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49 良子ちゃんと一緒

 佐藤良子。私の後ろの席の少女。彼女は入学式の日に一緒に帰って以来、度々私に声をかけるようになった。

 体育や美術の時間など、好きな相手と組んでやるような授業はよくある。そんなときは迷わず私と組むし、昼休みも私と一緒に食事を取るようになった。

 私としても断る理由もないし、いつも彼女と一緒に行動した。


 彼女は感情を露わにすることが少なくそっけない態度に見えるが、その行動自体は積極的でギャップがあった。

 真面目な生徒であり、ハキハキと喋る彼女が、何故私に声をかけるのか、何故他に友達を作ろうとしないのか分からなかった。彼女と私では釣り合わない。内心そう思っていた。

 だから思い切って聞いてみたことがある。


「どうして、あのとき私に声をかけたの?」


 もしかして関係が壊れるかも、と思って勇気を出して聞いたことだ。でも彼女なら大丈夫だろうと心の中で思っていた。思っていたとおり、彼女は数瞬考えてこう答えた。


「ん、ぶっちゃけていい?」

「……いいよ」

「貴方が一人に見えたから」


 直球で心にグサリと来る言葉だった。確かに私は友達いないけど、いないけど…ちょっと顔を伏せた私を見つめながら、彼女は話を続けた。


「あのときしかチャンスなかったのよ。新しい環境になって、クラスメイトがほとんど他人のあのときしか」

「そう……かな?」

「うん。ぼーっとしてると女子っていうのはどんどんグループ作って、外患は受け付けなくなるからね。その前に友達になっておきたかったの。貴方が一人じゃなくなる前に」


 ……つまり、あれ?私がもしかして、放っておくと他に友達作るように見えたのだろうか。それにしても外患って……すごい酷い表現だ。


「あの……私の他に友達作ろうとはしないの?」

「いや、そうそう作れるなら苦労はしないって」


 彼女はため息を吐きながら「そんなに社交的に見える?」と言い、否定した。


「それに群れるのも苦手なの。友達の友達と気が合わないと嫌だし。友達同士で比較されて二番手三番手になるのも嫌」


 それは……そうかも。私も小さいときから仲のいい幼馴染がいたけど、その子は社交的で人気者だったから、小学校でどんどん友達が増えて私に構ってくれなくなった。それからだんだん疎遠になって、別の中学校になってそれっきり……うぅ、悲しくなってきた。


「貴方みたいな大人しい子は割ともてるし、すぐどっかのグループに属しちゃうし……」


 もてるかどうかは別として、グループに属するのはそうかもしれない。私も中学校のとき、友達といえる子はいなかったけど、ある意味グループに属していたとも言えなくもない。でも、そのグループに属するのは半強制みたいなもので……はっきり言って、私はグループの中で最下層の扱いだった。いつも嫌がらせの対象だった。


「……グループに属するのも、いいことばっかりじゃないよ」

「そうね、貴方は周囲の都合に振り回されそうだもんね」


 グサッ。確かに振り回されてた。自分の意見を言えないから。言っても無視されるとつらいし……


「ま、私も振り回すけどいいよね。みちかちゃん」


 滅多に笑わない彼女が、楽しげにニヤリと笑ってそう言った。あ、良子ちゃんに友達が出来ないわけが分かった気がする。社交性もあるし、礼儀もあるんだけど、この子は言うことが正直すぎる。普通なら言えないこともハッキリ言ってしまう。

 普通なら友達でももうちょっと取り繕った言葉で接すると思う。それを彼女は取り繕わない。言葉の攻撃力が非常に高い。これはグループに属していたら、確実に空気クラッシャーになるだろう。


「……ふふっ」


 彼女のニヤニヤ笑いにつられて、何故か私も笑っていた。彼女はそれを見てちょっとむくれて、「何で嬉しそうなのよ」と頬を引っ張った。私は「ひゃめてよ良子ちゃん」と言いながらも、彼女のつかむ握力はゆるゆるで全然痛くなくて、逆に心地いいくらいだった。そういえばこの子、学業の成績はいいんだけど、体育の方はひどいものだったことを思い出す。彼女は力が無いから、触られても全然怖くなかった。


 私と良子ちゃんとの上下関係は、いつも良子ちゃんが上で私が下だ。彼女の方から色々言ってきて、私はそれに付き従い、振り回される形だった。

 中学校のときもグループの下で従う立場だったけど、それとは全然違う。あの頃は、私が一方的に弱い立場で、グループの上層は弱みを見せようとはしなかった。

 ただ、良子ちゃんは相手の弱みをズバズバ言う代わりに、自分の弱みもあっさり明け渡すのだ。まるでノーガードのボクシングのような会話術だ。絶対なんか間違っていると思う。


 私は彼女となら下の立場であっても全然辛くはなかった。だって、それが楽しいのだから。私は毎日彼女と会えるのを心待ちにするようになった。まさかこんな不良校で有名な学校にきて、学校が楽しいと思えるなんて、入学する前は全く想像していなかった。


 明日もまた、良子ちゃんと一緒だね。お風呂場でそう呟いて、ちょっとにやけてみた。

斎藤さんは腐じゃないので知る由もありませんが、彼女と良子との関係は上下関係ではなく、受けと攻めの関係です。

それを自覚するときは来るのでしょうか。

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