていたのだ。


 数少ないが、どちらも、不在の時もある。

 めったに、なることはないが。


 さらに、シュトラー王の悦が、深くなっていく。

 ソーマの不在を、利用したのだった。

 そして、王宮に、残っているフェルサが、仕事に追われ、部屋に、缶詰状態になっている状況を造り上げたのだった。

 勿論、そのような事態に陥ったのは、国王がすべき仕事を、放棄したからで、その肩代わりを、実直なフェルサが担っていたのだ。


 安堵の色が浮かぶ。

 悪魔のような微笑み。

 誰しも、困惑し、たじろぐ。

 そうなるように、仕組んだと、簡単に、推測できたのだった。


「これでよい」

 《コンドルの翼》のメンバーは、黙り込むしかない。


(ふふふ。これで、いい)


 二人に知られれば、止められると、シュトラー王はわかっていた。

 昔の知己であり、信頼できる重臣でもある二人。

 知られないように、していたのである。

 それに加え、煙たい人間にも、情報が漏洩されないように、注意しなければならない。

 どんな嫌がらせ行動を、起こされるのか、わからなかったのだ。


 机の上で、手を組み、威厳ある、王らしい顔を漂わす。

 その脳裏には、親友の孫で、自分の孫に嫁がせた、リーシャの笑顔を掠めていた。


「慎重に動け」

「はい」

 背筋を正して、返事した。


 ひと時の休息に、息を漏らす。

 それぞれに、気持ちを緩めた途端、執務室のドアが、突然に、開け放たれた。

 立っていたのは、神妙な顔を覗かせたソーマだった。

 そして、内密する相手でもあった。


読んでいただき、ありがとうございます。

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