24 針山の悪魔との戦い
「まさか私のクラスにキッカ姉が来るとはね……」
「ま、ボクにとってはどうでもいいイベントだったけど」
「あんたっていつもそうよね」
異空間。悪魔のいる謎空間に私はいた。話し相手はクロモという黒いマリモにコウモリの羽が生えた不思議生物。こいつは基本的に自分勝手なので、私の私生活で何が起ころうが、自分に関係しない限りスルーする。
「それにしても最近出動多くない?これで3日連続よ?」
「言ったじゃないか。5月は多くなるって。それにむつきは良子の10倍は狩ってるよ」
「5月病が原因か……むつきも大変ね」
空間魔法を使う半分ゾンビな魔法少女むつき。彼女とはたまには共闘するが、基本的にそれぞれソロで悪魔狩りをする。それというのも、私がむつきの足手まといになるからだ。彼女の空間魔法は強いが、味方を巻き込む危険があるので、ソロで戦った方が危険が少ない。
むつきは優れた感知力と空間移動を使い、悪魔を片っ端から仕留めてるおかげで、今まで私は暇ができていたのだが、最近になって処理が追いつかなくなってるっぽい。
「よしこ、そろそろ来るよ」
「はいはい。変身っと」
クロモが悪魔の気配を察知して警告を発した。私が胸にマジカルチャームを押し当てて変身と言うと、マジカルチャームから黒い闇が出て私を覆う。闇が晴れた後、私は雪のような白い髪を持つ魔法少女に変身していた。
「変身!魔法少女シュガーちゃん!だね!」
「うるさいだまれ」
この神獣は性格悪いので、私をからかうネタを見つけると何度も言ってくる。特にシュガーちゃんネタは大ウケだったようで、変身するたびにその名前を連呼してくる。くそぅ。
「よしこ、上!」
「ん……うわわわわっ!」
ドスドスドスドスッ!
突然、上空から黒くて大きな杭がたくさん降り注いできた!だが私はそれを全て避けた!セェーフ!
「いや、反応できずに一歩も動けてないじゃん」
「結果的に当たらなかったからセーフなのよっ!」
いちいち揚げ足を取るマリモだ。しかしこの杭はどこから飛んできた?悪魔はどこ?
「あっちにいるね」
クロモが指差す方向……はるか前方に大きな黒い針山が見えた。もしかして、あの針山が悪魔? だが遠い。遠近感が狂う異空間内だが、少なくとも2~300mは離れてないか?
と、針山の悪魔から針が……というか杭がまた飛んできた。あんなでかくて痛そうなの、当たったら終わりだ!
私は着地点を予想して……ドスドスドスッ!地面に杭が刺さる。うん、また動けなかったよ。運動音痴の私が見切れるかあんなん。でも当たらなかったよ!セーフだから!
「よしこ、周りよく見て」
クロモの助言に従い、周りを見る。ん?刺さった杭が20本ほどあるだけだが……あれ?なんかこの杭モゾモゾしてない?
「うわぁ……なにこれ」
杭から手足のようなものが生え、私を囲った。なんか細長い虫みたいでキモい。それが20体ほど。
「眷属だね……足止めする気だ」
あの針山は遠距離砲台と眷属召喚のコンボをするらしい。直接攻撃しかできない私には、悪魔に攻撃を仕掛けるにはまだ遠い。
「……無視して突破するか」
「それが正解だね。でも辿りつけるかなぁ?」
ええい、強行突破だ!私はステッキを振るい、前方の眷属たちを粉砕した。道が空いたので、悪魔本体に向かって走る。眷属たちが後ろから追ってきて、飛びかかってきた。こいつら私より速い!というか私が遅いのか?
ステッキを振るい、飛びかかってきた眷属を粉砕する。そしたらまた囲まれた。針山の悪魔からまた杭が飛んで来る。永久ループか! というかこの位置やばい! このままだと杭に当たる!私は咄嗟に目を閉じた。
ヘルプミーむつき! この悪魔私じゃ無理ゲー!
ばちぃっ!
突然はじけるような音が聞こえ、目を閉じてても分かるくらいの光が一瞬だけまたたいた。そして私に杭は降ってこなかった。一体何が起こった?
「危なかったわね。大丈夫かしら?」
優しげな声が聞こえる。どこかで聞いたことのある声……というか、私はこの声をよく知っている。私は恐る恐る目を開けた。
「あの、あなたは……」
そこには槍を持った女の人がいた。その容姿は、金髪のウェーブがかった長い髪で、黒いベレーみたいな帽子を被り、黄色を基調としたロングスカートの袖がゆったりヒラヒラした服を着ていて、明るい配色なのに落ち着いた印象を感じさせるたたずまいだ。そしてその人の足元には見知った白い毛並みの犬。いつもと違って体に金色の紋様が縁取られており、神々しく見える。
私は名を尋ねたが、本当はこの人の名前を知っている。というか気付かない方がおかしい。優しげな笑みを浮かべるこの女の人の名は……
「私は魔法少女のキッカ。こっちは神獣の雷電。よろしくね」
……うん、どうみてもキッカ姉ちゃんと飼い犬のデンです。




