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41 元魔法少女(28)と世間話

 私は瀬良清美(せらきよみ)。28歳独身ニートの元魔法少女です。

 何故か突然、「新しい魔法少女を連れてきた」と言ってキッカ先輩と良子ちゃんが押しかけてきました。

 キッカ先輩は魔法少女時代にお世話になったことで今も連絡を取り合っており、良子ちゃんはキッカ先輩の妹分ということで小さい頃から知っています。結構久しぶりに会うけど、何の話をしにきたんだろう?

 ということで、私は服を着替えて、リビングで応対することにしました。

 リビングにいくと3人の客にまじって、見慣れた白い犬と初めてみる黒くて丸いコウモリがいた。なんだろ……あの黒いの。


「デンちゃんも変わりないっすねー。元気?」

「ふん、お前は魔法少女やめてから変な方向にいきだしたな。昔はそんな口調じゃなかったろう」

「この口調はキャラ付けっすよ。こうして喋ると後輩力が高まるんす」

「すごくどうでもいい。というか学校卒業してからそれをやられてもな……」

「ちょっと待って。何普通に話してるの?」


 相変わらずつれない態度をとるデンちゃんと話してたら、良子ちゃんが驚いてツッコミをいれる。すると、キッカ先輩が解説をしだした。


「瀬良ちゃんは特別なのよ。何故か魔法少女をやめても神獣と話す能力を失わなかった」

「てれるっすねー」

「精神が子供のままなんじゃないか?」

「遊び心を忘れない素敵な大人と言ってほしいっす」


「ふーん、まぁいいけど」と良子ちゃんが頬杖をつく。神経質そうで真面目そうな見た目にだまされるけど、この子は思ったより寛容で適応力がすごい。精神の成熟も早くて、いつのまにか私に対して上から目線でものを言うようになった。でも12歳も年下の女の子に見下されるの、正直悪くない……とか思っちゃう私の思考ってもう駄目かもしれん。


「いやー、いつの間にかうちより大きくなったっすね。良子ちゃん」

「いや、2年前から身長変わってないから」


 私の場合、小6から身長伸びてないんだけど……ちなみに142cm。悲しい。良子ちゃんの隣を見やるといかにも魔女って感じのつばの広い魔女帽子を被った黒髪ロングの子がちょこんと正座している。何故か下を向いて帽子で顔を隠しているけど私にはわかる。これ絶対かわいいヤツだ。


「紹介するね。この子が魔法少女のむつきちゃん」

「……むつきです。よろしく」


 こくりと軽く頭を下げて、感情のこもらない短い言葉で挨拶する魔女っ子ちゃん。あ、これ分かった。物静かなクールキャラだ。


「うちは元魔法少女の瀬良(せら)っす。キッカ先輩の後輩で、良子ちゃんにとっては『優しい近所のお姉ちゃん』って感じの立ち位置っす」

「え?『駄目なニートの反面教師』の間違いじゃなくて?」

「ちょっ、ひどいっ」

「弟を魔道に引きずり込んだ張本人でもある」

「いやー、私の影響でああいう風に育ったなら、本望っすね…」


 私がそう軽口をたたくと、良子ちゃんが無言でほっぺをつねってきた。痛い!割と痛い!えーと、良子ちゃんの弟くんとの関わりを説明すると…色々漫画貸したり英才教育を施した結果、純粋な弟くんは立派な予備軍に育っちゃったという話で。


「あ、弟くん今元気っすか?」

「相変わらずの性格だけど、背だけは伸びたわ」


 良子ちゃんがスマホで姉弟で並んでる写真を見せてくれた。うわー、あんなに天使なくらい可愛かった弟くんもこんなに背伸びちゃって……ていうか良子ちゃん比べて20cmくらい高くない? あの可愛い弟ちゃんが成長してしまったのは非常に残念だが、割と顔いいし、悪くない成長かも? しかし線細いなぁ。


「うわー、こんな弟欲しかったっすわー。結構イケメンだし、モテてるんじゃないすか?」

「全然。言動がいちいちアホな子なせいで周りをドン引きさせるし、むしろぼっち。浮いた話の一つも聞きやしない。バレンタインは母から以外貰ったことがない。彼女なんて夢のまた夢ね」

「あっはっは、ある意味弟くんらしいっすねー。でも良子ちゃんも人の事言えないくらいぼっちだし、似た者姉弟っすよねー……いひゃい!」


 ジト目でほっぺをぎゅーっとつねってくる良子ちゃん。とてもいたい。あ、でもその養豚所の豚を見るような目ちょっと好き。そんな感じでじゃれてると、魔女っ子が良子ちゃんの服のはしをついついって引っ張った。気がついたように良子ちゃんが話題転換をする。


「っと、そろそろ本題に入りたいんだけど」

「ああ、そっすね。今日は何か御用なんすか?」

「私じゃなくてこの子がね……って、いつまで顔伏せてるのよ。そろそろ慣れなさい」


 良子ちゃんは顔を隠してる魔女っ子の帽子を引っペがした。帽子を取られた少女の顔は正直、思っていたよりずっと美人さんだった。


「うわー、いいっ。黒髪美人って感じでいいっすね!」

「そうでしょ。むつきはかわいいんだから」


 何故か胸を張って応える良子ちゃん。この子がこうやって喜ぶってことは、むつきちゃんとやらはかなり大切な友達なんだろう。


「あの……私のこの姿を見て何とも思わないの?その、変だとか……」


 怖がるような声で目を逸らしながら言うむつきちゃんに、私は胸を張って正直な気持ちを答える。


「全然!顔が半分黒く変色してるところも、外観的には欠点になりうることなのにむしろ扇情的というか、逆にどきどきするっす。そしてそれを恥ずかしがって顔を隠してたのも高ポイント!魔女っ子の服もめっちやかわいい!あとちらりと見える地肌がえろい」

「ちょっと待ったストップ。むつきが本気で引いてるからやめて」


 気付けばむつきちゃんが帽子を抱えて防御の構え(肉のカーテン)を取っている。その瞳から見えるのは怯えか。はうう、調子に乗ってしまった!もう警戒されてるからお近づきになれない!?

 むつきちゃんが小声でキッカ先輩に助けを求めた。


「……あの、キッカ。他の魔法少女はいなかったの?この人どうみても性格に問題が……」

「いないわ。当時魔王を倒した魔法少女でこの街に残ってるのはこの子と私の二人だけ」


 魔王を倒した魔法少女?ははーん、なんか突然訪問された理由が読めてきた。


「なるほど、UMGを探してるんすねー」

「ゆーえむじー……って何?」

「アルティメット・マジカル・ガールズ。略してUMG。うちらのチーム名っす」

「初めて知ったわ……というか、何そのネーミングセンス」

「うちの命名じゃないっすよ」


 私はかつて一緒に戦った仲間を思い出す。ひかりん元気にしてるかなぁ?


「他の3人は今どうしているの?」


 むつきちゃんに聞かれて、ちょっと鬱になる私。その話は地雷だよ……


「一人は戦いが終わったらすぐ転校して連絡がつかなくなったっす。あとの二人は……よそで結婚して子持ちっす……」


 そう、あの2人は途中で不登校になった私と違って本当にキラキラした青春を謳歌した。心の底からリア充爆発しろという負のオーラがにじみでてしまう。


「うう、うちの味方はキッカ先輩だけっす。アラサー未婚仲間のキッカ先輩だけっす!」

「あの、そういうのやめてちょうだい。仲間にされたくないから」

「いや、キッカもそろそろ相手見つけないとやばいぞ……」

「うん……まぁそうなんだけどね……」


 キッカ先輩は表情だけはあいまいに笑っているけど、沈んだ声を隠せない。先輩にとっても地雷だった。はい、この話題やめ! やめー!


「と!いうわけで、他3人には会えないけど代わりにうちが話を聞いてあげるっすよ!」

「はぁ……」


 残念そうにため息をついたむつきちゃん。なんかどんどん距離が遠くなってる気がして寂しいよ!


「単刀直入に聞きたい……15年前、どうやって魔王を倒したの?」


 さっきまでとは違って真剣な目で見つめてくるむつきちゃん。そんなに真剣な目で見つめられると照れる。私は当時の記憶を呼び起こし、答える。


「うーん、わかんないっ!」

「……は?」


 じろりとジト目になったむつきちゃんの視線が刺さる。いたい、やめて。


「ものすごく全力で戦ったことは覚えてるんっすよ。こう、全ての力よあつまれーって感じで。そんな感じでしたっすよね、キッカ先輩?」

「ええ、そうね。全力で戦って、力尽きるまで戦って……でもそのときの記憶があまり無いの」


 困ったように笑うキッカ先輩。むつきちゃんはちょっとムッとした顔になった。デンはふるふると首を振って答えた。


「残念ながら、我々はあのときの記憶が不確かだ。だが、あのとき魔王を倒すほどの強大な力を得たのは覚えている。恐らくあれが『覚醒』と呼ばれるものだろう」

「『覚醒』?」

「……魔法少女は覚醒することで真の力を発揮するらしい」


 覚醒……かっこいい響きだね!そう、あのとき私たちは覚醒していた!なんかよくわからんけど!むつきちゃんも興味を持ったようで、その話題に食いついた。


「……それはどういう条件で覚醒するの?」

「才能ある魔法少女が限界まで魔力を高めたときに覚醒するとか聞いたことがあるが……一種の奇跡のようなもので容易に起こせるものではないらしい。吾輩はこれ以上のことは知らないな」

「そう……」


 残念そうにつぶやくむつきちゃん。何か事情があるのだろうか。それにしても何で記憶があいまいなんだろうか。可能性の1つとして考えられることは…


「やっぱり記憶消されちゃったのかもしれないっすねー」

「記憶を操作する魔法か……確かにそういうものは存在する。だが、誰が何のためにという疑問は残るな。覚醒の反動で記憶が飛んだだけという可能性もある」

「だからってみんなが覚えてないってのもおかしくないっすか?うー、ひかりんなら絶対覚えてると思うんすけどねー。あのあとすぐいなくなっちゃったし」

「……最後まで謎だったな、あの娘は」


 私は当時の仲間たちの中で、ひときわ神秘的で謎めいた存在であった彼女のことを思い出す。あの子ならたぶん、疑問に答えてくれる気がする。勘だけど。良子ちゃんが首をかしげて「ひかりんって何?」と聞いてきた。


「ひかりんってのは当時一緒に戦ったUMGの仲間っす。うちが魔法少女になって間もなく転校してきた先輩で、UMGってのもひかりんが命名したっす」

JKにイジメられて喜ぶ元魔法少女の鑑

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