第124話 誕生日会2
午後二時から、誕生日パーティーは、仮宮殿の庭で盛大に始まった。
主役であるアレスと、妻のリーシャは、まだ、会場に訪れていない。
だが、会場となっている庭は、多くの人たちで溢れている。
人々が、集まっている庭は、隅々まで、入念に手入れされていたのだ。
多くの招待客が集まり、あちらこちらから、盛り上がっている声が、漏れ聞こえていたのである。
会場に、友達のゼインたちも、招待されており、学校を早めに切り上げ、出席していた。
同様にラルムも、学校を早退し、誕生日パーティーに、顔を出している。
アレスの元パートナーだった、ステラの顔も、見えていたのだ。
「遅かったな、ラルム」
遅く、姿を現したラルム。
ニコッと、笑みを携えていた。
会話が弾んでいる、ゼインたちがいるテーブルに、先ず足を向けていたのである。
行われているパーティーは、立食で、テーブルに、彩り豊かな軽食が、並べられていた。
どれも、一流の料理人や、パティシエ職人が、作ったものばかりだ。
「先に、帰ったのに、来るのが遅いな」
何気なく、ティオが口をついた。
その手に、白ワインが入ったグラスが、握られている。
「ちょっと、用事ができて……」
苦笑しているラルム。
自分たちよりも、先に学校を出たラルムの姿を、三人は会場で捜していたが、広い会場で見つからずにいたのだ。
正装に身を包んだラルムは、愛嬌のある顔を覗かせている。
ゼインたちも、正装に着替え、厳しいチェックを済ませてから、会場となった庭へ、案内され、仲いい者同士が集まり、談笑し、アレスやリーシャの到着を、待ち構えていたのだった。
「そう言えば、まだ、体力造りをしているのか?」
特進科の所属となり、未だに、特別メニューを、続けているのかと、ゼインが尋ねた。
適性検査や、上級生が行う模擬戦の時でしか、二人が顔を出さないからだ。
「うん。けど、少しずつだけど、操作の方もしている」
「随分と、悠長な訓練だな」
バカにしたようなティオだ。
だいぶ、白ワインを、口にしていたのである。
「人のことは、言えないだろう、ティオ」
成績が悪くても、のん気な友達を、フランクが窘めた。
どんなに、成績が落ち込んでも、全然、落ち込まないのだった。
そんな図太い神経に、付き合いがある二人でも、呆れていた。
「何がだ? 俺、何かしたか?」
「一般教養の試験、ギリギリだっただろう?」
「ああ。前日とか、遊び過ぎた」
この前、行われた一般教養の試験の時を、振り返っていた。
ケロッとしているティオ。
その表情に、一切に悔しさが滲んでいない。
「どうせ、卒業はできるだろう。できなければ、父さんに頼むだけさ」
「ま、そういうことになるかな」
卒業できないぐらいまで、成績が下がっても、大した問題にならないと踏んでいた。
父親に頼み込めば、何とかしてくれると、頭を掠めていたのだ。
だから、成績が落ちようが、気にも留めていない。
「みっともないぞ」
目を細め、ゼインが二人を睨む。
貴族としての体面を、気にかけていたのだ。
真面目に、勉学に励まなくても、それ相応の成績を、取っていたのである。
「頑張らないと」
苦笑交じりに、ラルムが声援を送った。
「ラルムは、いいよな」
促されるように、顔を巡らす。
「学校の成績も、トップの方で、パイロットとしての素質もある。勉強しなくても、悠々自適で。いいよな……」
勝手に、いい方に想像を膨らませ、ティオが慕っている。
なんて言っていいのか、わからないラルムだった。
困り果てて、小さく笑っているしない。
何不自由なく、暮らしているのに、本人たちは、それすら気づいてないのだ。
平和なんだと、抱くラルムであった。
「真面目に、勉強しているから、成績がいいんだろう。それに引き換え、ティオは、遊び過ぎだ。だから、成績が下降する。中学よりも、成績が落ちているだろう」
憤然とした顔でゼインが、親身にならない、至って道楽なティオを咎めた。
一緒にされては、堪らないと感じたからだ。
「そう言えば、あの頃よりも、落ちているな」
「人のことは、言えないが、ティオの一般教養の落ち方は、ないな」
逡巡していたフランクも、当時を思い返している。
苦言を呈するゼインに、賛同するのであった。
「ところで、能天気な妃殿下の操作は、どうなんだ?」
検査で、生徒たちを驚かせた能力の高さを、ゼインが気にかけていた。
だから、身近にいるラルムに、探りを入れてきたのだった。
やる気がなくとも、素人同然の女の子に、負けるのは矜持に響いていた。
幼い頃から、デステニーバトルの訓練を、受けていた身としては、あっさり負けを認める訳にはいかなったのである。
だから、このところリーシャを、気にかけていたのだ。
「一生懸命に、頑張っているよ」
「一生懸命ね……」
考えるところがあるゼイン。
その思考は、模擬戦で、観戦していた際に、はしゃいでいた姿が掠めていた。
質問してくる内容は、素人よりも、酷いものだった。
そんなリーシャに、能力の高さで、意図も簡単に、通り越された。
悔しさで、感情を爆発させたかったが、それを矜持が許さない。
「みんなと、やるのは、まだまだだよ」
そんな思惑を抱いているとは知らず、ラルムが話を続けた。
「面白くないな。からかえないから」
単純に思ったことを、口にするティオ。
「ま、どっちでもいいが。いても、いなくても、同じだから」
デステニーバトルに、興味のないフランクが、首を竦めている。
四人が、話していると、拍手が起こり、待っていた人が、姿を現したのだった。
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