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33 第二次魔法ガールズトーク大会

 この部屋の中にはむつき、キッカ姉、デン、そして私がいる。これから第二次魔法ガールズトーク大会が始まるのだ。

 だが、初っ端からなぜか険悪なムードが漂っていた。


「おい貴様、何が目的で良子に近づいた」


 デンがむつきを睨み威嚇した。むつきはうつむいたまま、何も話さない。やれやれ、仲裁しないとね。


「答えろ、何を企んでいる?」

「デン、むつきは私が拾ってきたの」

「ペットか!」


 こくんとうなづく私。むつきが無言で手をつねった。いたい。


「デンはどうしてむつきを嫌うのよ」

「こいつが忌むべき存在だからだ。下水道の腐ったドブのようなどす黒い気配がぷんぷんする」

「女の子にくさいとか失礼よ」

「だから体臭の話じゃないわ!」


 むつきがまた私の手をつめる。いたいいたい。そんなに体臭を気にしてるのだろうか。


「いいか、良子。お前の隣にいるそれは、人間でも魔法少女でもない。ただの腐り果てて生にしがみつく、この世で最も醜悪な化け物……いだっ!」


 ごつん。キッカ姉がデンの頭にげんこつをした。この部屋にきたときに既にキッカ姉は半身形態になっていた。今なら神獣の声が聞ける。


「何をするキッカ!」

「デン。彼女は私の妹が連れてきた友達よ。これ以上酷いことを言うなら怒るわよ」


 笑顔を崩さずにキッカ姉は言ったが、それが逆に怖い。「ぶっ殺す」とかすごむ不良より、「怒る」とだけ言ったキッカ姉の方が数段怖い。


「キッカ、しかしこいつは……」

「デン、貴方も言ってたでしょう。『良子は昔から孤立気味だから将来が心配だ。友達の一人でも出来たらいいんだが』と。その良子がやっと家に友達を連れてきたのよ。少しは歓迎したらどうかしら?」

「ぐっ、確かに……」


 おい、私の交友関係どんだけ評価低いのよ。小学校のときは多少友達がいたぞ。


「そんなことよりもちもち堂のシュークリーム買ってきたのよ。皆で食べましょ?」


 キッカ姉が雰囲気をぶち壊す為にシュークリームを持ってきた。わぁい、もちシューだー! もちシュー大好き!

 キッカ姉がシュークリームをデン以外に配る。シュークリームを受けとった私は、早速はふっとパクついた。ん~、もちもちな生地! この食感がたまらん!

 デンが恨めしそうに私を見つめる。


「……キッカ、我輩の分は?」

「むつきちゃんのこと、悪く言わないって約束するならあげる」

「……くっ、分かった。従おう」


 従うんかい! デンはシュークリームの魔力に抗えず、あっさり陥落した。人間と味覚が同じなのだろうか。犬のくせにグルメなやつめ。

 むつきはシュークリームを受けとったまま、無言でじっとしていた。さっきデンに拒絶されたのが効いてるのかもしれん。メンタル弱いから。


「ほら、むつきも食べよ。おいしいよ?」


 おずおずとシュークリームを口に運ぶむつき。そのままシュークリームをはむっと噛んだ。

 ぶちゅっとクリームが皮からあふれた。ほっぺと手がクリームだらけである。不器用な子だ。シュークリームを食べた後、手についたクリームをぺろぺろなめていた。なんか犬っぽい。

 一方犬であるデンは皮を少しだけかじり、クリームをなめとりつつ食べてるので、汚れることはない。大切に食べてるらしく、一口でパクリとはしなかった。いつも険しい顔が今だけは緩んでる気がする。グルメ犬め。しかし今なら機嫌がよくなってるので、冷静に会話に応じてくれそうだ。


「デン、むつきは悪い子じゃないし、私を助けてくれたこともあるのよ」

「む……そうか。しかしこいつは神獣喰らいの不死者……我々にとって敵、忌むべき存在……」


 神獣喰らい、か。確かクロモもそんなこと言ってたな。


「神獣喰らいってそんなに悪いことなの?」

「神獣喰らいは、我々神獣にとっては悪の中の悪。神獣をその体に取り込んだということは……人間の価値観でいうと殺人犯でカニバリズムと言えば分かるか?」

「うわグロい」


 あー、神獣基準だとそう見えるのか。あ、むつきが落ち込んでる。


「大丈夫。なんて言われたって、むつきの友達をやめるつもりはないから」

「良子……」

「例えどんなにグロくても、私は決してむつきを見捨てない!」


 ふぅ、言ってやったぜ。どうだ、私のイケメン台詞は。これでむつきもイチコロだね! あれ? なんかさらに落ち込んだ。むつきは小さくと「そうよね、グロいよね……」呟いた気がしたが、気のせいである。


「ま、私としてはデンがむつきを嫌ってようとどうだっていいのよ。そんなことより」

「そんなことってお前な……」


 デンはもうほっといて、さっさと本題に入ろう。


「キッカ姉ちゃん。魔王とかなんとかと戦ったことある?」


 魔王と聞いた瞬間、キッカ姉はびくっと反応した。魔王なんとかさん……名前忘れたけど、本題はこれだ。私はむつきが言ってた15年前に魔王を倒した魔法少女の一人がキッカ姉だとみている。根拠はないが、むしろこの人じゃなかったら他に誰がいるというレベルな気がする。


「……ええと、昔の話だけど、魔王と戦ったことがあるわ」

「やっぱり! つまりキッカ姉ちゃんは魔王を倒して世界を救った英雄なんだね!」

「そ、そんな大層なものじゃないわよ。私がやらなきゃ他の人がやったかもしれないし」


 キッカ姉は謙遜するが、この人以上の超人がそこらにいるとは思えない。この人は私が知る限り、「3階以上の高さから落ちて無傷」とか、「素手で猪を倒した」とか、「床野見の不良100人に襲われたが一人で返り討ちにした」とか他にも色々な伝説を築いている。誇張された話もあるだろうが、前半2つはリアルタイムで見たことがあるので本当の話。


「でも何でそのことを知ってるの? 貴方が赤ん坊の頃の話よ?」

「そこらへんはむつきに聞いて。この子が情報の発信源だから」

「むつきちゃんが?」


 私がむつきに話をするように促すと、落ち込んでぐずぐすしてたむつきがキリッと態度を改め、クールな口調で話しはじめた。


「私は貴方の協力を得る為にこの町に来た。かつて魔王ブラックモアと戦った魔法少女の一人である貴方に」

「私に? どうして?」

「魔王が再び現れようとしている。私はそれを倒さなければならない」

「魔王が!? ホントに?」

「待て、その情報はどこから得た? 確かなものか?」


 キッカ姉とデンは驚き、初めて知ったという反応を示した。むつきはキッカを見つめ、真剣な眼差しで言った。


「……魔法少女キッカ。貴方と二人きりで話したい」

「私だけ? 良子ちゃんとデンは?」

「今の良子には……まだ話せない」


 何か隠したいことがあるのだろうか。むつきは表情を変えないから何を考えてるのかわからない。というか多分色々秘密抱えてるんだろう。私に教えてもらえないのは癪だけど。


「いいよ。二人で話してきて」

「……良子」

「そんな申し訳なさそうな顔するんじゃないの。話したいときに話せばいいから」

「……ごめん」


 むつきの態度からシリアスな秘密を抱えてるんだと分かってる。謝るむつきの頭を撫でてやると、私はどんとむつきを押し出した。

 むつきは無言でうなづくと、キッカ姉の手を握る。キッカ姉は「?」と顔に疑問符を浮かべたまま、なんとなく握り返した。


「いってくる」

「いってらっしゃい」


 見送りの挨拶をすると、むつきの空間がぐにゅりと歪み、むつきとキッカ姉が歪みに巻き込まれて消えた。


「なっ、消えただと!?」


 驚愕するデンが立ち上がり、追い掛けようとしたので、デンの背中を手で抑えて、伏せの姿勢をさせた。「まぁ、そのうち帰ってくるから」と私が言うと、デンは「ぐぬぬ……」と唸りながらも従った。

 そのまましばらくお留守番しようと思ってたら、黒いマリモの神獣が床からにゅっと生えてきて、こう言った。


「ただいまー……ってあれ? これもちもち堂のシュークリーム? ボクの分は?」


 やぁクロモ。随分遅いおかえりだったが、お前の分は無いよ。というかお前もマリモの癖に何で知ってるんだ、もちもち堂。

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