82 クロモが遅れて現れた
私の身長より大きい大剣をノアに突き刺して、吞気に喋るクロモ。
「いやー、これ作ってたら遅くなっちゃった。すごいでしょ、この剣。こんなの作れるのってボクしかいないよー」
うん、何してんのお前。突然の武器職人。暇なの? 暇をもてあましてクリエイターきどり? その剣を見て、ひとり目をキラキラ輝かしてる銀華。
「かっこいいですわ……」
「そうでしょそうでしょ。名付けて聖剣よしこカリバー!」
「聖剣よしこカリバー!?」
名前は壊滅的にセンスない。というか人の名前勝手に使うな。
「魔法少女だしそろそろ新武器が必要だと思ってね。さあ、手に取るんだ! これがよしこの新たなる力だよ!」
「いらん」
だってめちゃくちゃ重そうだしサイズ無駄にでかいし、無用の長物すぎるでしょ。私が即答で拒否するとクロモがしょぼーんとした。そう言い合ってるうちに、むつきがポンと肩を叩いた。
「周りのは全部片付けた。あとはあいつだけ」
そう言ってノアに向き直る。いつの間にか周りにいたサメ頭が全部いなくなってる。ついでにむつきに巻き付いてた植物の根も。相変わらず仕事はやすぎ! 雑魚相手なら無双できるんだよねむつき
ノアは剣が刺さったにもかかわらず、声のトーンを変えずに落ち着いた様子で話す。
「……やれやれ、潮時ですかね。ここは一旦退きましょう」
「逃がすと思ってますの!」
「銀華、落ち着いて」
「止めないでくださる!?」
私は血気にはやる銀華を制止する。全く、この子はすごく感情的だな。
「銀華、私たちの優先すべきことはなに?」
「うっ……それは……」
「キッカ姉ちゃんを助けることでしょ? こんなのに関わってる暇なんてない。相手が退いてくれるっていうなら願ったりじゃない」
私は諭すようにそう言って銀華を落ち着かせる。ここでこいつを倒すよりも優先すべきことがある。でもそれだけじゃない。あのノアという男は背中から大剣が刺さってるのに平然としてるのだ。血がさっきからだらだら流れてるにも関わらず、だ。それに不気味さを感じている。相手をしようにも、こいつはまだ底を見せてない。
「冷静な判断です。それではまた会いましょう。あなたたちが生きていれば、ですけどね」
にこりと笑ってノアの姿が霧のようになって消えていく。ガランと音を立てて、後に残ったのはクロモが刺した大剣だけだった。
「消えた……?」
「あーもー、勿体ないなぁ。せっかく倒すチャンスだったのに」
「……クロモ、今の本当に倒すチャンスだったと思う?」
「んにゃ、全然」
私がそう聞くと、クロモはあっさり意見を変えた。
「あれが何考えてたのか分かんないけど、見逃してもらったのはこっちかもねー」
「クロモから見てそんなにヤバい相手だった?」
「魔力的にはむつきのちょい上くらいだけど、フェイクの可能性あるしなぁ。わかんないね。ああ、それよりさー」
「なに?」
「ホントにキッカのところにいくの?」
クロモは私に問いかける。
「言っとくけど、キッカを助けようと思ってるなら、はっきり言って無理だよ。キミたち程度じゃ確実に全滅する。つまり死ぬってことだよ。よしこ、ほんとに分かってる?」
死ぬ……か。ホントはそんな覚悟できてるかも怪しい。でも、キッカ姉ちゃんが必死に戦ってるあの姿が目に焼き付いて離れない。あの人は、絶対死なせたくない。
「いくわ。何があろうともね」
私はまっすぐクロモを見て答える。クロモの目は何考えてるかよく分かんなかったけど。
「もちろんわたくしも行きますわ!」
「良子に最期までついていく」
「ふっ、この中の年長者はうちっすよ。頼れるセラちゃんに任せるっす!」
銀華、むつき、瀬良ちゃんが各々声をあげる。それを見て、クロモはいつも通りの軽い口調で答える。
「あっそう。ボクは行かない。ここでさよならだね、良子」
「そうね。死んだらまた次の魔法少女を探してちょうだい」
「キミってホント潔いね」
やれやれとため息をつき、クロモは背を向ける。ほんと、何考えてるのかよく分からないヤツだったけど、まぁ……こいつには一応感謝しておくべきかもしれない。
「ありがとう、クロモ」
「……ふん」
珍しく皮肉を言われなかった。そっけない返事が返ってくる。
私はむつきに捕まり、むつきは精神を集中して空間移動の準備をした。
「あ、良子。決戦の場にこの最強武器である聖剣よしこカリバーを持っていかないの?」
「え、うーん……」
さっきはいらんと言ったけど……やっぱり一応持っていくべきかもしれない。強そうだし。私は地面に刺さってるその無駄に荘厳なでかい剣を持ち上げようとした。……って重っ
「やっぱいらん」
「えー、せっかく作ったのに」
あんなでかすぎる武器、なんで用意した。私は変身しても腕力は変わらないから持てんぞ。
「あ、そーだむつき。最期に一つだけ」
クロモが珍しくむつきに声をかけた。むつきが怪訝な顔をして振り返る
「……なに?」
「あーいや、やっぱなんでもないや」
「……そう」
何なんだお前は。声をかけたと思ったらなんでもないって。何がしたいんだお前。クロモののっぺりとした表情からは何も感じ取れなかった。むつきはぷいっとそっぽを向いた。
「良子、行こう」
「うん、行くわ」
そして私たちはむつきに捕まり、空間移動をした。後に残ったのは、クロモだけだった。
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魔法少女たちを見送った後、クロモは独りぽつんと残された。
「なんか唐突に思いあたっちゃった。なーんでいままで気付かなかったんだろうね、むつきの正体」
聖剣よしこカリバーを回収しながら、独り言をつぶやくクロモ。
「そもそも、あいつの魔力がボクの魔力と似てる気はしてたんだよなぁ。未来から来た……か。何があったのか知らないけど、かなーり元の姿から変質してしまってるよね」
クロモは思案する。その推測自体は唐突に思い浮かんだものだ。でも、クロモの中では既に推測は確信に変わっていた。
「あいつ……ボクの娘だ」
◆聖剣よしこカリバー
2mくらいの無駄にでかい大剣。クロモの持ってる全魔力を3割くらい無駄遣いして出来た力作。たぶん重さ100kgくらい? かっこいい見た目をしている。
マギアレコードが配信開始されましたね! まどマギのゲームしたいと思ってたんです! え? 古戦場から逃げるな? 逃げたい……




