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56 みちかの異空間②

 周囲は首無しの黒い巨人たちに囲まれていた。巨人の体躯は2mから5mと不均一で、数は30体といったところか。巨人の体中に、目が無数についててこっちを見ているのが気持ち悪い。

 傍観者モードに徹したクロモが呟く。


「さて、勝てるかなぁ」

「やってみなきゃ分かんないでしょ」


 私はステッキで肩をトントンと歩きながら、普通に歩いて巨人に近づいていく。私の魔法に速度は必要ない。ただステッキで原始的にぶん殴るだけで、それが必殺の一撃になる。それが私の絶対魔法アブソリュート・マギア[命名:井上菊花]だ。この魔法の前には、少々の魔力差は関係ない。問題はどこまで通じるかということだけど…


 既に一体の巨人をステッキの射程に入るくらい近付いた。3mくらいの巨人で、こんなに近づいても悠然と立って私を見下ろしているだけだ。

 私はステッキをアッパー気味に振り上げる。ずばん、と音を立てて巨人が股から縦に切り裂かれた。腹まで切り裂かれた巨人が倒れ、黒い霧になって消えていく。

 ……無抵抗すぎ。


「うっとおしいわね、人のことじろじろ見て。私に精神攻撃は通用しないっての」


 クロモの解説によるとこの巨人の目を見ると恐慌状態に陥るらしいが、私には効かない。私の挑発するような言動に巨人達は顔を見合わせ、人間のだみ声のような汚い咆哮を上げて襲い掛かってきた。


 だが遅い。のろのろと歩くような遅さだ。巨人がぐおおっと声を上げながら上から叩きつけるように伸ばしてきた腕を、ステッキで振り払うと、腕が千切れ飛んだ。


 図体だけか。この動きなら私でも反応できる。

 次は横から来た巨人が大きく腕を振りかぶって殴りかかってきた。私は動くことなく軽くステッキを横に振ると巨人の腕が肩まで裂けて無くなった。


「見掛け倒しね」

「いや、良子とは致命的に相性が悪いんだと思うよ」

「ほう?」

「見た感じ、目による威圧と堅い装甲で戦うタイプだ。そのどちらも良子には通じない」


 巨大な足を上げて踏みつけてくる巨人。私の身長では巨人の膝の高さくらいの大きさしかない。5m以上はあるこの中では大きな個体だ。私はステッキを上に向けて、巨人の足を受け止めた。

 どおおんという音とともに巨人の足が消滅した。


 効果範囲が少し大きくなってる?前は殴った箇所だけめり込むように刺さるだけだったが、今では殴った箇所の周辺の肉も一緒に吹き飛んでる。少しは私も成長してるということか。


 倒れた巨人にトドメを刺そうと近づこうとすると、地面からごぽごぽと黒い手がまとわりつき、私の足を掴んだ。蹴っ飛ばすと腕が千切れて霧散した。だが次々と地面から腕が生えてくる。


 うっとおしい。


 私はステッキを地面に突き刺して、きのこみたいに生えていた腕を抉りとるように地面ごと払った。地面から切り離された腕が霧散して消える。


 また巨人が迫ってくる。正面から倒れた巨人を踏み越えて2体、横から1体。遅いとはいえ、同時に別方向からかかってくると対応が難しい。

 私は正面からきた巨人たちを叩こうと動くと、横から来た巨人が私の体を掴んだ。足が地面を離れ、体が宙に浮く。


「よしこっ!」


 クロモが叫ぶが、私は巨人にぎりぎりと握られながらも痛みは全く感じていなかった。


 痛くない……やっぱりそうだったか。


 私はステッキを振り下ろし、掴まれた巨人の腕を斬り落とす。ずしんと腕が落ち、私は着地に失敗してごろごろ転がる。そして転がった無防備な私に対し、別の巨人がハンマーのように拳を振り下ろした。目の前まで拳が迫ってくるが、私は体勢を崩していて避けられない。

 拳が当たるその瞬間、私は悟ったように笑った。


「ねぇ、クロモ。私が今まで悪魔と戦ったときに、かすり傷の一つでも負ったことある?」


 拳がぶつかる。私はぎゅっと目をつむるが、あるはずの衝撃を全く感じない。目を開けると、私の頭に拳が命中しながら、ぴたっとそのまま止まっていた。

 私はほうっと安堵のため息を吐くと、ステッキで巨人の腕を切り飛ばした。


「良子……今のって……」

「見たとおりね。私に攻撃は通じない」


 ステッキだけじゃなかった。薄々感づいていたけど、体の方にも絶対魔法アブソリュート・マギアがかかっていた。そうだよね……ステッキで殴ったときや受け止めたときに私に衝撃が来ずに、一方的に打ち勝ってるってのはそういうことだよね。

 でも痛かったらイヤだから、試したことがなかった。今までなんだかんだ誤魔化しつつ避けてたから、こんなにまともに攻撃を受けたの初めてだけど。


 目の前の巨人が残った片腕で殴り掛かってくる。だけど、もう避ける必要もない。頭に巨人の腕ががつんと命中する。……やはり、効かない。そよ風が頬を撫でているようだ。私はステッキで残った腕も切り飛ばす。これじゃまるでスーパーマリオのスター状態だ。

 クロモが目を丸くして、驚愕の声をあげる。


「うえ……こんなの絶対ありえない。良子は弱い魔法少女のはずじゃ……」

「おいこら、弱い方が良かったって聞こえるぞ」

「うーん、そんなことないけどすごい複雑な気分なのは確か」


 ……うん。すごく失礼だが、クロモの言っていることもなんとなく分かる。私自身弱い方だと思っていた。身体能力は人並み以下、魔法っぽいものを使えず、出来ることはステッキで殴るだけ。

 出来ることは変わってない。変わってないんだけど……


 どうして誰も教えてくれなかったかなぁ。


 私は胸についたマジカルチャームさんに語りかけた。マジカルチャーム、私が魔法少女になる為の変身アイテム。だけど何かそれだけじゃない気がする。勘だけど。


 お前さ、私に普通の魔法少女らしい魔法を使わせないで、こんな撲殺専用の接近戦法取らせるなんて何考えてるの?


 私の問い掛けに対して、マジカルチャームさんからは何の返答もなかった。

ようやくシュガーさんが覚醒した模様。

といっても、最初から出来てたことを今更認知しただけです。

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