5 変身
ここで佐藤良子の容姿について説明しよう!
佐藤良子はごく普通の眼鏡女子。身長は平均並で胸は平均。オシャレ感は全く無く、セミロングの黒髪を後ろで束ねただけの髪型で、服装は中学校の地味な制服に野暮ったい茶色コートに黒いマフラーという暖かさだけを考えたモブっぽい服装センスだった。
いつもジト目で表情の変化が乏しい彼女は、怒ってないのに「おこなの?」と言われていた。
総評すると、地味で真面目そうで、目つきの悪いモブ眼鏡。魔法少女などという華やかな印象が全くない女の子であった。
そんな彼女が変身すると・・・なんということでしょう・・・!
「・・・何?どうなったの?成功・・・したの?」
マジカルチャームから出てきた闇が良子の体を一瞬だけ覆いつくして、闇が散った後には良子の姿は激変していた。
クロモは呆気に取られた顔で、こうつぶやいた。
「・・・だれ?」
「失礼な。佐藤良子よ」
「鏡見てよ鏡。ほら」
クロモがどこからか手鏡を取り出して良子の姿を映しだすと、そこには見たことのない美少女の姿があった。
眼鏡は外れて裸眼になり、髪はまるで新雪のような純白の色に染まっている。てきとうに束ねていた髪は、可愛いシュシュでサイドテールにまとめられており、暖かさ重視の女子力の低い服装は、青を基調にしたミニドレスめいた可愛いファッションになっていた。
そう、まるで魔法少女とプリンセスを足して二で割ったような可憐さ・・・マジカルチャームさんはホントにいい仕事をしました。
「嘘・・・まぶたが二重になっておめめがパッチリしてる・・・」
「細かっ!もっと違うとこたくさんあるでしょ!全体的に!」
「細かくない!重要なところよ、ここは!」
ひそかに目つきを気にしてた良子。ぱっちりおめめは実際すごく印象を変えるし、重要なのである!
細かいところまで気がきくマジカルチャームさんはとても偉いのです。
そんなマジカルチャームさんは今は良子の胸元で漆黒の輝きを発しており、とても綺麗なオシャレアクセサリーになっていた。
「しかしここまで変わるとはねー。普通は変身前の面影を残したりするものなんだけど」
「そうなの?」
「変身後の姿は本人のイメージや願望にある程度左右されるんだけど、骨格や体型までは変わらないからね。あくまで服装とか髪型とか変えやすいところくらいだ。ま、変身と言っても戦闘服に着替えるくらいの変化しかないよ」
「あ、たしかに胸はそのままだ・・・」
残念。マジカルチャームさんはそこまで万能ではない。二重になったのは大サービスと言えるだろう。
「チャームは大事に扱ってよね。それは神獣の力を宿したボクの分身みたいなものなんだから」
「わかったわ。もう売ろうなんて思わないから」
「ゲンキンなヤツだなー」
良子はニヤリと笑い、胸元のマジカルチャームをさする。思ったより痛い格好じゃなかったのもポイントが高かった。ピンクのフリフリがいっぱいついたいかにもアニメの魔法少女な服装だったり、露出度の高いコスチュームだったら、多分恥ずかしくて変身できないと思う。よかった、ピンクじゃなくて落ち着いた寒色系で。
私のマジカルチャームさんはホントにいい仕事をしてくれた。うん。
実際はチャームを作ったクロモは悪魔(元魔王)なので、それはマジカルチャームというかデビルチャームであり、悪魔の力で変身したので、良子は魔法少女ではなく悪魔少女である。
本人は二重にばかり目がいって気付かなかったが、その背中にはクロモのトレードマークとも言える、小さなコウモリのような羽がちょこんと生えていた。