52 パンデモニック
今日は朝から悪戯濡れ衣事件発生とかあったけど、特に何事もなく一日が終わった。なんか私を見てクラスメイトがヒソヒソ話をしまくってた気がするけど、気のせいだ。私は帰宅し、自室でクロモと雑談していた。
「良かったね、良子。キミのクラス内のイメージが『ガリ勉モブ眼鏡』からガラリと変わったよ!」
「へー、どんな感じに?」
「一方では『偽善クソ眼鏡』として軽蔑され、もう一方では『ストロング佐藤』とか呼ばれてた」
「うん、どっちにしろロクなもんじゃないわね」
「一部では『やらない善よりやる良子』とか言われてたりもしたね!よかったね、よしこ!ある意味プラスイメージだよ!」
「ああそう……」
クロモが楽しげに報告する。こいつ、またどっか行ってると思わせておいて、朝から高見の見物していやがった。
でもまぁ、意外と軽傷で済んだ気がする。もしみちかちゃんが私を犯人扱いして、一緒になって責めてきたら最悪だったけど……彼女はそんなことせずに私を信じてくれた。それが最大の救いだった。
「ぶっちゃけあいつらの企みは半分くらい失敗だったよねー。良子犯人説を信じたのはあの中の半分くらい。あとのは懐疑的だったね。あの女、発言力強いし良子と違って人望はあるっぽいけど、アンチも多いみたい」
「ふーん。で、クロモから見た感じ、やっぱり主犯はあいつらなの?」
「うん、そうだよ。てゆーか何度か犯行現場見てるし。」
「見てたんかい」
どうやらクロモは木村一派が悪戯の主犯だと知ってて黙ってたらしい。私は報告義務を怠ったマスコットのほっぺをぎゅーっとつまんで、びよんびよんと伸ばす。
「むぐぐ、らってーよしこきいてこなかったじゃん」
「うるさいわね、普段から報連相が足りないのよ。報連相が」
「あとしんじゅーはヒトにあまり肩入れしちゃだめなんだよ?」
「そんな取ってつけたような設定、今更もってくるな」
とりあえず私刑は終わったので、クロモを解放する。しかしまぁ、一般人からは見えないこいつの存在は、情報収集にうってつけだな。
「でさー、よしこ。これでめでたしめでたしってわけにはいかないんでしょ?」
「そりゃそーよ。まだ何も解決してない」
「だよねー。じゃ、やっちゃう?報復やっちゃう?」
やけに楽しそうに聞いてくるクロモ。もちろん私の心は決まっている。無抵抗に徹することで、あいつらの嫌がらせが終わるとは思えないから。
「当然やる。そしてやるなら徹底的にやる。あいつらの心がぽきんと折れるまで」
「さっすがよしこ、悪い子だね!ボクが選んだだけあるね!悪巧みなら協力するよ!」
「ホント嬉しそうだなお前は……」
なんか勝手にテンション上がってる状態のクロモに、やれやれとため息をつく私。というかさっき神獣は人に肩入れしちゃ駄目とか言ってなかったっけ?
「しかしクロモがこういうのに積極的に協力する気マンマンなのが意外だわ…」
「えーそう? だって、人を不幸にさせるのって楽しいじゃん」
「そう、それよ。……その不幸の対象に私やみちかちゃんは含まれないの?」
「あれ? それもそーだ」
そう、そこを以前から疑問に思っていた。クロモの性格は、はっきり言って意地が悪い。世界平和を願う善良な神獣と喧伝しておきながら、人の不幸を見て喜ぶし、邪悪な言動がたまに飛び出る。正直、神獣というより悪魔じゃないかと疑ってるんだけど……その行動は完全な悪とはいいきれないところがある。
クロモは私の質問にちょっと悩んでたが、自分で納得したのかこう答えた。
「あれだよ。元々どん底の人が不幸になっても面白くないじゃん。調子に乗ってるやつを不幸にするのが楽しいわけで」
「ん? だれがどん底だって?」
「え? 自分は人並みだと思ってたの?」
「うん、どうやら躾が足りないようだ」
私はクロモを捕まえて両手でぐりぐりすると、クロモが「ぐわー」と悲鳴を上げる。……うん、やっぱりこいつ性格は悪いけど、完全な悪じゃない。どこまでも小物で中途半端なヤツなんだよね。だからこそ私もこいつに付き合ってやってるわけだけど。
「じゃ、クロモ。スマホの使い方わかる?」
「なめるなよ良子。その程度わかるよ」
「何で分かるんだというツッコミはさておき……これで犯行現場撮ってこれる?」
「よゆーのよっちゃんイカだよ!」
私がスマホを渡すと、クロモが小さな手で器用にスマホを操作し、録画モードを作動する。
「こんな感じでしょ?」
「うん、なんでお前の手でタッチが反応するのかというツッコミは置いといて、そんな感じよ。頼んだわね」
「任された!」
自信満々にビシッと敬礼するクロモ。こういう悪巧みするときはホントに楽しそうだ。なんか逆に不安になってくる。私がなるようになるしかないか、と思ってジーっとクロモを見つめてると、クロモの体が突然何かに反応したようにびくんと震えた。
「うわ、悪魔発生した……」
どうやら悪魔センサーが反応したようだ。
「どこ?」
「町の方!ってゆうか……ひぃふぅみぃ……10体以上いる!大量発生だ!」
悪魔が10体以上発生したと言い、クロモが焦るように慌てだす。
ぱんでもにっく…パンデミックよね?
「何それ?」
「特異点の胎動が始まったんだよ!」
「えっと……特異点?」
「いいから早く出るよ!」
わけのわからないことを言うクロモだが、何かが起こったのは間違いない。
私は外に出て、チャリで町の方に向かった。




