46 学校での生活
最近、私の周りで悪魔だとか魔王だとか騒がしいが、魔法少女になってしまった私にも、当然ながら普通の高校生としての日常がある。いくら私が非日常の経験をしようと、残念ながら日常での私は一般人の枠を越えていないのだ。
ここではとりとめもない高校生としての私に起こった事件の話をしよう。……ちょっと鬱になる話だけどね。
私は特に部活はやっておらず帰宅部であったが、この不良校として悪名高い床野見高校にも普通に委員会活動というものがある。学級委員、体育委員、保健委員、図書委員などの半強制的に所属しないといけない無償の奉仕活動のことだ。私の委員は、学級委員に次ぐ不人気職の園芸委員だった。
本当は楽な図書委員が良かったのだが、そちらの方はジャンケンで負けて取られてしまった。とても本が好きそうには見えないカリアゲの男子高校生に図書委員の座を取られたのは、とても残念で腹立たしいことである。まぁそれはそれとして……
私は早朝から誰もいない教室にぽつん一人だけいた。園芸委員は早起きして花壇に水をやらなければならない。園芸委員が不人気の理由の1つがこれである。各学年持ち回りで花壇に水をやるのだが、月2、3回は当番が回ってくる。そして今日は私の当番であった。
私は教室に鞄を降ろし、裏庭へと向かった。この不良学校のことだから、私みたいに真面目に園芸委員をやってる人は少ない。だけど、園芸委員が職務放棄をした場合は、結局先生が花壇に水をやることになるのだ。そのせいか、普通に私が職務を果たすだけで評価が上がるのは役得ではあった。私は自身の評価に関しては特に興味はないのだが、なんせ私のいる7組の担任はキッカ姉なのだ。私が真面目にやるだけで「菊花先生のとこの生徒は良い子だねぇ」とキッカ姉が褒められるのだ。義理とはいえ妹として、姉の評価が上がるのに貢献せねばなるまい。
そして裏庭についた私は、コンビニで買い食いしてきたようなゴミが花壇にぶちまけられているのを目にした。うん、これが園芸委員が不人気な理由その2「花壇はよく荒らされる」である。流石に花が根っこから引っこ抜かれたり踏みにじられたり耕されたりは滅多にない(あることはある)が、こういうゴミを捨てたりタバコを捨てたりといった小規模なイヤガらせはよくあることだ。
私はため息をつきながら、ゴミを片付ける。本当はゴミつまむの汚いし無視してもいいかなーと思ったけど、私の手が汚れることで、キッカ姉ちゃんの評価が上がるなら私はやる。こういうトラブルが無かったら、もうちょっと遅く起きてもいいんだけどね…
花壇の清掃と水やりを終えた私は、教室に帰ることにした。もういい時間になっており、ちらほら生徒が登校してきている。私は下駄箱のところで、顔見知りを見かけると、声をかけた。
「おはよ、みちかちゃん」
「あっ……おはよう。よしこちゃん」
気の弱そうなこの女子生徒の名は斉藤美智花。私のすぐ前の席におり、入学して一番最初にクラスで友達になった子だ。といっても、この子以外クラスに友達いないんだけど。
私が声をかけたのだが、彼女は下駄箱を開けたまま呆然と立ちつくしており、すぐに動こうとしなかった。気になって彼女の下駄箱を見ると、酷い状態になっている彼女の上履きがあった。
「ガキのやることね。気にしなくていいから」
「よしこちゃん…」
みちかちゃんの上履きには、マジックで稚拙な落書きがしてあった。犯人は随分語彙力が少ないのか、『しねブス』『きえろ』『がっこうくんな』とか幼稚なことばかりなことばっか書いてある。そしてあちこちにこれでもかとばかりに画鋲が刺してある。小学生か。みちかちゃんはそれを見て呆然としていた。仕方ないなぁ、もう。
「んー、ちょっと職員室いくわ。代わりの履くもの探して―――」
「うわひっど!どしたのこれ!?滅茶苦茶落書きされてんじゃん!!」
私の言葉をさえぎるようにして、横から声量の大きい女子が大声でまくしたててきた。
怒られにくい程度の茶髪に染めてて、クリスチャンでもないのに胸に小さな十字架のシルバーアクセをつけた軽い感じの女子。たぶん結構コミュ力高くて明るくて友達多いタイプ…すごい苦手なタイプだ。名前は…えーと、同じクラスのはずなんだけど忘れた。
「ひっどいことするヤツがいるよね!私先生呼んでくる!!」
おいばかやめろ。これ以上騒ぐな馬鹿。みちかちゃんが固まって動けないだろうが。人の注目を浴びることになるからやめろ。
…結論から言うと、私はこのとき無理やりにでもみちかちゃんを連れだしてこの場から離れるべきであった。何も対処できなかった私が憎い。
無駄に偽善者ぶった行動をする馬鹿のせいで、その後先生が呼ばれてきて人が集まり、この日からみちかちゃんはうちのクラスの人全員に「いじめられてるかわいそうな子」だと認識されるようになった。思えばそれが始まりで、みちかちゃんを標的にしたイヤガらせはエスカレートしていくこととなる。
ここからちょっと軽く鬱展開。
本当はもっと前にこの話を書く予定でしたが、学校アレルギーが出て筆があまり進みませんでした。
そのせいで学校での唯一の友達である斎藤美智花さんのことを全く掘り下げられず、非常にキャラが薄くなっていたことをお悔やみ申し上げます。
というわけで、今更ながら掘り下げます。物語の分岐点となる重要なところです。




