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31 姉に正体を明かした

「変身」


 私は胸にマジカルチャームを押し当て、そうつぶやくと、チャームから漆黒の闇が溢れて私の全身を覆った。

 闇が晴れると、白い髪をサイドテールにした少女……魔法少女シュガーが現れる。論より証拠。とりあえず変身してみた。私の変身を見たデンが「邪悪な変身エフェクトだな」とか言ってる。それ多分クロモのせいで私のせいじゃないよ?


「え?これってシュガーさん?」


 私の姿を見て困惑しているキッカ姉。おろおろしながら私を見つめた。


「えっと、つまり、良子ちゃんがシュガーさんだったということ?」

「うん、黙っててごめんね」

「全然気付かなかったーーー!」


 頭を抱えてショックを受けるキッカ姉。どうやら私が秘密にしてたことより、全然気付かなかったことにショックを受けてるようだ。


「うぅ、これじゃお姉ちゃん失格だわ……」

「いやまぁ、眼鏡ないし髪の色も違うし、仕方ないと思うよ」

「……もしかして、デンは気付いてたの?」


 デンは無言でこくりと頷いた。


「ぐふっ」


 キッカ姉は頭をかかえたまま机に突っ伏した。


「良子ちゃんは魔法少女キッカが私だと気付いてたわけね……」

「いや、うん。まんまだし。名前も姿も」

「まあそうよね。……あ、そっか。シュガーって名前は佐藤からきてるのね。どうして気付かなかったんだろう……英語教師なのに」

「キッカ姉ちゃんがどこか抜けてるのは、よく知ってるから」

「ぐふっ」


 またダメージを受けた。


「キッカ姉ちゃんは魔法少女の正体隠そうとはしてないの?」

「良子ちゃんみたいに姿変えられないから、仕方ないのよ……」

「むしろ良子ほど変化があるのはレアケースだからな。レアケースの固まりだ、お前は」


 え? レアな設定てんこもりって、まるで主人公みたいだよね! ほら、主人公だけ特別機に乗るみたいな!


「レアキャラなのに大して強くないがな」


 ぐふっ。デンが私の思考を読んだかのような鋭い一撃が私にダメージを与えた。そうだよね。私は今まで一般人として生きてきたので格闘経験なし、少年漫画の主人公のように血統に恵まれてるわけでもなし。

 魔法少女になってレアキャラ扱いされても、元々が普通の人なので伸びる気がしないよぅ。素の方に特別感がなさすぎるんだよぅ。というかよく考えたら私よりむつきやキッカ姉の方が色々とぶっ飛んだ設定な気がするんだけど気のせい?


「ん? どうしたの? デンに何か言われたの?」


 キッカ姉が聞いてきた。あー、そっか。変身前だとデンの言ってること分からないんだっけ?


「というかお前も変身しろ。話にならん」


 デンがいらいらした様子でキッカ姉に言ってきた。もちろん通じてないので私が通訳する。


「キッカ姉ちゃん、デンも話に加わりたいから変身してって」

「あら、そうなの? じゃ、変身するわね」


 キッカ姉はポケットから金色に輝くマジカルチャームを取り出した。私のと色が違う。雷属性っぽい色だ。


「あ、そうだ良子ちゃん。変身後の姿があまり変わらないことって、結構メリットもあるのよ。知ってた?」

「どういうこと?」

「ふふっ……今からそれを見せてあげる…… 半身!」


 ……ん? はんしん?

 キッカ姉がマジカルチャームを胸に押し当てると、チャームから発光する電気エネルギーのようなオーラが出て、全身を覆った。

 なるほど、チャームによって変身エフェクトが違うんだなーと感心していると、光の中から魔法少女のキッカ姉の姿が……あれ? 何故か現れたのは先ほどと全く変わらないキッカ姉の姿。


「変わってない……変身失敗したの?」

「ふっふっふ、甘いわね良子ちゃん。今の私はちゃんと魔法少女状態よ?」


 そう言うと、キッカ姉は手の上に小さな雷球を生み出してみせた。そして手をそっと閉じると、その雷球はばちばちっと音を立てて消えた。


「え? 今の魔法? でもどうやって……」

「これはキッカの変身形態の一つだ。半分だけ変身、略して半身と呼んでいる」

「はんしん? 半分だけ変身?」

「簡単に言うと、変身してるけど魔法少女状態での衣装チェンジだけキャンセルしたの」

「え、そんなこと出来るの!?」

「やって出来ないことはないわ!」


 それが出来るなら普段の姿のままで魔法が使えるってことに……有用性がありすぎるんだけど!


「それ、私もやってみたい!」

「あーやめといた方がいいぞ」


 デンが止めた。なんでよ、いいじゃない。


「お前みたいな激変タイプだと、髪が白くなったりコウモリの羽が生えたりするところは変わらん。身体的変化はごまかせんのだ。変身前と変身後で姿がほとんど変わらないキッカみたいな魔法少女にだけ許された芸当だ」

「そうなんだ……」

「半身形態の習得には高度なイメージトレーニングを要する。ちなみにキッカほど完璧に使えるやつは見たことがないし、普通はどこか見た目が変わる。というか変身だから変わるのは当たり前なんだが」

「これを習得するのに2ヶ月かかったわ」


 うわ、超人のキッカ姉でもそんなにかかるんだ。


「1年やっても出来ないやつは出来ないからアテにしない方がいい。というか半身形態だと防御面で不安だし、服が破れても直らないから戦闘では使えん代物だ」

「それに大抵のことは生身で出来てしまうから、あんまり実用性ないのよ」

「いや、素で強いキッカ姉にとってはそうでも、普通の人間にとっては十分な強化だと思うんだけど……」

「というかお前は変身してもろくに魔法が使えないんだから、意味ないだろうが」

「そうだよねー……唯一使えるのが撲殺用の魔法って……」


 はっ! 話が脱線してた!

 私が話したかったのはそういうのじゃなくて。私はキッカ姉の目をまっすぐ見て言った。


「ねぇ、私がキッカ姉ちゃんに正体をバラした理由、聞いてくれる?」

「……うん、聞くわ」


 私はずずぃっとキッカ姉に近寄った。顔が近くなるが、キッカ姉は全く引くことなく、視線はまっすぐ私を捕らえていた。


「一つは隠し事をやめたかったから、そしてもう一つは……私の我が儘を聞いて欲しいから」

「我が儘? そんなのいつでも聞いてあげるわよ」


 キッカ姉はにっこり笑って返す。敵わないなぁ、この人には。そうだね、いつも私の我が儘を聞いてくれたもんね。


「じゃあ、とりあえず我が儘の一つ目。ある魔法少女が探し人してて……それがもしかしたらキッカ姉ちゃんのことかもしれないから、会って話を聞いてくれる?」


 いつも通りだと今日の晩、むつきが家に来るはず。私の正体が魔法少女だと知らなければ、彼女とどうやって知り合ったのかキッカ姉に説明できない。それもあって、私は正体をバラした。

 とりあえず彼女をキッカ姉に引き合わせてみようと思う。どうなるかは知らないけど、まぁ悪いことにはならないでしょ。

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