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28 魔法の名称

 今日も悪魔が発生したので、いつも通りステッキでしばいて倒した。いつもと違う点は、後ろに魔法少女状態のキッカ姉と神獣のデンがいる点だ。

 飛び道具もなく突っ込むだけしか脳のない下級悪魔なのだったので楽勝だと私は思ったのだけど、それを見ていたキッカ姉とデンの意見は違ったようだ。


「……すごいわね」

「……うむ」


 なんか感心したように言っている。


「確かに身体能力は普通の人間と同じ。戦闘訓練も受けてない素人の動きだ。なのに……なんというかすごいな。鬼気迫るものがある」

「洗練されてない動き……なまじ素人なだけに、こう、力任せというか、手加減のなさとか、見ててちょっと怖いかも……」


 がーん! 元自衛隊の人に怖いって言われた! そこにクロモがいつものごとく追撃をかける。


『目が怖いんだよ、よしこは。相手が弱ってても最後まで手を緩めないできっちりトドメを刺すところとか、目に漆黒の殺意が感じられる』

『だって、反撃されたら嫌だし、相手がきっちり死なないと安心できないし……』


 そう、私はただ、一生懸命なだけなのだ。魔法の才能に恵まれない弱い私は、弱いなりに頑張って戦っているだけなのだ。


「一つ言えることは、シュガーさんは見た目に反して強いわね。ちょっと甘く見てたかも」

「え、そうなんですか?強いんですか、これ」


 私の塩試合を見て、まさかの強いという評価。むつきやキッカ姉と比べると私なんて雑魚もいいとこだと思うんだけど。


「下級とはいえ、悪魔というのは本来一人で戦うのは厳しい相手だ。だから普通は魔法少女同士でチームを組んだりするんだが……」

「え?でもキッカさんは一人で戦ってますよね?」

「こいつは例外だ。そこらの魔法少女とは年季が違う。なんせ十数年も……」

「らっ、雷電!年齢の話は内緒でしょ!」


 顔を真っ赤にして怒るキッカ姉ちゃん。うん、言われなくても私は彼女の年齢を知ってるよ。でも若々しい見た目だし、美人さんだから年齢の話は突っ込まないことにしておく。こんなに綺麗な人なのに行き遅れってレッテル貼られて、世の中って残酷だよね。


「と、とにかく、強力な魔法なのは間違いないわね。下級とはいえ、普通の女の子の重量とスピードであんなに簡単に悪魔の装甲を破れるのはありえない。本来ならもっと苦戦してもおかしくないわ」

「あぁ、おそらくその魔法の発動に身体強化分の魔力も全て持っていっているようだな。出来ることが少ない分、威力においては強い。やってることは物理攻撃に見えるが、その実態は極端に魔法寄りの魔法少女だ」


 な、なんか褒められてる?そんな強力な魔法なのこれ?


「しかし肝心の魔法の正体が分からんな。武装強化系なら武器に纏っているオーラが見えるはずだが、何も感じられない。それどころか魔法を使っているところすら認識できない」

「それってどういうことですか?」

「考えられることは……認識すらできないタイプの未知の魔法ということか」

「未知の魔法?それは困ったわね」

「ああ、そうだな……」

「魔法の名前が決まらないじゃない!」

「問題そこ!?」


 キッカ姉が悩んでいるのは魔法の名前だった。いや、たしかに名前決まらなくてモヤモヤしてたけど!


「……○○魔法(マギア)と名付けるのが慣例だが、○○に入る部分が決まらないな」

「なんとかマギアっての慣例なの!?」

「名付けにルールがある方が統一感あるとかいう理由で、そういう形になっている」

「あ、そのかわり必殺技は完全にオリジナルで名前つけていいからね」


 へー、そんな決まりごとが。


「類似魔法があればそこから名前を持ってくるんだが、今まで存在しなかった魔法かもしれないしな。キッカの魔法もオリジナルだったから名付けに困ったものだ」

「外国語辞典を色々と探したものね。アキュリス」

「いや、日本語でいいんじゃないかなぁ……」

「ダメよ。名付けに妥協しちゃ」


 キッカ姉が真剣な顔で言ってくる。そんなに大事か、外国語。


「とりあえず魔法の正体が分からんうちは名付けはお預けだ」

「残念。今後の検証次第ね」

「まぁ、それはとりあえず置いとくとして、今後のシュガー強化計画はどうする?下級はともかく、これでは中級以上に歯が立たんぞ」

「そうね、近接系なのに身体強化無しなのはきついわね……あと無駄な動きが多いし、動作が隙だらけなのも改善したいわね……シュガーさん、まだ体は平気?」

「あ、はい」

「じゃあとりあえず何でもいいから私に打ち込んでみて」

「あの、打ち込むんですか?」

「こういうのはひたすら実戦あるのみよ。私からは仕掛けないから、遠慮なくどうぞ」


 キッカ姉は槍を前方に構え、迎撃の体勢をとった。うん、どこに打ち込んでも通じない感じするんだけど……考えても仕方ない。どっちにしろはるか格上の相手だ。いってみるか。


 私はステッキを両手で持ち右脇腹に構える。そのままキッカ姉の2メートル手前まで近づき、立ち止まる。リーチの長いキッカ姉にとってはいつでも攻撃が届く間合いだが、私の場合は更にあと2歩進まないと届かない。

 キッカ姉は不動で待ち受けている。私は意を決して踏み込み、野球のスイングのようにステッキを大きく横なぎに振った。キッカ姉はそれを見切り、ステッキを槍の腹で受け止めて防御した……はずだった。


 ばしゅっ!

 キッカ姉の槍が私のステッキによって容易く両断された。それを見た彼女はだんっ!と大きく飛び下がり、ステッキの攻撃を避けた。

 キッカ姉の額から脂汗が浮かんでいた。彼女は真っ二つになった槍を見て、ほぅっとため息をついた。

 心配したデンがかけより、声をかける。


「おい、大丈夫かキッカ!」

「こういうこともあるんじゃないかって想定もしてたけど、こうもあっさり真っ二つとはね……」


 ……正直、自分でもびっくりだ。今まで悪魔以外には試したことがなかったが、これがもしキッカ姉に当たっていたらと思うとゾッとする。


「ご、ごめんなさいキッカさん!大丈夫ですか?」

「いやいや、試しにわざと受けた私が悪いのよ。シュガーさんが気にする必要はないわ」


 真っ二つの槍をぷらんぷらん振りながら、キッカ姉はにっこりと笑った。


「決まったわ。あなたの魔法の名前」

「え?」

絶対魔法(アブソリュート・マギア)。その魔法の威力はまさに絶対的だわ」


 あ、あぶそりゅーと・まぎあ……ぜ、絶対魔法だと……

 な、何でそんなすごそうな名前がついてしまったんだ!私はその案を却下したかったが、満足げに微笑むキッカ姉を見てると、反論できなかった。


『あ、あぶそりゅーと!あぶそりゅーとだって!ぷぷぷ!』


 なんかクロモが爆笑してた。おまえあとでしばく。

magiaはラテン語、absoluteは英語。正直、ガバガバな名付けルールですが、外国語ということは共通のようです。

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