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77 黒翼との戦い⑥

間が空いてしまってすみません。けもフレが終わって半年経ちますが、私は元気です。

 魔力が一時的に枯渇し、倒れたむつきは見ていることしかできなかった。強大な力を持つ上級悪魔と、変身を越える神獣合身をした魔法少女。いまその戦いはあまりにも次元が違いすぎた。


 雷の魔力が満ちる空間の中、目で追えない速度で飛び回る菊花。元々強かった彼女だが、今は敵の魔力による阻害を受けずに戦っている。菊花が槍1本を消費して使った属性遷移シフト・エレメントのおかげか。あれは自属性に有利な場を作る技だ。

 しかし、菊花が有利な場においてすら、そのスピードについていき対応しているゼド。先ほどまでは本気を全く出していなかったのだろうか?


「次元が違いすぎる……どうして? キッカはあの状態でも、私より少ない魔力量で戦っているのに……」


 むつきの観測では良子の魔力を1とすると、神獣合神した菊花は2000といったところだ。元々より5倍近く魔力が増加しているのは驚異的な伸びだが、それでもむつきの半分くらいの魔力量しかない。だが、菊花はむつきよりパワー、スピードなど身体能力全てで大幅に上回り、攻撃力においてもはるかに強い。菊花のあの強さは一体どこから来ているのだろう。魔法少女として強くなる為には、強い魔法、強い魔力のほかに何か大切な要素があるのではないかと疑念を抱き始めていた。

 むつきの魔法は、いままで無敵だと思っていた空間魔法は、ゼドに対して有効ではない。


「私では役に立たない……? でも、このままでは……」


 恐らく、拮抗状態は長く持たない。スピードでは菊花の方が勝っているが、一撃でもまともに喰らえば菊花は致命傷を負うだろう。

 菊花は今日死ぬ。それは未来を見てきたむつきにとって確定した事項だった。死なない為には、前回には無かった要因が必要だ。

 身体に魔力が巡るまであと少しかかる。だが、あの戦いに果たして介入できるのだろうか。時空間魔法(クロノス・マギア)という破格の魔法を持ち、魔力量も高いはずのむつきは、肝心なときに役に立たない自分に焦燥感を感じていた。




 ズドオオオン!

 目の前で落雷が落ちるような空気を震わせる凄まじい轟音が鳴り響く。菊花の放った最後の一槍。それはゼドに違わず命中した。


「はぁっ……はぁっ……はぁっ……」


 全速力で走ったあとのように呼吸が激しく乱れている。筋肉と骨がギシギシと悲鳴を上げている。まるで自分の限界以上の重量のバーベルを十数回持ち上げた後のようだ。かろうじて立っているが、腕はだらんと力なく垂れていた。


 完全に決まったーーそう思っていた。

 いや、事実決まっていたであろう。以前のゼドと同じならば。


 菊花が最後の槍を投擲し、それは違わず命中した。

 にも関わらず嫌な予感が消えない。それが菊花が未だに神獣合身を解除しない理由だった。


「はぁっ……はぁ……雷電、今の私の攻撃……昔より威力高かったと思うよね……?」

(……我輩から見てもそう思えるが……)

「なら……これは悪夢ね」


 菊花の全エネルギーを込めた槍を受け、爆発四散したはずのゼド。だが……


 突如爆風が消し飛び、黒い魔力が吹きすさぶ。そしてその中心から現れた巨大な黒い影。


「今のは効いたぞ」


 あたりにゼドの声が響く。黒い魔力の渦とともに姿を現したゼドは、更に異形の変貌を遂げていた。黒い翼は4枚になり、身体は硬質そうな黒い鎧で覆われ、一層巨大な身体になっていた。


「何? その姿……何?」

「これがおれの切り札、“黒翼体こくよくたい”だ……この姿を見せることになるとはな……」

「……その姿に変身したら強くなるってこと?」

「比べものにならん」


 そう言って、ゼドは黒い鎧で覆われた拳で何も無い空間を突いた。

 ごうっ!

 まともに喰らえば身体に穴が開くほどの圧力が、菊花のすぐそばをかすめていった。菊花は立ったまま動けない。


「あはは……こっちは満身創痍。向こうはまだまだ元気いっぱいみたい」

「万事休す、というやつだな。お前は強かったが、最強はこの俺だということだ」

「見逃してくれる……とかない?」


 菊花は力なく笑う。その姿を見てゼドは凶悪な顔で笑った。


「ないな」


 そういい、ゼドは棒立ちしている菊花に対して拳を振り下ろした。もう体は動かない。満身創痍ながらもかろうじて変身を維持しているが、もう逆転が無いことを悟った体が死を受け入れていた。


(ごめんなさい良子ちゃん……頑張ったけど、結局運命は変わらなかったみたい……)


 スローモーションのように振り下ろされる巨大な死の鉄槌。菊花はそれを静かに待っていた。


 そのとき、時間が停まった。


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