9 クロモの独り言
我が名は魔王ブラックモア。かつては悪魔を束ねる首領であった。まぁ、それも今では15年も前の話になるが……
15年前に我は5人の魔法少女達に滅ぼされた。そして15年経って復活したはいいものの、かつての魔王としての力の大部分は失われ、小さな悪魔に成り果ててしまったのだ。
かつては世界中を恐怖に陥れたこの我が、日本という小さな島国のたった5人の魔法少女にやられるとは、情けない話だ。今では我の話題など風化してしまったかのように、何事もなく世界は動いている。
……と、まーこれは過去の話。
今のボクは神獣のクロモ。小さな黒い体にトレードマークのコウモリの羽と白いツノ、そしてくりくりしたおめめとやんちゃな八重歯がかわいいマスコットキャラのクロモとして生まれ変わったのさ!
ボクの役目は、神獣として魔法少女を導き、悪魔を倒すことだよ! そう、ボクは正義の味方なんだ! 悪魔を倒してその魔力を吸収し、元の魔王に戻ろうとしてるなんてのは、皆にはナイショだけどね!
……ま、戦う力がろくに無いんじゃ仕方ないよね。悪魔を倒すのに人間の手を借りるのは神獣どもと同じだ。問題は、悪魔のボクがどうやって魔法少女を作りだすのかって点だったんだけど……実はボク、魔王時代に魔法少女から変身アイテムを奪って色々調べたことがあるんだよね。変身アイテムの原理はそんなに難しくもなかったから、4時間でそれっぽいものができたんだよ!いやーボクって天才すぎるわー。
ちなみにその変身アイテムは『マジカルチャーム』っていうんだ。『チャーム』ってのは宝石で出来たワンポイントのアクセサリーみたいなもので、ボクが作ったチャームは漆黒の宝石を銀細工でオシャレにした自信作だよ!4時間かかったのは、主に装飾を頑張ったから。
そんなこんなで、栄えあるこのボクの魔法少女に選ばれたのが、『佐藤良子』ってゆー普通の名前のモブっぽい眼鏡女子だよ。
どうしてこの子を選んだかって? うん。ぶっちゃけると誰に魔法少女としての才能があるかなんて、よくわかんなかったからだよ! 駄目そうだったら乗り換えるつもりでいたし、誰でもよかったのかも。まぁ、しいて言えば、なんか年頃の少女とは思えないほど、目が腐っているところが気にいったのかもね。
ほらボク、『愛』だの『夢』だの『希望』だの言う魔法少女は吐くほど嫌いだしね。そういうこと言わなさそうな子選んだの。
で、この良子。魔法少女として実際どうなのかというと……うん、割と駄目な気がする。
何が駄目かっていうと、変身したにも関わらず、悪魔の気配も感知出来ないし、身体能力もアップしない。おまけに魔法すら使えないというダメダメっぷりだ。つまり変身しても普通の人間と大して変わらないんだよね。変身する意味あるのかって感じ。魔法少女としての才能無いんじゃないの?
でもそこはボクのマジカルチャームが魔法武器の白いステッキを生み出して、そのステッキが強かったから何とかなったのさ。さすがボクの作ったチャームだね!
でもなんか妙な感じだ。いくら武器が強いとはいえ、普通の身体能力の良子が、魔法も使わずにあんなにあっさり悪魔の装甲を破ることができるなんておかしいよね。もしかして自覚なしに魔法が発動してた? 何か秘密がありそうな気がする……
あ、あと悪魔を退治してるところに三角の魔女帽子の少女がいきなり登場して、なんか助けてくれたよ。あの子が使った魔法、たぶん空間魔法だと思うんだけど、あんな強力な魔法使う魔法少女とか、見たことないや。すぐにいなくなっちゃったんだけど、結局よくわからなかったな。今後もし敵に回るようなら、注意しておかないとね。
さて、独り言はこれでおしまいっと!
良子がなんか聞きたいことあるみたいだから、あることないこと言って、ボクの正体や目的についてははぐらかさなきゃね!