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72 黒翼との戦い②

 菊花の槍とゼドの拳が正面からぶつかった結果、菊花の槍の穂先が折れて地面を転がった。


(やっぱりこうなったか……でも!)


 腕が千切れそうな衝撃にも関わらず、菊花は穂先が無くなった槍を手放さず、槍を反転させて石突の部分で喉を狙う。巨体を誇るゼドとはいえ、素手と槍。リーチでは槍の方が勝っており、ゼドの拳が菊花に到達する前に、槍が喉を突こうとしていた。


 ガィンッ! 槍が硬い何かに阻まれる。ゼドは咄嗟に体を横にずらし、その槍を装甲の厚い肩で受けた。ゼドはニヤリと笑い、手刀で槍をはたき落とすと、拳を振りかぶり殴りつけてくる。

 だが、その拳が到達する前に、ゼドの体を雷撃が襲った。


「キッカ!」


 雷電が鋭く呼びかける。雷電は咄嗟に魔法を使い、菊花の真後ろから雷撃を放った。菊花を巻き込む形になったが、元より雷属性の魔法少女である菊花には、高い雷耐性を持っているので無傷であった。


(助かったけど、びっくりするのよねこれ……)


 そう思いながら距離を取って体勢を立て直す菊花。一応、ゼドからの追撃は止まった。


「味方を盾にして死角から攻撃か。少し痺れたぞ。だが……」


 雷撃をまともに受けても、平然としているゼド。


「十二神将ですらない、お前ごとき下級の神獣の攻撃ではな……」

「ちっ、忌々しいことだ」


 舌打ちをして悪態をつく雷電。彼は神獣単体としてはそこまで強いわけではない。あくまで菊花のサポート役であり、本来なら戦闘は魔法少女に任せていて、戦うことはない。また"十二神将"と呼ばれる、日本でも最強クラスの12体の神獣と比較すると、かなり見劣りするのは事実だった。


 そこでゼドは違和感に気付く。いつの間にか、もう一人の魔法少女が消えている。


(動いた気配を感じなかった……瞬間移動か?)


 ゼドが後ろを振り向くと、背後で魔女帽子の魔法少女が包丁を真横に振るい、空間ごと切り裂く不可視の斬撃を繰り出した。

 その斬撃はゼドの体を真っ二つに切り裂くはずだった。


 ブシュゥッ!


 攻撃の気配を感じたゼドは咄嗟に腕で見えない斬撃をガードしていた。腕から鮮血の如く、黒い体液が飛び散る。だが、それだけだった。まともに攻撃を受けたはずのゼドの腕は真っ二つにならず、数センチほどの傷を負っただけだった。


おれに手傷を負わせるとはな……」


 ゼドが楽しそうに笑う。一方、むつきは必殺の攻撃がさほど効いていないことに動揺していた。


「今の移動といい、見えない攻撃といい……お前は空間魔法の使い手か?」

「なんで……」

「ふむ、かつての魔王ブラックモアも空間魔法を使っていたが……なかなか、稀有な才能を持っているな」


 戦いの最中だというのに、むつきの方向を向いて喋り出すゼド。そこを狙って、新しく槍を召喚した菊花が、後頭部めがけて鋭い一閃を繰り出した。


「まぁ、待て」


 菊花としては全力の一撃だったが、容易く避けられてその攻撃は空を切る。代わりにゼドが軽く放ったカウンターの蹴りが菊花の腹に命中した。

 蹴りを腹に受けて、どぅっと吹っ飛ぶ菊花。軽く10mほど吹っ飛んで、膝をついた。


「ぐっ、がはっ!」

「お前もかつてより洗練された動きになっているな。お前本来のスピードなら、少し危なかったかもしれん」


 むつきは疑問を覚える。彼女が知っている菊花の速さはあんなものではなかった。音速を越えて、自分の10倍の加速にもついてきていた。だが、今の菊花の動きはあのときより格段に遅くなっていた。


「疑問か? 何故自分の攻撃が通じず、何故菊花の動きが鈍っているのか」


 むつきがこくりと頷く。


「ならば、分かりやすく教えてやろう――!」


 その瞬間、ゼドからむつきの向かって黒い魔力が解き放たれた。そのプレッシャーに、むつきは押し潰されそうになる。それを見た雷電が声を張り上げる。


「対抗しろむつき! 魔法が使えなくなるぞ!」

「たい……こう? どうやって……」

「魔力を高めろ! 体外に解き放て!」


 むつきは言われたとおりに魔力を思い切り体外に放出する。すると、ゼドからかかってくるプレッシャーが幾分か楽になった。


「……と、まぁこんな風にキッカを抑えつけていたわけだ」


 そう言ってゼドはプレッシャーを解いた。むつきの体への負荷が一気に軽くなる。


「お前は空間魔法を無条件で強い魔法だと勘違いしているようだな」

「……どういうこと?」

「そもそも、空間魔法は攻撃手段として適していない。その名の通りからの空間に最も作用する魔法だからな。雑魚の悪魔相手なら魔力差でごり押しすれば問題なかったろうが、おれの存在を"空"とみなすには、無理があるんじゃないか?」


 そう言って、ゼドは溜め息をつく。


「格上相手なら、相応の戦い方があるというものだ。水龍の娘なら、それをわきまえていたのだがな」


 ゼドの言う「水龍の娘」というのは瀬良のことだ。むつきは、あのときの瀬良のニートっぷりを思い出し、比較されてムッとする。雷電が口を開き、助言する。


「むつき、上級悪魔との戦いは魔力の陣取り合戦だ。いくら能力が優れていようと、魔力で"場"を支配されれば魔法が使えずに負ける」

「……なるほど、分かったわ。私のするべき役割が」


 むつきは今まで格下の悪魔とばかり戦っていた。だから、不自由なく魔法を使えたし、空間魔法は絶大な威力を発揮した。だが、それではこの悪魔には通用しない。


(私の役目はヤツの魔力に対抗して、攻撃能力の高いキッカをサポートすること……それなら)


 むつきは胸のマジカルチャームに手を当てる。そして自分の武器となるものを頭の中に思い浮かべた。マジカルチャームの中から黒い光が解き放たれて、むつきの魔法武器を創造していく。


 黒い光が止んだとき、むつきの手に握られていたのは黒いステッキだった。むつきが初めて見せた魔法武器を目にした菊花は、驚いて口を開く。


「そのステッキ……まるであの子の……」


 その黒いステッキは、良子の使っていた白いステッキと瓜二つの形状をしていた。ゼドはそのステッキに込められた魔力チカラを感じとり、楽しそうに笑う。


「ほぅ、少しは楽しめそうだな」

「……第二ラウンドの始まりよ」


 むつきはそのステッキをゼドに差し向けて、そう言った。

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