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62 むつき

「……どうやら終わったみたいね」


 むつきは辺りを見渡して状況を把握した。私は疲れたから座り込んで、むつきに向かって手をへろへろと振った。変身はもう解いた。むつきは倒れてるみちかを見て、小声で「そういうことだったのね……」と呟いた。私がみちかの体にデビルエレメントを戻したのに気付いたのかもしれない。


「うん。あっちの方は大丈夫?」

「苦戦するような悪魔は出なかった。上級悪魔の一体も」

「そうなの?」

「ただ、見られている可能性はあった」

「誰に?」


 私が問うと、むつきは口に手を当てて、言葉を選ぶように話した。


「不自然な同時発生だった。意図的に誰かが糸を引いてるような。目的は戦闘ではなく、こちらの戦力の把握だったと思われる」

「そうなの?」

「現に新しい魔法少女が一人釣れた。銀華(ぎんか)という新手の魔法少女。悪魔につられてやってきた」

「ふーん、まだ魔法少女いたんだこの街」

「そんなに強くない」


 それ、むつきやキッカ姉が基準だと誰でもそんな評価になるんじゃないの?


「悪魔自体はキッカが全部片付けたけど、その子ちょっとめんどくさくて……キッカが対応してるから私が先に来た」

「めんどくさいんだ」

「めんどくさい」


 愚痴るように言うむつき。うん、なんかあったのか。


「ともあれ、お互い無事でよかったじゃない」

「そうね……少し懸念はあるけど」


 少し不安げにしているむつき。私は倒れてるみちかの顔をハンカチで拭き、綺麗にする。うん、この顔をじっと見てると……


「やっぱそっくりね。みちか」


 私がむつきに向かってそう言った。ばっとこっちを向いたむつきが「あ……」と気の抜けた声を出し、すぐに顔をふるふる左右に振った。


「に、似てないわ」


 何故か似てると言っただけで慌てて否定するむつき。往生際が悪い。こんな遠回しに言うんじゃなくて、はっきり言った方がいいか。


「いや、あんたが斎藤美智花本人でしょ。ね、むつき」


 私はにっこり笑ってそういうと、むつきは電流が走ったかのようにビクゥッと反応した。わ、わかりやすすぎる……一方クロモは「へ?どういうこと?」と理解の及ばない顔している。

 むつきは観念したのか、下を向きながら絞りだすような声で尋ねる。


「あの……いつから気付いてたの?」

「なんで私があなたの正体をあまり詮索しなかったと思う?」


 私はにやにやしながら意地悪な問いかけをする。ぶっちゃけ、結構前から気付いてた。


「えと……どうして気付いたの?」

「似てるのよ。顔、体型、雰囲気ぜんぶね。多少演技してるけど、変わってないわよ貴方」

「そ、そうなの……?」

「特に名前! 『みちか』を一音ずつずらすと『むつき』になるじゃない! 私に気付けって言ってるようなもんじゃない!」


 うん、これが決定的だった。ほんと分かりやすい。わざわざ分かりやすい伏線ありがとう。


「で、でも私がみちかとして、同一人物がこうやって一緒にいるのはおかしくない?」


 うん、そこね。それは簡単に説明できる。


「魔法でしょ。貴方は未来から魔法で来た。だから未来のことも知ってるし、私のことも知ってる。全ては魔法で説明がつく」

「んなむちゃくちゃな……魔法で何でも出来ると思ってるの?」


 クロモが呆れたように言う。


「というかそれもし出来たとしても、タイムパラドックスだよね。同じ人物が同じ時間軸にいる。それって因果律に対する叛逆じゃない? 片方消えちゃうんじゃない?」

「え、そうなの……?」


 まーたこの黒いのが訳知り顔で変な理屈こねだした。そしてクロモの発言に不安を抱くむつき。彼女はそんなこと考えたことなかったみたいだ。私は助け舟を出すように言う。


「ああ、今のむつきは死体だからセーフなんじゃない?」

「えー、そうなの?そういうもんなの?」


 いや、知らんけど。生きてるみちかと死んでるむつき。時間を司る神様がいたとしたら、別物だと判定してセーフにしてもおかしくない。


「じゃあもう別個体だね」

「死んでてよかったね、むつき」


 私がぽんぽんむつきの肩を叩くと、彼女はすごく釈然としない顔で「複雑……」と呟いた。というか聞きたい話が色々とあるんだけど。なんでゾンビなのむつき。まぁ、それは後でおいおい聞くとして……

 私は転がっている木村達4人を指差す。


「あいつら生きてるの?」

「悪魔にはむはむされて衰弱してるけど、まぁ生きてるね」

「じゃあ水性マジック貸して」

「えー? いいよ」


 クロモが体の中からにゅっと水性マジックを出してきた。お前の体はどうなってるんだというツッコミはさておき、私はきゅぽんとキャップを外した。うん……極太。いい感じの落書きが出来そうだ。

 手にマジックを持った私を見て、首をかしげるむつき。


「あの、何を……」

「ねぇむつき。いくら暴力を振るわれたからって、暴力で返すのは虚しいことだとは思わない?そんなことをしてると、いつまで立っても地球から争いは無くならない……そう思うでしょ?」


 もっともらしいことを言いながら、マジックをくるくる回す私。何がいいかな……まずは王道からいくか。

 私は木村のおでこにきゅきゅっとマジックを走らせる。肉。キン肉王族に伝承される由緒正しい一文字だ。さらにほっぺのマークとたらこくちびるを描く。


「あの、良子。それは……」

「今いい感じだから邪魔しないで」


 きゅきゅっとマジックを走らせると、そこにはキン肉星の王位継承者の姿があった。私は自分で言うのもなんだが、絵心はある方だ。うん、似合ってる。私はスマホでパシャリと写真を撮った。


「ねぇ、あと三人いるけどなんか描いて欲しいものある?」

「ミッ○ーマウス」

「それはやめろ」


 そう言いつつ、とりあえず二人目にはヒゲを描いていた。ダンディさは必要だよね。世界一有名な配管工のおじさんだ。額にMの字を描くのも忘れないが……なんか寂しいな。やっぱほっぺにぐるぐるマークをつけよう。眉毛もゲキ眉で。


「あの、何をしてるの良子……」

「ん、ただの芸術活動。水性マジックなのが私の優しさ」

「いや、油性より水性の方が落ちにくいんだけど……」


 バレたか。顔に落書きする場合、油脂の関係で水性マジックの方がかえって落ちにくいらしい。もちろん水性マジックなのは私の悪意。でもいいじゃない。ちょっとくらい恨みを晴らしたって。


「ほら、むつきも描いて」


 私がむつきにマジックを渡してにこやかに笑った。むつきはマジックを手に持ってどうしようかとおろおろ悩んでいたが、意を決したようにキャンバスという名の顔にマジックを走らせた。


「ね、ねこちゃん」


 おい、可愛いぞこれ。むつきの無駄な女子力が発揮され、一人だけファンシーな感じになってしまった。バランスが……崩れる……


「やっぱここはデビルでしょ。デーモン閣下にしようよ」


 そう言ってクロモが残りの一人にデスメタルバンドみたいな禍々しい落書きをする。お前ら無駄に絵心あるな。


「よし、いい出来。写真撮ろう写真」


 私は4人並ばせて写真を10枚くらい撮った。もしこいつらがまたちょっかいだしてきたら、この写真が脅しの材料に使えるかもしれない。うん、いいことした。


「じゃ、帰ろっか。あ、むつき。私疲れたから自分のことは自分で運んで」

「えっと……本来ここで私は自分を運んだりしないんだけど……タイムパラドックスが……時間の矛盾が……」


 まだタイムパラドックスとか気にしてるむつき。でもここに貴方がいる時点でおかしいからね。


「私疲れたから、お願いね」

「あ、うん……」


 私はむつきにみちかを背負わせて、とっとと現場から撤退した。だってほら、早くしないとキッカ姉ちゃんに見つかっちゃうし。私はキッカ姉ちゃんの前ではいい子で通ってるからね!

割とあっさり正体ばれしました。

あと今更ながら、この物語はまどマギにかなり影響を受けて作ってます。タイムトリップネタとか分かりやすいよね!読者にもバレバレだったと思います。でもいいの。なろうのトラック転生と同じようにお約束みたいなものだよね、と開き直りました!

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