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輪廻転生  作者: 香月薫
第5章
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第124話  誕生日会2

 午後二時から、誕生日パーティーは、仮宮殿の庭で盛大に始まった。

 主役であるアレスと、妻のリーシャは、まだ、会場に訪れていない。

 だが、会場となっている庭は、多くの人たちで溢れている。

 人々が、集まっている庭は、隅々まで、入念に手入れされていたのだ。

 多くの招待客が集まり、あちらこちらから、盛り上がっている声が、漏れ聞こえていたのである。




 会場に、友達のゼインたちも、招待されており、学校を早めに切り上げ、出席していた。

 同様にラルムも、学校を早退し、誕生日パーティーに、顔を出している。

 アレスの元パートナーだった、ステラの顔も、見えていたのだ。


「遅かったな、ラルム」

 遅く、姿を現したラルム。

 ニコッと、笑みを携えていた。

 会話が弾んでいる、ゼインたちがいるテーブルに、先ず足を向けていたのである。


 行われているパーティーは、立食で、テーブルに、彩り豊かな軽食が、並べられていた。

 どれも、一流の料理人や、パティシエ職人が、作ったものばかりだ。


「先に、帰ったのに、来るのが遅いな」

 何気なく、ティオが口をついた。

 その手に、白ワインが入ったグラスが、握られている。

「ちょっと、用事ができて……」

 苦笑しているラルム。


 自分たちよりも、先に学校を出たラルムの姿を、三人は会場で捜していたが、広い会場で見つからずにいたのだ。

 正装に身を包んだラルムは、愛嬌のある顔を覗かせている。

 ゼインたちも、正装に着替え、厳しいチェックを済ませてから、会場となった庭へ、案内され、仲いい者同士が集まり、談笑し、アレスやリーシャの到着を、待ち構えていたのだった。


「そう言えば、まだ、体力造りをしているのか?」

 特進科の所属となり、未だに、特別メニューを、続けているのかと、ゼインが尋ねた。

 適性検査や、上級生が行う模擬戦の時でしか、二人が顔を出さないからだ。


「うん。けど、少しずつだけど、操作の方もしている」

「随分と、悠長な訓練だな」

 バカにしたようなティオだ。

 だいぶ、白ワインを、口にしていたのである。


「人のことは、言えないだろう、ティオ」

 成績が悪くても、のん気な友達を、フランクが窘めた。

 どんなに、成績が落ち込んでも、全然、落ち込まないのだった。

 そんな図太い神経に、付き合いがある二人でも、呆れていた。


「何がだ? 俺、何かしたか?」

「一般教養の試験、ギリギリだっただろう?」

「ああ。前日とか、遊び過ぎた」

 この前、行われた一般教養の試験の時を、振り返っていた。

 ケロッとしているティオ。

 その表情に、一切に悔しさが滲んでいない。


「どうせ、卒業はできるだろう。できなければ、父さんに頼むだけさ」

「ま、そういうことになるかな」

 卒業できないぐらいまで、成績が下がっても、大した問題にならないと踏んでいた。

 父親に頼み込めば、何とかしてくれると、頭を掠めていたのだ。

 だから、成績が落ちようが、気にも留めていない。

「みっともないぞ」


 目を細め、ゼインが二人を睨む。

 貴族としての体面を、気にかけていたのだ。

 真面目に、勉学に励まなくても、それ相応の成績を、取っていたのである。


「頑張らないと」

 苦笑交じりに、ラルムが声援を送った。

「ラルムは、いいよな」

 促されるように、顔を巡らす。

「学校の成績も、トップの方で、パイロットとしての素質もある。勉強しなくても、悠々自適で。いいよな……」


 勝手に、いい方に想像を膨らませ、ティオが慕っている。

 なんて言っていいのか、わからないラルムだった。

 困り果てて、小さく笑っているしない。


 何不自由なく、暮らしているのに、本人たちは、それすら気づいてないのだ。

 平和なんだと、抱くラルムであった。


「真面目に、勉強しているから、成績がいいんだろう。それに引き換え、ティオは、遊び過ぎだ。だから、成績が下降する。中学よりも、成績が落ちているだろう」

 憤然とした顔でゼインが、親身にならない、至って道楽なティオを咎めた。

 一緒にされては、堪らないと感じたからだ。

「そう言えば、あの頃よりも、落ちているな」


「人のことは、言えないが、ティオの一般教養の落ち方は、ないな」

 逡巡していたフランクも、当時を思い返している。

 苦言を呈するゼインに、賛同するのであった。


「ところで、能天気な妃殿下の操作は、どうなんだ?」

 検査で、生徒たちを驚かせた能力の高さを、ゼインが気にかけていた。

 だから、身近にいるラルムに、探りを入れてきたのだった。


 やる気がなくとも、素人同然の女の子に、負けるのは矜持に響いていた。

 幼い頃から、デステニーバトルの訓練を、受けていた身としては、あっさり負けを認める訳にはいかなったのである。

 だから、このところリーシャを、気にかけていたのだ。


「一生懸命に、頑張っているよ」

「一生懸命ね……」

 考えるところがあるゼイン。

 その思考は、模擬戦で、観戦していた際に、はしゃいでいた姿が掠めていた。


 質問してくる内容は、素人よりも、酷いものだった。

 そんなリーシャに、能力の高さで、意図も簡単に、通り越された。

 悔しさで、感情を爆発させたかったが、それを矜持が許さない。


「みんなと、やるのは、まだまだだよ」

 そんな思惑を抱いているとは知らず、ラルムが話を続けた。

「面白くないな。からかえないから」

 単純に思ったことを、口にするティオ。


「ま、どっちでもいいが。いても、いなくても、同じだから」

 デステニーバトルに、興味のないフランクが、首を竦めている。

 四人が、話していると、拍手が起こり、待っていた人が、姿を現したのだった。


読んでいただき、ありがとうございます。

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