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4 はじめての異空間

「感じる……感じるぞ!絶望に落ちていく人間どもの悲鳴が!」


 なんかクロモが歓喜の声を上げてテンション高い。そして台詞がどうしようもなく悪役っぽい。


「お前はどこの魔王だ」

「ま、魔王じゃないよ!どうみても可愛い神獣だよ!」


 なんか露骨に慌てだして怪しいことこの上ないが、今は無視しとく。


「ほら!絶望してる人間のところに悪魔は湧くんだよ!とっとといくいく!」


 クロモにうながされ、コートとマフラーを羽織った私は外に出るのであった。


「あ、手袋忘れた……」


 外はまだ寒いなぁ。


 ーーーーーーーーーーーー


 クロモに急かされながら、目的地までチャリで移動することとした。クロモはふわふわ飛んでいこうとしたが、チャリのスピードに追いつけなかったのでチャリのカゴに載せた。

 ちなみにチャリは弟のを借りた。なんか私のより軽くて速いんだよね、これ。


「ちょっと!はやい!こわい!もっとゆるめて!」

「あと10キロは出せるんだけど」

「何言ってるの!?スローリィ!モアスローリィだよ!ゆるめて!」


 前カゴに乗ったクロモが情けない悲鳴を上げたので、スピードを下げた。やれやれ、急かしたのはおまえだというに、情けないマスコットだ。


 クロモに先導されてやってきたのは公園だ。

 公園のはずだったのだが。


「……何これ、ホントに公園?」


 公園だったはずのそこには黒い巨大なビル群が雑然と並んでいる異様な風景が見えた。ビル群はまるで生物のようにぬめぬめと生々しい質感している。


「異空間が発生しているね……チュートリアルとしちゃ上出来か」

「異空間?」

「この世界とは別の理が働いてる世界だよ。悪魔の存在は異空間を発生させる。そして魔法少女はこの異空間に入ることができるのさ」


 悪魔、異空間、そして魔法少女。これは完全にファンタジーな世界だ!

 私は感動してチャリから降りるとあたりを散策しだした。

 異様なのは黒いビル群だけじゃない。いつのまにか空は灰色だし地面は毒されたようにどす黒い。空間の距離感はいまいちつかめない。狭いようにも広いようにも感じるけど、異空間はドーム状に広がっているんだろうか?なんか閉じ込められたような閉塞感を感じる。

 ちょっと不気味な場所だけど、初めての異空間に私は興味津々だった。

 クロモがふよふよ浮きながら、「ふつーだったらもうちょっと怖がるのに、つまんないの」とか言うけど知ったことではない。

 そしてはたと立ち止まり、重要なことに気付いた。


「私まだ魔法少女に変身してないんだけど」

「ああそうだった。変身して。はやく」

「どうやって?」

「どうやってって……あ、忘れてた忘れてた」


 クロモが体の中から黒い宝石を銀細工で仕立てた飾りをにゅむっと取り出した。あのマリモのような体、どうなってるんだろう?


「これはマジカルチャーム。変身アイテムだよ。」

「へー、綺麗ね。宝石屋で売れるかしら?」

「売るなよ!絶対に売るなよ!作るのに4時間もかかったんだからね!」

「4時間しかかからないのか」


 そう言いつつ、クロモはチャームを私の胸に押し付けた。なにをする。

 しかし黒いのに、吸い込まれそうなくらい深く綺麗な輝きをしているね、この宝石。奥でエネルギー的な何かが渦巻いているのが分かる。


「これをこう胸元に押し当ててね。こう叫ぶんだ」


 クロモは息を吸い込み、若干作った声で変身の呪文を唱えた。


『みんなの愛と勇気を奇跡に変えて!

 マジカルラブリーミラクルチェンジ!

 変身!魔法少女マジカル☆よしこ!』

「言えるかっ!」


 なんだそのふざけた呪文は!絶対違うだろそれ!

 あーもういいや!てきとーにする!


「……変身(ボソッ」

「声ちっちゃ!」


 そのときマジカルチャームが私の声に反応したかのように輝き、宝石の中から漆黒の闇があふれて私の全身を包みこんだ。

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